横浜熱供給株式会社 地域冷暖房プラント大規模改修計画
1日も停止せず地域へのエネルギーの安定供給を続ける地域冷暖房プラント大規模改修計画
横浜熱供給は、横浜駅西口エリア7つの施設に対し、冷暖房や給湯用の熱源となる冷水・蒸気を供給しています。1998年から、一日も欠かさず供給を継続してきましたが、冷凍機等機器の更新時期を迎えたことから、CMの支援のもと、熱源機器改修計画を進め、2023年7月に竣工を迎えました。 環境意識が高まる中、安定供給と省エネルギー・省CO2の両立が求められています。また、地域冷暖房プラントは、横浜駅前の好立地に建つグローバルホテルの地下にあり、ホテルの営業への影響を最小限に抑え工事を進める必要がありました。さまざまな制約がある中、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか?
横浜熱供給株式会社
1988年設立。親会社は相鉄ホールディングス株式会社。横浜ベイシェラトンホテル&タワーズのオープンを核とした横浜駅西口駅前の再開発事業に合わせ、同ホテルのビルの地下5~6階にプラントを設置し、1998年から西口エリアへ供給を開始。2023年7月、改修工事を完了。
話し手のご紹介
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藤井 譲さん
横浜熱供給株式会社
取締役社長 -
鏡 浩一さん
横浜熱供給株式会社
第1エネルギーステーション所長 -
清水一弘さん
横浜熱供給株式会社
技術部課長 -
進藤光信
山下PMC
環境・運営推進本部 本部長 環境・運営推進本部 1部CRE戦略部 部長 -
田中準也
山下PMC
環境・運営推進本部 2部サステナビリティ戦略部
プロジェクトマネジャー -
吉川大輝
山下PMC
環境・運営推進本部 3部IT戦略部
プロジェクトマネジャー
エネルギー消費効率の向上は社会的な責務
我々にとって初めての改修。何が正しいのか手探りの中、CMを導入しました
1998年から横浜駅西口エリアの熱供給を開始され、2016年に改修計画に着手されています。このタイミングを選ばれた理由からお聞かせください。
- 藤井
- 冷凍機やボイラー等大型の熱源機器は熱供給開始時から定期的に整備し、性能を維持していました。ただ、整備部品は希薄になりつつあり、将来の機能性を確保するためにも改修は必須と考えていました。また、事業の将来性を考える際に重要だったのが、時代と共に高まる省エネに対する意識と技術の進化です。今までと同じ性能を維持しているだけでは、社会から求められる省エネ性能や省CO2の目標値の達成は困難です。そうした社会的劣化への対応も需要な課題でした。地域冷暖房ですから、省エネ性能、省CO2の効果を地域還元しなければならないという使命から、改修を決断しました。
- 進藤
- そういった状況で「次の20年に向けた横浜熱供給の重要な戦略」となる基本計画を共に立案して欲しいというご要望でした。併せて設計・施工者の選定方法等の発注戦略支援も含めて、私たちにお声掛けいただきました。
CMを導入された理由はどのような事だったのでしょうか?
- 藤井
- 我々にとって初めての改修でした。今後20年を見据え、競争力を兼ね備えた最良の熱源機器構成を、しかも適正投資額で実現するためにはCMの導入は必須でした。
- 清水
- 設備をリニューアルするだけであれば当社だけでも進めることはできますが、今回のような大規模で複雑な条件での工事は経験がありません。しかも、改修工事中でも、ホテルの営業に支障が出ないように進めなければなりません。現状の運営維持が絶対条件でした。
これが今回の工事にとって、最大の課題でした。複雑な調整が必要で制約も多くなることが予想されることから、設計・施工者の選定支援を含め、山下PMCにお願いすることにしたのです。
設計・施工者の技術力や経験を最大限引き出してほしい
- 藤井
- 従来のプラント総合エネルギー効率(COP)は約0.7でしたが、改修後は1.0を達成することを目標の一つにしました。山下PMCからはコージェネレーションシステム導入の有無も併せて、イニシャルコスト重視型、COP最優先型等、約20パターンの計画を提案いただき、検証を行いました。
- 清水
- 検証には多くの時間をかけました。1年くらいでしょうか。山下PMCから示された各パターンの要点項目の数字での比較は、私たちの方針決定の一助になりました。
設計・施工者の選定については、山下PMCにどのような要望を出されたのでしょうか?
- 清水
- 山下PMCに特に期待したのが、設計・施工者の技術力と経験を最大限、引き出すことを注視した選定サポートでした。
- 進藤
- そこで私たちは、地域冷暖房工事の実績がある空調系サブコンによる「総合評価方式」での選定を提案しました。
- 清水
- 当社の要望に対して各社から、技術力や経験が盛り込まれた提案をいただきました。複雑な機器搬入計画の実現性、組織としての取り組み姿勢、チームワークを重要な評価ポイントとして、最終的には山下PMCの各ご担当者の評価とすり合わせながら決定しました。
- 藤井
- 選定時点で特に苦労したのは、施工計画にホテル側と協議しなければまとめられない案件が多く含まれていたことです。そこが決まらないと、全体工程に大きく影響する可能性もある。しかし、その時点では工事の詳細を確定できない。そうした内容を発注図書にどのように盛り込むか、非常に悩ましいところでした。そこで山下PMCの知見に頼り、確定条件と未確定条件を整理しました。発注者と受注者に不利益が生じないよう、表現を含めて緻密に再構成したことで、この問題を乗り越えることができました。
たとえば、ある機械を入れる計画一つとっても、どれほどの大きさの物を、いつ、どうやって搬入するのか。ホテルの営業を続けながらの作業ですから、明確な計画でなければ、承認できないのは当然です。ホテル側が納得できる仕組み、工程が必要になり、施工者にもかなり複雑なお願いをしました。
- 第1エネルギーステーションから7つの施設に対し、熱供給が行われている。供給エリアの総面積は約6.5ha。①横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ ②横浜ファーストビル ③市営地下鉄横浜駅 ④相鉄ジョイナス(本館) ⑤横浜高島屋 ⑥相鉄ジョイナス(地下街部分) ⑦横浜天理ビル
- 蒸気吸収式冷凍機1,900RT(2021年7月、2022年7月、2023年7月竣工)
- 固定速ターボ冷凍機2,200RT(2022年7月竣工)
- インバータターボ冷凍機800RT(2021年7月、2022年7月竣工)。RTは冷房能力を表す単位「冷凍トン」。最新の設備構成でCOP1.0以上が可能な環境が整った
プロジェクトに関わったマネジャー
関連する用途
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Facility Dr.
施設の寿命は数十年におよび、施設自体の老朽化に加え、社会的劣化も進みます。施設の価値を維持・向上するためには、改修・増築・減築・建て替え、さまざまな選択肢の中から最適解を選び実行する必要があります。また、施設のランニングコストや将来の改修にかかるコスト、拡張・縮小・コンバージョンへの備えも大切です。