建設市況レポート(25年10月)
傾向と見通し
新内閣が発足し、首相は経済成長を全面に押し出しています。
言葉の端々に映る意欲に期待したいものです。
さて、このコラムではずーっと「建設費の上昇」とコメントしています。
しかしその上昇の傾向を見ると、以前とは少し様相が変わってきているようです。
実際のプロジェクトにおいても、金額が収まるケースを目にするようになってきました。
資材価格は落ち着いてきています。
(「お金とモノと人」建設市況レポート(25年06月) | 山下PMCのグラフ参照)
労務費については、以下の状況等を踏まえ、今後も上昇が見込まれます。
- 建設業就業者数について、短期的な増加見通しが立たない状況
- 担い手不足の解消に向けて、年内を目途に建設業法等の改正を伴う労務費の基準が策定・施行
では、建設費は今後どうなるのか?
最新の建築費指数をもとに、幾つかの切り口で見てみます。
直近3年間の建築費指数の推移を図表1に示します。
年々上昇していますが、その上昇率は現在に近づくにつれ鈍化していることがわかります。
図表1「建築費指数の推移」
建築費指数:事務所S造・東京・純工事費(建設物価調査会)
次に、建築費指数の前月比の推移を図表2に示します。
連続して下がることはほぼなく、コンスタントに上昇が継続していることがわかります。
過去3年間において、前月比でマイナスになったのは7回しかなく、その下げ幅も微小です。
図表2「建築費指数の前月比の推移」
建築費指数:事務所S造・東京・純工事費(建設物価調査会)から前月比を算出
続いて、毎月の変動といった瞬間風速でなく、少し中長期の緩やかな傾向を見るために、直近1年間、2年間、3年間それぞれの上昇率から1年間あたりの上昇率の平均値を出し、その推移をグラフ化しました。(図表3)
図表3「建築費指数の年間平均の推移」
建築費指数:事務所S造・東京・純工事費(建設物価調査会)から直近の年間平均を算出
これを見ると、年間+4~5%というのが直近の振れ幅であるようにも見えます。
資材価格が落ち着き、労務費は上昇する。
人は依然足りていないが、他方で全国の着工床面積が減少傾向であるという状況を鑑みると(一つの想定ではありますが)今後、ここから更に大きく上振れすることは考えにくいという見方もあります。
次回以降、このあたりの情勢を具体的に見ていきます。
資材、建築費指数の傾向
鉄鋼系資材では、山形鋼が下降(H形鋼も同様に下降)、その他は横ばいです。
RC系資材は横ばいです。
建築費指数はS造が前月から0.5P、RC造は前月から1.9Pそれぞれ上昇しています。
資材、建築費指数の推移(鉄鋼系)
出典:日経NEEDS / 建設物価調査会
建築費指数:2015年比/ それ以外:2011年4月比
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 S 建築
現状維持
- ●異形棒鋼16ミリ 東京
- ●構造用管 角管 東京 専業メーカー品、STKR400、100×100×2.3ミリ、問屋仲間
- ●熱延鋼板1.6ミリ 東京
- ●鉄スクラップ H2 東京
下降
- ●山形鋼6×50ミリ 東京
資材、建築費指数の推移(RC系)
出典:日経NEEDS / 建設物価調査会
建築費指数:2015年比/ 上記以外:2011年4月比
推移傾向
上昇
●建築費指数 東京 事務所 RC 建築
現状維持
- ●セメント バラ 東京
- ●普通合板Ⅱ類 4ミリ 東京
- ●生コンクリート 建築 180キロ強度 東京
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【3代目】アナリストK
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進第二部門 5部 部長岩下孝樹
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アシスタントM
株式会社山下PMC
プロジェクト統括本部 事業推進第一部門 2部松尾一輝
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