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ファシリティマネジメントはなぜ必要か ファシリティマネジメントはなぜ必要か

ファシリティマネジメントとは

Facility management(FM)とは、「企業、団体などが組織活動のために施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」と定義(※1)されています。

民間企業であれば、経営者は出資者から資金を募り、経営資源として人、もの、情報など価値を生み出す資産に置き換え、それを利用して収益を上げようと努力します。その中で、さまざまな企業が多くの資金を施設や建物に変換して、ものを生産したり、オフィスなどのスペースを貸したり、ホテル・病院・物流施設・商業施設…などを運営しています。

国や地方公共団体であれば、資金は税金という形で徴収され、学校などのさまざまな公共施設を建設し、そこで公益に貢献する営みがなされています。 ファシリティマネジメントとは、まさに“ 経営活動”そのものといって良いでしょう。

なぜファシリティマネジメントが必要か

それではなぜファシリティマネジメントが必要なのでしょうか。先ほど資金を新たな価値を生む施設や建物に変換する話をしましたが、一般的にその金額はとても大きくなります。ビルを一棟建設すると何億~何十億、大規模施設ともなれば、一千億超の建設関連“ イニシャルコスト(マネジメント費・設計費・工事費 etc)”が発生します。これだけ多くの資金を投入するわけですから、いかに効率的にその施設≒資産≒(もともとは出資者や国民の資金)を活用、運用していくか、経営的視点がとても重要となります。

この大きな“ イニシャルコスト”に対して、施設や建物が完成(竣工)してから発生する運営段階のコストが“ ランニングコスト”になるわけですが、これもまた大きな金額になります。このランニングコストを大きく分類すると保有費・保全費・修繕更新費・運用費・施設管理費・除却費 etc(※2)に分類されます。これらの費用は施設や建物が竣工してから利用・運営する限り発生するものですから、何十年も累積することになりイニシャルコストと比較して、何倍も大きな金額(建設コスト≒イニシャルコスト×4~5倍/60年)となります。

ビルコスト(トータルライフサイクルコスト)の構成例/ビル運営管理費構成比(2010年度)

このように施設や建物の全ての段階(企画・設計・施工・運営・解体)に関連して発生するコストをライフサイクルコスト(LCC)といいますが、これを最適(費用対効果最大化)にマネジメントしていくことをライフサイクルマネジメント(LCM)と呼んでおり、経営活動に大きく影響することから、ファシリティマネジメント(FM)と合わせて重要な考え方となっています。

ファシリティマネジメントの手法(運営段階のコスト縮減手法)

企業が存続していくためには、社会にその価値が認められ、必要な存在になる必要がありますが、継続的に価値(≒収益)を生み出さなくては経済的に成り立ちません。事業用ビルであれば、限られた期間において、建設コストや運営段階のコストより多くの収益を上げることで利益を確保しなくてはなりません。なるべく少ないコスト(キャッシュアウト)で、施設や建物の品質や価値を高める(収益性を上げる・生産性を上げる etc)マネジメントを考えていく必要があります。

まず少ないキャッシュアウトのためには、建設工事費などを合理的な範囲で低く抑えた後、運営段階で発生する保有費・保全費・修繕更新費・運用費についてコストダウンを図っていく必要があります。以下にそれぞれの内容と対応方法を記載します。

運営段階でのコストダウンの対応方法
これらは全て目標をしっかりたて、PDCAサイクルを実践し、統括的視点で運用していくことが重要となります。

新しいFM/LCM戦略

それでは、施設や建物の品質や価値を高める(収益性を上げる・生産性を上げる etc)マネジメント(バリューアップ)とはどのようなものでしょうか。例えばBCPへの対応、テナントビルであれば借りやすさ(市場要求への対応・省エネルギーレベルの改善・バリアフリー化の促進 etc)の向上、マーケティング・ブランディング・CSR戦略(外装デザイン・エントランス・共用部環境改善 etc)への対応などでしょうか。

BCP対応であれば、3.11 以降確実にその社会的要求水準は向上しています。

FMで対応可能なBCP上のリスク(例)

事業継続を阻害する要因としては、収益性や資産価値、ブランド力低下につながるものがあります。そのうち、FM的対応が可能なリスクには、自然災害リスク、事故災害リスク、劣化障害リスク、社会的リスクなどがあげられます。自然災害への対応としては、耐震性能の向上や生命維持・事業継続活動用の備蓄、各種インフラのバックアップなどが施設のバリューアップのためには必要でしょう。

また、昨年発生した中央道笹子トンネルの天井板崩落事故などは、劣化障害のリスクが顕在化した例でしょう。つい検討することを先送りしがちな潜在的リスクを的確に抽出し、その発生頻度と発生時の影響度を鑑みながら優先順位を付けて対応(予防保全)していくことがますます重要になってきています。

ライフサイクルマネジメントのアプローチ概念
保有費・保全費・修繕更新費・運用費の関連イメージ

Facility management は新たなステージへ

ここまで記載した内容はファシリティマネジメントのごく一部に過ぎませんが、とても広い概念ですし、日常修繕のような小さな(細かな)内容から施設を通り越して地球環境や社会情勢、経営的判断など大きな(広い)内容まで視野に入れる必要があります。また、時間軸で考えた場合、FMは施設や建物の運営段階のマネジメントだけではありません。構想・企画段階から始まり、設計・施工段階でもFM的視点から、ものをどう創れば資産価値や収益性が高く、長寿命で省エネ、保全省力化が図れるか重要な役割を果たすことができます。
更に、予防保全の観点から中長期修繕計画をしっかり立案し、適正な修繕更新を実施することが、結果的にライフサイクルコストの低減や将来のリスク回避につながるため、施設や建物の改修・更新をコンストラクションマネジメント(CM)することとも深い関連があります。
このように、経営的な広い視点を意識したFacility managementは今後ますます重要になっていくことでしょう。

※FM/LCM戦略は、経営戦略の一貫であり、トップダウンで行い、ボトムアップによる現実的な事象とデータを密接に照合することで解決を図っていく手法

※FM/LCM戦略は、経営戦略の一貫であり、トップダウンで行い、ボトムアップによる現実的な事象とデータを密接に照合することで解決を図っていく手法

※1  「 総解説ファシリティマネジメント」による解説
○米国国会図書館に登録されているFMの定義
:FMとは組織における人と業務に対応して、物理的な職場空間を最も適したものにする実務であり、経営学、建築学、行動科学、管理工学の諸原理が統合された分野である。
○IFMA(International Facility Management Association)によるFMの定義
:FMは働く人にとって望ましくかつ効率のよい職場を実現するために、実証済みの管理業務と最新の知識技術を組み合わせて、生産性の高い職場を計画し、実現する経営業務である。
※2 ランニングコスト種別(文中の表に記載の無いもの)
施設管理費…一般事務・施設運営に係わる費用(人件費含む)
除却費………解体費用・土壌汚染処理費用・アスベスト処理費用 etc