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参謀レポート

The Report #27 CMrが考えるBIM~施工段階におけるBIMの最新事例と今後の展望~

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建築図面ツールと聞いて思い浮かぶのは「CAD」ですが、ここ10年で急速に普及しているのが「BIM(Building Information Modeling)」です。2次元のCADに対し、BIMはコンピューター上の3次元の形状情報に、建物の属性情報などを内蔵した建物情報モデルを構築できます。
今回は、建築の新常識BIMの活用について、プロジェクト推進本部 プロジェクト推進第二部門 3部 フェロー 安田 孝が事例をご紹介します。

10年間におけるBIMの浸透

私は、前職はゼネコンで設計を担当しており、10年ほど前、山下PMCがPM/CMを担当する大規模施設建設プロジェクトに、設計者として私も参画していました。
当時はBIMという概念が世に出たての頃で、前職でもまだまだ「全てのプロジェクトでBIMを活用するのが常識」という段階ではありませんでした。

担当したプロジェクトでは、設計・施工者選定のコンペをなんとか勝ち抜くべく、「設計からFM(ファシリティ・マネジメント)までBIMを活用します!」という提案を織り込みました。提案を忠実に守り、竣工図としてフルBIMのデータを発注者に納品しましたが、残念ながら、施工プロセスで施工者がBIMデータを積極的に活用したというわけではなく、また竣工後のFMで、発注者が活用しているという話も聞こえてきませんでした。10年前はこのような状況でした。

このような状況の一方、国策として国土交通省に建築BIM推進会議が設置され、令和2年3月に「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」、令和4年3月には第2版が公表され、BIMの活用を促す流れができつつありました。

令和4年度の改定の背景・目的としては、BIMの活用により建築分野における生産性向上などが期待される中、現状は設計段階のみ、施工段階のみの活用にとどまっていることが課題となっており、プロセスを横断したBIMの促進があげられます。

プロセスごとにBIMは活用されているものの、連続性がなく、横断的な活用は想定されていないことがわかる(出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第2版)」をもとに山下PMCで作成)

現在の設計業務では、BIMは単に作図としてのツールのみならず、設計段階での建築と設備の整合確認や、発注者との意思疎通を目的に、さまざまなフェーズで積極的に使われています。
今回は施工段階、特にフロントローディングを行うための実施設計と施工をつなぐツールとしてのBIMの活用、主に鉄骨発注に関わる施工検討の最新事例を紹介したいと思います。

事例1:鉄骨と梁貫通する設備スリーブの調整を実施

設備調整:梁貫通スリーブの検討。左上:建築モデルに設備モデルを重ね合わせ3Dで確認できる。左下:部分的に切り取り、アクソメで分かりやすく表現した事例。右上:建築と設備を重ね合わせた従来の重ね合わせ図。右下:断面で鉄骨に対する正確なスリーブ位置が確認できる

上の図は、大規模プロジェクトでのBIMの活用事例です。大規模な施設建築では、特にコア部分などで機械設備や電気設備が複雑に干渉する部位が多くあります。鉄骨発注後の施工フェーズにおける手戻りを無くすためにも、施工フェーズ早期の鉄骨発注時に、設備工事専門会社による配管・ダクトなどの施工図を作成し、建築モデルに重ね合わせ、適切な梁貫通スリーブの検討を行います。そのため、早期の専門工事会社の決定が必要となります。

事例2:車路スロープなど、難しい鉄骨納まりと法的に必要な有効寸法の確認を実施

地下躯体:生産情報図(車路スローブ有効高さ)。3Dにより様々な部位での有効高さや幅員などを切り取って検証可能

スロープの鉄骨躯体は、縦断面と横断面の双方に勾配が付くことから、鉄骨の納まりが大変複雑です。かつ、有効高さや有効幅員、緩和勾配や排水溝の納まりなどが重なるため、BIMによる図面の重ね合わせにより、事前に検討を行うことで必要諸元を守った施工の確実性が高まります。

事例3:構造切替部分の複雑な鉄骨納まりの検討

構造切替:生産情報図(精算積算での構造図がベース)。左:切板納まりモデル作成。構造設計者/専門所員と3度の打合せにより作成。右:生産情報図。パネルゾーン内部のダイヤフラム/リブ補強/PC柱定着筋/CFT開口などを検討。パネルゾーンの内部まで詳細にモデル化することで、通常の設計だけでは検証しづらい補強や施工上必要なCFT開口位置などを検討した事例

上の図のように精算積算時点での構造設計図をベースにBIMモデルを作成し、構造設計者と鉄骨担当の専門所員と早期に検討を行い鉄骨切板納まりの検討を実施しました。また、部分的な生産情報図を構造BIMモデルから作成し、複雑なパネルゾーン内部情報を詳細に入力しダイヤフラムやリブの補強、PC柱定着筋やCFT開口などの検討を実施しました。

事例4:鉄骨部材の運搬や組立手順の検討

構造切替:運搬検討、組立手順検討。組み立てられた鉄骨部材形状をユニットごとに検証した事例

鉄骨部材のBIMモデルを利用し、トレーラーでの運搬に際しての問題点の抽出を行い、ジョイント部の検討や、パネルゾーンでの納まり上、WEB勝ちやリブPL勝ちなどの検討や、大梁取合いをノンブラケットにするなどの詳細検討を実施しました。

以上のようにフロントローディングでBIMを有効活用し、労働力の低減や施工品質を高めるための施工段階でのBIM活用の事例を理解した上で、改めてプロジェクト全体を通して、BIMの推進が発注者のメリットにつながることを我々CMrも認識することが重要です。

国土交通省のガイドライン第2版の改定においても、発注者メリットと役割を明確化するために、以下が記されています。

標準ワークフローのパターン例と改訂項目との関係(出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第2版)」をもとに山下PMCで作成)

今後、BIMが設計者や施工者のツールとして今まで以上に活用されていく流れの中で、CMrとして発注者支援の立場でBIMをどの様に推進していくかが課題です。その際には、BIMの本質をとらえて発注者支援を進めていく必要があります。

「そもそもBIMとは何か?」。CADはAutoCADなどでの作図、BIMはRevit/T-fasなどで3Dモデルを構築して形状確認や図面化することであると世間一般的には考えられていると思いますが、もともとは、

であり、BIMは広い意味で、「建築情報の一元管理と情報の共有」であるという考え方がまず大切です。そのような観点で、FM、維持管理フェーズでのBIM活用も視野に入れ、発注者の運用体制も含め、私たちCMrがBIMの活用方法の全体像を理解し、支援していくことが今後求められていくと思います。

特に施工BIMデータの場合、モデルの容量が数十~数百GB規模になるケースも少なくなく、データそのものをどのような形で共有・引継ぎ、また誰がどのような環境で確認していくのか、という点は実務上のハードルになり得ると思います。
ソフトウエアで開くにしても、閲覧や確認に相応の時間や環境を要する場合もあり、「詳細な3Dデータを作ること」と「関係者がそれを適切に理解・活用出来ること」との間には、さらなる解説の余地があるように感じます。
3Dデータを詳細に作成し、それを活用していくという方向性に変わりはないのですが、「情報をどのように人から人へ受け渡していくのか」という運用面については、発注者の立場に立ち、より整理が必要になってくるのではないでしょうか。

山下PMC
プロジェクト推進本部 プロジェクト推進第二部門 3部
フェロー 安田 孝

次回の「The Report」は、山下PMC 笠原 拓がお届けします。

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