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仕事の本質は、情念!?“斬新”の製造方法 | 信藤三雄氏×川原秀仁対談(2)

情報量が多く、美しいビジュアルはどう作られてきたのか… … 仕事の本質は、情念!?“斬新”の製造方法 | 信藤三雄氏×川原秀仁対談(2)

面白い人に会う、興味を持つ

信藤さんの“東京”とはどのようなものなのでしょうか。

信藤 江戸的な文化を今に伝えたいとは思っています。私の祖父は、父方が大工、母方が植木職人という、江戸の職人の家です。ですから幼い頃は、家には三味線のお師匠さんが来ていました。曾祖父は日本橋で染物屋をやっており、曾祖母は金貸し―今の消費者金融業を営む、女親分のような存在感だったようなんです。

川原 江戸の粋を肌感覚で知っている。

信藤 先日、リリー・フランキーさんと対談した時に、「信藤さんがおしゃれなのは、どこにルーツがあるのですか?」と聞かれました。「曾祖母が鉄火肌の女親分なんです」と答えたら、「その血を引いたんでしょうね」と。

川原 伝統文化のエッセンスが血肉になり、オリジナリティとなっていく。私が最初に、フリッパーズ・ギターのジャケットを見た時に、ウエストコーストのレーベル『パシフィック・ジャズ・レコード』のような印象を受けました。それでも、エッセンスを絶妙に取り入れつつ、斬新かつ強烈、独特な個性となって発信されています。

信藤 50年代のジャズレコードレーベル『コンテンポラリー・レコード』のデザインフォーマットがすごく好きでした。

川原 多くの要素をミックスさせ、膨大な情報量を持つ新しく、美しいビジュアルは、どのように構築されるのでしょうか。

信藤 それについては小西君(小西康陽さん・元ピチカート・ファイヴのリーダー)の影響も大きいと思います。彼はコレクターで、膨大な知識を持っています。

川原 ヒプノシス(英国のデザインチーム)とピンク・フロイド(英国のプログレッシブバント)が相乗関係にあったように、信藤さんと小西さんの関係も似ていると。

信藤 初めて小西君と会った時、同じものに興味を示すことが多く、こんなに自分の感性に近い人がこの世にいるのかと感じました。たとえば、リチャード・レスター監督の映画『ナック』(65年)、ジャック・タチ監督の『ぼくの伯父さん』(58年)ほか、多くの共通する作品に 強烈に思い入れがあり、非常に似ているんです。あとは面白い人に会うこと、様々なモノに興味を持つことも大きいと思います。

仕事の3原則 仕事の3原則

仕事に“情念”を注入

好奇心を維持するにはどうしたらいいのでしょうか。

信藤 僕は子供の頃から鏡に向かい、その中の自分に「なんか面白いことないかな」というのが口癖で、今でも続いています。

川原 音楽産業は常に時代の変化を最前線で体現してきました。たとえばメディアは1980年代まではレコード、2000年代にCD、2010年代以降はデジタルによるネット配信・ストリーミング、そして現在は媒体を介せず、ライブなど体験型に軸足が置かれつつあります。これはネットとリアルの融合。今後はあらゆる産業で起こりえる、さらなる融合に対峙し続けていくことになるはずです。

信藤 音楽はこの世の先端、音楽こそが、時代の移り変わりを最初に表現するものだと思います。『ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ』には想定を上回る来場者数を記録して、皆さん、1日いても飽きないと話されていました。その意味を考えると、音楽にビジュアルは必要なんだと結論付けました。つまり、形はどうあれ、“モノとして欲しい”と思えるかどうかがカギになる。未来の形はまだわかりませんが。

対談風景

川原 信藤さんは無機質なCDに命を宿し続けています。我々の仕事も、施設に明確なビジュアルがあったほうが、バリューが生まれ、魂が宿ると感じています。

信藤 すべてのものはエネルギー。CDのジャケットにも僕のエネルギーが入っているはずなんです。

川原 私も仕事に“情念”を注入しようという思いで取り組んできました。この情念がなければ、ビジネスは成立しません。

信藤 仕事には“情念派”と“形派”があって、僕は形派だと思っていたんです。形はつまるところ情念になり、情念も形になる。同じポイントに帰着するんです。

川原 私も情報分析、テクニック、論理がなければ、情念はないと思っています。

信藤 これからは、もっと社会的なことにも取り組んでいきたいと思います。今、僕の生活の拠点は沖縄です。沖縄の古き良き伝統文化と、経済発展をどのように両立させていくか、”お金”という存在を再構築も含めて考えています。

川原 信藤さんがデザインする社会にも興味があります。今日はありがとうございました。

信藤 ✕ 川原 “斬新”の製造方法とは? 信藤 ✕ 川原 “斬新”の製造方法とは?

信藤三雄氏

アートディレクター
信藤 三雄(しんどう・みつお)

アートディレクター、映像ディレクター、フォトグラファー。1948年生まれ。デザイン事務所などを経て、77年に独立。松任谷由実、ピチカート・ファイヴ、Mr.Children、エレファントカシマシ、MISIAほか、数多くのCDジャケットを制作。書道家としても活躍中。現在、沖縄と東京の2拠点生活をしている。

川原秀仁

山下PMC 代表取締役社長
川原 秀仁(かわはら・ひでひと)

1960年、佐賀県唐津市生まれ。大学卒業後、農用地開発公団、JICA等を経て、山下設計に入社。山下PMCの創業メンバーとして転籍し、国内のプロジェクトマネジメント・コンストラクションマネジメント技術の礎を築く。著書に『プラットフォームビジネスの最強法則-すべての産業は統合化される』(光文社)、『施設参謀―建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング』(ダイヤモンド社)がある。

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