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神は細部に宿る 仕事の“守破離” | 杉田孝明氏×川原秀仁対談(2)

神は細部に宿る 仕事の“守破離” | 杉田孝明氏×川原秀仁対談(2)

日本の勤勉さ、丁寧さ、おもてなしの心

川原 改めて、杉田さんのお寿司を食べていると、日本の魅力を感じます。たとえば、勤勉さ、丁寧さ、おもてなしの心……これらを維持しながら、仕事に向き合う人、真の職人がいるから、日本の文化は進化していく。杉田さんのお店は、それらが相互に関わり合って、独特な世界を創っています。

杉田 寿司店を構成するのは、腕、素材、創意工夫のほかに、道具、空間、雰囲気です。その共鳴の中心にいるのが職人で、考え方や姿勢が反映されるといえます。

川原 まさに、バリューチェーンの最終地点ともいえます。

杉田 最近は外国のお客様も増え、なおさら再認識するのですが、寿司店には日本のよさが集約されています。漁師が釣ってきてくれた魂がこもった魚であり、最高の目ききや流通手法を経てきたものだから、命を宿した道具や器が必要なのです。その道具や器も、日本人の勤勉さ、丁寧さ、おもてなしの心、創意工夫から生まれています。

理想の寿司職人像を伝え続ける

川原 それらは有機的につながっていき、その結果、オリジナルになっているのですね。加えて、杉田さん独自の世界観を、従業員の皆さんは修業しながらも楽しんでいるように見える。
それはチームワークというよりは、サッカーのフォーメーションのようなものですね。そこにも経営者として学ぶべきところがあると感じます。

杉田 若い職人が私の店でひたむきに働いている姿を見た、ある著名な料理人から、感心して「いったいどうやったら若い人が付いてくるのか」と尋ねられました。私は「私の理想の寿司職人像をみんなに伝え続けること」と答えました。

川原 その理想とは店舗、サービス、味ということですか?

杉田 それだけではありません。来てくださったお客様に、お寿司を楽しんでいただくことのすべて。それは深く、多岐にわたります。
私自身が理想を高くもち、それを伝え続け、そして仕事を楽しむこと。さらに、これまで以上に輝いて、説得力をもたないと、人を育てることはできないと思います。

川原 技術だけを懸命に磨いても、そのほかのことがおろそかになってはいけない、ということですね。それは総合力が求められる今の時代にとても合致しています。

杉田 私自身、そういう職場で育てられたことも大きいです。今だから申し上げますが、18歳の私はクズ同然でした。独立してからもどん底を味わいました。しかし、修業時代に学んだこと、先輩やお客様など出会う人のそれぞれがもつ〝高い理想〞によって、自然と仕事に向き合う姿勢が正しくなったのだと思います。

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仕事の守破離

川原 私は〝守破離〞という言葉を大切にしています。杉田さんのお寿司をいただきながら、いつもそれを感じる。この守破離は、私が生きている技術者の世界でも大切な思想です。これを暗黙知ではなく、有形伝承をしていかなければならないと思っています。杉田さんはレシピも惜しげもなく公開されますが、技の伝承についてはどのようにされるのですか?

杉田 技術というものは見よう見まねで習得するしかありません。寿司は、細かい作業の繰り返し。その蓄積があるからこそ、大きな目標や理想につながっていくのです。ただ、私が拘っているのは、若手に細かいことをきちんと理屈として考える習慣を付けさせることです。

川原 その結果、杉田さんと同じことができるようになるのですね。考え方や物の捉え方は、どのように伝えるのでしょうか?

杉田 「こうしなさい」と押し付けるのではなく、「なぜそれをやるか」と、考えさせ、理解させます。

川原秀仁

川原 まさに守破離です。〝守〞としては、伝統も含め、師匠に習い、同じことをやり続ける。その蓄積を繰り返すうちに、〝破〞としてのひらめきが生まれ、さらに独自のものを創る〝離〞を生み出す。そのサイクルを続けることが大切です。

杉田 〝離〞を得ても、根底に貫く基本を忘れてはいけません。

川原 10年以上通い続けて、初めて知ることばかり。杉田さんからは学ぶことだらけですね。

-10年以上の親交がある杉田さんから見た、川原について、お聞かせください。

杉田 経営者というものは誰に対しても公平に対応することが大切だと思います。川原さんの場合は、それに加えて、川原さんに対する態度が、誰も変わらないというのが特筆すべき部分だと思います。社会的立場の上下に限らず、川原さんに対し、友達のように接し、時にはネタにされてもいる。それでも満面の笑顔で受けている。社内外から愛されている経営者だと実感しています。

川原 そうですか? それでは、今度みんなを連れてこようかな。

杉田 ぜひ、お待ちしております。

杉田孝明氏

日本橋蛎殻町 すぎた
杉田 孝明(すぎた・たかあき)

1973年千葉県生まれ。中学時代に寿司職人を志し、高校卒業後、東京・日本橋蛎殻町の「都寿司」で12年間修業する。30歳のときに「日本橋橘町 都寿司」を開店。2015年に「日本橋蛎殻町 すぎた」をオープン。食べログの評価は常に最上位クラス。

川原秀仁

山下PMC 代表取締役社長
川原 秀仁(かわはら・ひでひと)

国内における建築・建設分野のプロジェクトマネジメント(PM)、コンストラクションマネジメント(CM)のトップランナーで、国内を代表するメガプロジェクトを多数手がける。PM/CMを普及させている草分け的存在。著書に『施設参謀』(ダイヤモンド社)がある。

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