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地域発「社会先進立国」の実現 | 須永珠代氏×川原秀仁対談(2)

地域発「社会先進立国」の実現 | 須永珠代氏×川原秀仁対談(2)

日本の各地域が変革期を迎えている今、これからの日本をどう発展させていくのか、日本を元気にするヒントを探るべく『ふるさとチョイス』を企画・運営するトラストバンクの須永代表をお迎えして、お話を伺いました。今回は、地域をさらに盛り上げていくためのヒントを探ります。

IT化を進めれば、結論はスマートシティ

須永珠代氏

川原 ふるさと納税で須永さんが地域のよさを見出してくれました。これからは、これをもっと大きく広げて地域の収益力を上げるべきだと感じます。そのために、広域連携を活性化させようとしている方も多くいます。特産品のみならず、文化、地域の人など、いろいろなもののインテグレーション(有機的に統合すること)が生まれていることを感じます。そこにICT(情報通信技術)も含まれますよね。

須永 そうなんです。ふるさと納税が始まってから、自治体の方から「ネットでのマーケティングを教えて欲しい」「ネット集客の方法はどうすればいいか」など質問を受けることも増えました。そこで私たちもできる限り協力しています。この『ふるさとチョイスカフェ』もその一環です。


有楽町の一等地で、実際のお礼の品を展示し、生産者や自治体の職員が自分の地域をPRしています。

都市部一極集中を避けるヒント

都市部一極集中を避けるヒント

「ヒト・モノ・お金・情報が循環している状況を作ることで、地域
は元気になる」と須永さんは言う。雇用をつくり、文化をエリアの
外に知らしめていかないと、人材は流出し、循環が止まってしまう。
これは喫緊の問題であり、ふるさと納税を通じて、外も中も循環す
るようにすることが課題。トラストバンクは、各自治体とタッグを
組み、PRやマーケティング活動も行っている。

須永 先日、三重県の漁港に滞在したのですが、漁師さんが使っていた銭湯や、かつての港町の雰囲気が残る建物などが使われないまま残されていました。これらのハードを有効に活用できるようにしたいと思いました。生活文化遺産のテーマパークのような町は、地域に残されています。

川原 私たちはそれらの再生のプロでもあります。現在の基準値に合わせ、そして快適性も実現します。私が注目しているのは、南魚沼などのCCRC(高齢者たちの継続的なケア付きの共同体)です。

須永 シニア世代の人財活用は、都市部よりも各地域のほうが進んでいると感じます。農業や個人事業主に定年はありませんから、皆さんいきいきと、働いています。ふるさと納税のお礼の品も、高齢者の方々が中心に生産をしているものも多いです。

川原 初めは小さくとも、事業化し大きくしていくという事例もありますよね。

須永珠代氏と当社社長川原

須永 成功すると、意識を変えることができます。可能性が広がっていきます。私がやってきたことは、ふるさと納税で、地域のお金・情報の循環を変えること。スタートしたばかりの4年前に自治体職員向けのセミナーを開いても、最初の来場者は数人でした。当時は可能性について知られていませんでしたから、当然でしょう。しかし今は数百人もの来場者がいます。そこで知り合った方たちが、地元に帰って、外部的視点から自分たちの地元のいいものを探すという輪が生まれ、地場産業が活性化しています。

川原 小さな経済圏が回り出すと、大きなうねりができます。

須永 ふるさと納税の2016年の総額は2844億円です。1億円以上集めた市区町村が500以上もありますから、大きな経済圏に発達していると感じます。

しかしふるさと納税は総務省の制度であり、法の改正が行われる可能性もあります。

須永 もし、改正がされたとしても、確実に自治体は力をつけて、自信をもったと感じます。私が知る限りでは大規模な設備投資をしているところは少ないようですが、地に足をつけて拡大しています。

川原 私もよくお礼の品を見ているのですが、商品力が強いもの、地域のよさが伝わるものが支持されていますね。

須永 それに、最近は雇用の創生や、動物愛護、子供の教育、学校再建にまつわるプロジェクトなど様々な社会貢献のためのメニューも登場しています。

アメリカの「ボールパーク構想」を
取り入れて地域を盛り上げる

アメリカの「ボールパーク構想」を取り入れて地域を盛り上げる

川原が考えているのはアメリカのボールパークのような構想。
「今、日本には野球やサッカーだけではなく、バスケット
ボールやラグビーなども含め地元民が愛するスポーツが広がっ
ています。スタジアムやアリーナでのスポーツで観客を集め、
スタジアム周辺にホテル、飲食店、文化施設、商業施設などを
構築し、スポーツやアートを核にしたエンターテインメントが
楽しめる経済圏を創造することが、地方創生の一手になると
考えています」

川原 集めたお金の使い道というのは、経営のプロ的な視点が求められますね。今や集めたお金をそのまま設備投資に回してはダメだと感じます。須永さんだったらどのようなアドバイスをします。

須永 そうですね。外需を増やすインバウンド、観光、スポーツ、企業誘致、アートなどの企画立案などでしょうか。人が来てくれないと、発展しにくいので、エリアの魅力をつくるところに投資したらいいと感じます。

川原 今、スポーツGDP(国内総生産)という考え方が注目されています。補助金で競技場をつくるというのではなく、スポーツを軸に様々なコンテンツを有効活用し、ネットワークを広げる必要性が高まっています。

須永 そのための人を確保することも課題ですね。

川原 結局、様々なものをIT化し、スマートシティ時代になっても、フェイスtoフェイスのコミュニケーションは不変です。

須永 各地域にとって、人口減少の問題は本当に待ったなしです。地域に行って〝あと10年でこの街はなくなってしまうかもしれない〞と思うことも増えました。

川原 そうならないためにも、今後、なにか一緒に地方創生に貢献できるプロトタイプがつくれるといいですね。今までの日本がやってきたこととはまた違う、イノベーティブな支援をして、本当の意味で活性化させたいと強く思うようになりました。そのために、私たちはどうすればいいのでしょうか。

須永 やはり、人だと思います。地元に住む人と、その土地のいい所を引き出して、広めていく。

SNSの拡散などもその一手になるのでしょうか。

IT化を進めれば、結論はスマートシティ

IT化を進めれば、結論はスマートシティ

須永さんは、日本の地域を巡っていて、IT化の必要性を感じる
ことが多いという。「業務全般にしても、日本の自治体では、
スマート化が急務。人を有効に使う仕組みづくりが、今後のカ
ギを握ります」。 川原は無駄を省く施設づくりに取り組んでき
た。「個人の能力を引き出し、時短や省エネを考えるとITによ
るスマート化は今後も進むでしょう。少子高齢化はこれからも
進み、少ない人員で最大の効果を出す思考が重要になります」

須永 はい。SNS映えを狙った素晴らしい星空、絶景などを世界中に発信することは大切です。その土地を愛している人が投稿したSNSのコメントには、他人に〝そこに行きたい!〞と思わせる吸引力があります。

川原 伝える力は重要ですね。行政にも広報がいますが、最近の自治体のSNSを見ていると、英語や中国語訳がついているものも増えました。〝インフルエンサー〞を上手に活用する仕組みを形成する大切さをとても強く感じています。

須永 行政も変わってきています。私は世界中を旅行するのが好きで、世界の国々と比べても、日本のポテンシャルは高いと思います。自然の美しさ、里山の風景などがもっと広まればいいのにと思います。

川原 日本の風景とスポーツを組み合わせた流れも生まれています。里山サイクリングや、山形県の日本海側で行われたトライアスロンなど、日本の自然は世界的にも有名です。

須永 その後に温泉に入るのもいいですね。自治体にとらわれることなく、広域連携を深め、盛り上がっていくという流れは今後も大きくなるでしょう。

川原 まさに、地域発の「社会先進立国」の実現ですね。私たちの技術やノウハウも、日本の活性化のために磨いていきたいと思います。

日本を元気にするヒント 日本を元気にするヒント

対談を行ったのは『ふるさとチョイスCafé』

東京都千代田区有楽町1丁目12-1 新有楽町ビル地下1階
火曜日~日曜日(祝日含む)11:00~18:00 休月曜日

トラストバンクのスタッフが店頭に立ち、来店した方に、ふるさと納税の紹介・説明を行う。ふるさと納税についての相談、日本の地域の魅力を伝える映像や展示があり、地域の情報をキャッチできる。また、ふるさと納税のお礼の品、特産品・工芸品などの展示も行っており、自治体によるデモンストレーションなども行う。食べ物や飲み物の試食会や、イベントなども積極的に行われており、行くたびに日本の新しい魅力に気がつくスポット。

須永珠代

トラストバンク代表取締役
須永 珠代(すなが・たまよ)

大学卒業後、ITベンチャー、ウェブデザイナーなどの仕事を経て、2012年4月にトラストバンクを設立。 同年9月ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を立ち上げ、ふるさと納税ブームを牽引している。自治体、生産者との対話で、日本に眠る文化資産に気づき、世間に広めてきた。

川原秀仁

山下ピー・エム・コンサルタンツ 代表取締役社長
川原 秀仁(かわはら・ひでひと)

国内における建築・建設分野のプロジェクトマネジャー(PM)、コンストラクションマネジャー(CM)のトップランナーで、国内を代表するメガプロジェクトを多数手がける。PM/CMを普及させている草分け的存在。著書に『施設参謀』(ダイヤモンド社)がある。