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プロ野球ビジネスの構造変革と、球団と球場の運営一体化|原田卓也氏×丹埜 倫氏×川原秀仁座談会(1)

プロ野球ビジネスの構造変革と、球団と球場の運営一体化|原田卓也氏×丹埜 倫氏×川原秀仁座談会(1)

東京オリンピック・パラリンピックの開催が3年後に迫り、スポーツ産業は活況を呈しています。今回は、それぞれ異なるフィールドでスポーツ施設に関わるお二人に、山下PMC川原秀仁がお話を伺いました。お一人は、ZOZOマリンスタジアムを本拠地とし、様々なファンサービスによって観客動員数を増やしたことで知られる、千葉ロッテマリーンズの原田卓也氏。もう一人は、元アスリートで、現在は未活用不動産を利用したスポーツ合宿事業を手掛けるR.project代表の丹埜倫氏。3人の対談を通してスポーツビジネスの展望を考察します。
第1回は、原田氏にプロ野球ビジネスの「今」を伺います。

プロ野球ビジネスの構造変革

原田 今、プロ野球の球団経営においては「メディア」「マーケット」「スタジアム」の3つが重要なファクターであると考えます。メディアを通じてマーケット=お客さんにアプローチし、いかにスタジアムに来てもらうか――つまり今は観客動員が非常に重要なのです。

かつて、毎晩のようにテレビの地上波でナイター中継がされていた時代は、放映権と入場料が主な収入源で、また球団が赤字経営になったとしても、親会社が広告宣伝の一環として補填してくれました。しかし巨人戦のナイター中継の平均視聴率が20%を切り始めた2000年頃から状況が変わります。当時の日本はバブル経済崩壊後の「失われた20年」の真っ只なかにあり、親会社からの赤字補填額が減り始めたのです。ついに2004年、近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併話が浮上し、それに端を発した球団再編騒動が起こります。その結果、2005年、楽天、ソフトバンクというIT 関連企業2社がプロ野球界に新規参入することになりました。本拠地はそれぞれ仙台と福岡という地方都市で、また2004年には日本ハムファイターズが本拠地を東京から北海道へ移すなど、プロ野球の地域密着化が進むきっかけとなります。特に東北や北海道は当時、プロ野球の空白地帯だったので、楽天や日本ハムは球場に足を運んでもらおうと、ファンサービスを徹底しました。

川原 楽天は昨年、球場の敷地内に日本初となる観覧車を設置し、話題になりましたね。かつて野球観戦と言えば、ビールを片手にしたサラリーマンの熱気溢れる応援という印象でしたが、最近は女性や家族連れも多く、老若男女のファンで賑わっていますよね。アメリカの「ボールパーク」のようです。

球団と球場の運営一体化

原田 観戦環境の充実はもちろん、試合の前後、野球以外でも楽しめる「ボールパーク化構想」は、今やプロ野球の球場づくりにおける主流ですが、それに不可欠なのが「球団と球場の運営一体化」です。実は、日本の本拠地球場の所有・運営形態は様々です。まずは所有が民間か、自治体かに分かれ、さらに運営が球団か、第三者かに分かれます。この運営の違いと、球場の営業権益が球団にあるかどうかが、ファンサービスの充実、球団の経営に大きな影響を及ぼすのです[図1]。

[図1] 所有・運営形態について示した分類図

所有・運営形態について示した分類図

日本プロ野球チームの本拠地球場について、所有・運営形態について示した分類 図。
各チームが球場の営業権益を求め、運営する方向に向かっている。
[元資料提供:千葉ロッテマリーンズ]

たとえば、ソフトバンク(福岡ドーム)やオリックス・バファローズ(大阪ドーム)は球団あるいはグループ企業が球場を所有し、運営も行っています。球場内でのグッズ販売や飲食関係の収益も、広告看板による収入も球団に入ってきますし、試合前後のイベントなども自由に企画できます。一方で日本ハム(札幌ドーム)や巨人(東京ドーム)、ヤクルト(明治神宮球場)など、第三者が運営している場合、試合開催のたびに球場使用料を支払う必要があり、球場の営業権益も球団にはありません。

川原 これまではハード(球場)とソフト(球団)が完全に切り離されている状態だったのですね。

原田 ソフトバンクは、ダイエーから球団を買収した当時、球場も他に売却されて第三者が運営していましたが、それでは球団経営の黒字化は困難だとして、その後、球場を買収しました。2012年にIT 関連企業・DeNAが買収した横浜ベイスターズの本拠地(横浜スタジアム)は自治体所有ですが、昨年、運営会社を買収しました。日本ハムも札幌周辺に新球場を建設するという動きがあり、運営一体化へ一斉にシフトしていっています。

川原 その流れはいつ頃から始まったのですか?

原田 実は、ボールパーク化構想を早期に掲げ、球場と球団の運営一体化の先駆けとなったのが当球団です。この球場は千葉市の所有で、以前は第三セクターが運営していました。しかし2006年の4月から、公的施設の管理・運営を企業などが代行できる枠組「指定管理者制度」のプロ野球・第一号として、当球団が指定管理者となり運営しています。これによって、球場使用料の支払い、イベント開催の申請なども不要になり、球団としても球場設備に投資し、魅力あるボールパークにしていこうということになりました。

当球団も含め、今、運営一体化を遂げた球団の多くは、ボールパーク化、さらにはITを組み合わせたスマートスタジアム化を進めており、2020年に向けて加速していく流れにあります。

進行、文:フリックスタジオ
写真:増田智泰

座談会シリーズ『スポーツ産業の構造変革と新しいライフスタイルの出現』

*この座談会は、2017年5月22日発刊の広報誌UNSUNG HEROES09に収録されたものです。

原田卓也

千葉ロッテマリーンズ 事業本部 企画部 部長/パシフィックリーグマーケティング 取締役
原田卓也(はらだ・たくや)

1990年慶應義塾大学法学部卒業後、15年間IT関連企業に勤務。主にセールス&マーケティングやプロダクトマネジメントを担当。2005年3月千葉ロッテマリーンズ入社。主にメディア/ IT 事業、CRM(Customer Relationship Management)、事業企画等を担当し、現在企画部部長としてマーケティング・メディア事業・商品事業・ファンクラブ事業・IT /CRM等を所管。2007年のパ・リーグ6球団共同出資によるPLM(パシフィックリーグマーケティング社)設立にも参画。IT、コンテンツセールス、CRM等のプロジェクトを担当し、現在PLM取締役も兼務。2010年~ 12年まで江戸川大学客員教授(スポーツマーケティング論)。

丹埜 倫

R.project 代表取締役
丹埜 倫(たんの・ろん)

2001年慶應義塾大学法学部卒業後、ドイツ証券東京支店、リーマンブラザーズ証券東京支店に勤務。日本株トレーダーとして勤務する傍ら、スカッシュの日本代表として世界選手権に出場。2006年に金融業界を離れ、R.projectを設立。現在は千葉県、山梨県、東京都で10事業を展開中。地元地域と深く関わりながら、都会や海外からの人の流れを創出し地方地域の活性化を目指している。現職の他、ロハスインターナショナル取締役、鋸南町観光協会理事、館山青年会議所会員、城西国際大学観光学部講師を務める。

川原秀仁

山下ピー・エム・コンサルタンツ 代表取締役社長
川原秀仁(かわはら・ひでひと)

1983年日本大学理工学部卒業後、農用地開発/整備公団、農水省、JICA等を経て、山下設計に入社。1999年に山下ピー・エム・コンサルタンツに転籍。山下PMCの創業メンバーとして参画し、国内CM技術の礎を築く。CCMJ、認定FMr、一級建築士。主な受賞に2012年国際CMコンクール準グランプリ(武田薬品工業湘南研究所プロジェクト)他。近著に『施設参謀――建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング』(ダイヤモンド社)。