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山下PMC川原秀仁×創造系不動産 高橋寿太郎「顧客ニーズの変化に応えるために」

山下PMC川原秀仁×創造系不動産 高橋寿太郎「顧客ニーズの変化に応えるために」

2016年6月3日、東京・京橋のイトーキイノベーションセンターで、「施設建設をめぐる新たな動向」をテーマとしたトークイベントが開催されました。建設リスクを経営資源に変えるコンサルティングを行う山下ピー・エム・コンサルタンツ。一方、建築家やデザイナーと協働したプロジェクトを提案している創造系不動産。イベントでは、この二つの会社の新たな取り組みにスポットをあて、熱いセッションが展開されました。最初に、それぞれの会社の特徴について、両社の社長のプレゼンテーションをお届けします。

施設の“iPhone化”を目指す/山下PMC 社長 川原秀仁

山下PMC 社長 川原秀仁

川原 事業者の方が施設を建てたいと思ったとき、私たち山下PMCは、施設のプロフェッショナルとして、事業者の“想い”を施設という形に具現化するお手伝いをします。

ほとんどの事業者の方にとっては、建設プロジェクトは非日常業務です。大きな投資を伴うため、プロジェクトを専任でマネジメントする機能が必要になります。私たちの会社は、建物の設計や施工をするのではなく、そのマネジメント業務だけを専業で行っています。

事業者の方は、新しい事業のための戦略を立てます。その事業戦略を施設戦略に融合した形にしてご提案することこそが、私たち山下PMCの役割です。ときには事業創造の段階から関わっていきます。

そして、建設プロジェクトがスタートすると、設計・施工などの全プロセスにおいて、最も合理的な進め方を提案し、スピーディーかつスムーズに施設の実現をマネジメントします。完成後に、事業者の方が施設運営、事業運営を始められた後も、ライフサイクルマネジメントの観点から、お客様のさまざまな課題を解決するためのサポートを行います。

山下PMCの仕事は事業戦略と施設戦略の融合

実現化から運営まで、事業プロセスのすべてにおいて、事業戦略と融合した施設戦略を提案。

川原 山下PMCでは、日本が持つ強みを未来に向けて伸ばしていくために、「7つの戦略」を掲げ、取り組みを始めています。

1番目は、これまで通り「技術先進立国」を堅持すること。
2番目は、インバウンドを取り込んで観光立国となる「クールジャパンの国づくり」。
3番目が「国内インフラ・RE(不動産)の再構築と強靱化」。
4番目が「健康長寿社会の実現と少子高齢化対策」です。

これらは日本を活性化していく軸となる部分です。そして、それをバックアップしていくためには
5番目の「メディアおよび情報流通の変革」や、
6番目「金融ビジネスの変革」が必要です。

また、これらを起点に事業創造し、施設に展開していく際に、より合理的に実現できるよう、 7番目の「建設生産制度の改革」にもチャレンジしていかなければまりません。

山下PMCが取り組む領域→「顧客の創造」のための7つの領域

日本の強みを伸ばす7つの領域。特に1〜4のインテグレーテッド化によって新たなビジネスプラットフォームを創造することが重要。

日本の強みを伸ばす7つの領域。特に1〜4のインテグレーテッド化によって新たなビジネスプラットフォームを創造することが重要。

川原 そして、ここが重要なのですが、日本を活性化していく軸となる1から4番目の中心に位置するキーワードが「インテグレーテッド化」です。つまり、いろいろなものが統合・融合していく世界です。今、都市も地域も施設も、インテグレーテッド化に向かって動いています。

人口が減少する中で、街はコンパクトシティ化を迫られています。また、これまで「工場」や「研究施設」といった、一つの用途のためにつくられてきた施設も統合化され、一つの建物に複数の機能をもたせるケースが増えています。

私たち山下PMCが、これから実現したいと考えていることは「施設のiPhone化」です。iPhoneは、電話機能だけに限らず、カメラ、音楽・映像、地図といったさまざまなソフトを自由に扱えるプラットフォームです。同様に私たちも施設というハードをプラットフォーム化し、施設に求められるさまざまなソフト要素を結びつけていきたい。

そしてそこから生まれる新たな事業体系や施設体系を、お客様の施設参謀として実現できる存在でありたいと考えています。

これから起ころうとする社会的なモード

個別の施設は集約・統合化が進み、まちはコンパクトシティ化し、さらに自治体にも道州制の流れが見られる。全ての事象がインテグレーテッド化していく。

個別の施設は集約・統合化が進み、まちはコンパクトシティ化し、さらに自治体にも道州制の流れが見られる。
全ての事象がインテグレーテッド化していく。

※「7つの戦略」について、詳しくは「事業と施設のインテグレーテッド化〈前編〉世界を制するビジネスはどこから誕生する?」をご覧ください。

建築と不動産のあいだを追究する/創造系不動産 社長 高橋寿太郎氏

創造系不動産 社長 高橋寿太郎氏

高橋 私たちは創造系不動産という小さな不動産会社です。
創造系不動産の経営理念は、「建築と不動産のあいだを追究する」。これだけです。

建築業界と不動産業界というのは、外から見ると同じような業界に見えます。実は私は、10年前に建築設計の世界から不動産業界に転職したのですが、中に入ってみると全く違っていました。

建築設計においては、設計者はビルでも住宅でも、モノづくりのスピリットを存分に発揮してつくります。一方、不動産会社は、顧客である買い主と売り主の「取引」を万全に遂行することに重きを置いています。建築と不動産業界、両者の仕事の間には大きな壁が存在しています。

不動産と建築の間に立ちはだかる壁

不動産側の土地選び(R)と建築側のデザイン(D)の間に壁ができてしまう。

不動産側の土地選び(R)と建築側のデザイン(D)の間に
壁ができてしまう。

お客様が建物をつくるとき、まずビジョンを明確化し、ファイナンスを考え、どの土地に建てるかを考えます。次に建物の設計、施工を依頼し、できた建物を運用していきます。しかし、建築と不動産の間の壁が、このプロセスの真ん中である「土地選び」と「設計依頼」の間に立ちはだかっているのです。この壁があることで一番損をするのは、お客様なのです。では、お客様はどんな不利益を被るのでしょうか。

高橋 一つの例を説明しましょう。私は昨年『建築と不動産のあいだ』(学芸出版社)という本を出しました。そこに載せたクイズです。図を見てください。「A」「B」、二つの土地があります。「明るい光が入る家が欲しい」という人が、暮れも押し迫った12月に候補の土地を見学に行きました。あなたならどちらの土地を選びますか。

たいていの人は「A」の土地を選びます。しかし実際は、「B」の方が明るいのです。こういう錯覚が不動産にはたくさんあります。もし土地を見学するときに、設計の知識を持った人が一緒に立ち会っていれば、「B」を勧めて、そのお客様は損を免れたかもしれません。しかし、現実には、設計者と不動産会社の人間が顔を合わせることは、ほとんどありません。

問:AかB。どちらの土地を選びますか?

問:AかB。どちらの土地を選びますか?

建物完成後の日当たりイメージ

建物完成後の日当たりイメージ

私たちの会社では、建築のプロと不動産のプロが、建物づくりの最初から最後まで、パートナーとしてお客様をサポートするというシステムを採っています。「建築と不動産の間を追究する」というのは、お互いの仕事のプロセスを混ぜ合わせることです。設計者と、お客様、不動産会社の三者で「いい建物ができてよかった!」と喜び合う、そういうシーンをどんどんつくっていきたいと考えている会社が、私たち創造系不動産なのです。

文:三上美絵
写真:鈴木愛子

トークイベント「施設参謀」シリーズはまだまだ続きます!

川原秀仁

山下ピー・エム・コンサルタンツ 代表取締役
川原秀仁

1960年、佐賀県生まれ。大学卒業後、農用地開発/整備公団、農水省、JICAなどを経て山下設計に入社。1999年より山下ピー・エム・コンサルタンツの創業メンバーとして参画し、国内のCM(コンストラクション マネジメント技術の礎を築く。メガプロジェクトを中心に多くのCMプロジェクトに従事している。著書に『施設参謀 建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング』(ダイヤモンド社)がある。

高橋寿太郎

創造系不動産 株式会社 代表取締役
高橋寿太郎

1975年、大阪生まれ。京都工芸線維大学大学院 岸和郎研究室修了後、古市徹雄都市建築研究所勤務を経て、東京の不動産会社に転職。2011年、創造系不動産を設立、「建築と不動産のあいだを追究する」を経営理念とし、建築家やデザイナーと協働してプロジェクトに取り組むことで顧客の利益を創造する。著書に『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』(学芸出版社)がある。