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ディーコープ谷口健太郎氏に訊く「リバースオークションの賢い使い方とは?」

ディーコープ谷口健太郎氏に訊く「リバースオークションの賢い使い方とは?」

リバースオークションをご存知でしょうか? 買い手が売り手を選定するために、売り手が競り下げ方式で入札する手法です。購買支出削減の強力な武器となる可能性を秘めていますが、はたして建設プロジェクトや施設の維持管理のコスト削減にも有効なのでしょうか。比較購買のソーシングサービスを行うディーコープ代表の谷口健太郎氏に、リバースオークションの実情についてお聞きします。

前記事:ディーコープ谷口健太郎氏に訊く「コスト削減で一番大切なことは?」

ITを活用したリバースオークションで無駄をはぶけ

ディーコープのリバースオークションについて教えて下さい。

ディーコープは、ITを使って間接材を中心とした購買支援サービスを行う会社です。間接材とは、製造業では製品づくりに必要な原材料以外の梱包資材、作業着、工場内の清掃や設備の法定点検など、小売流通業だと商品の仕入れ以外で店舗オペレーションに必要なレジ袋やゴミ袋、ユニフォームなどといったものがあります。企業が利益を上げていくには、売り上げを増やすことと並行して固定費や変動費といわれる販売管理費を下げることが必要です。そこで間接材の領域の購買──先ほど申し上げた「非戦略購買」の部分──からも利益を生めるよう、複数社から見積もりをとる比較購買により、購買支出の削減を図っていただこうと。その1つの強力なツールがリバースオークションです。

すでに私たちは69,000件を超える比較購買支援の実績があり、購買する側のお客様は1,600社を超えています。また、参加業者は約12,000社を抱えています。

私が以前に経験したトルコの病院建設プロジェクトでは、5000万ドル規模の入札にもかかわらず、わずか100ドル単位で値段を下げていくので、リバースオークションは延々と続きました。入札自体の時間がかかるということも大変なことではありましたが、日本から12時間かけてトルコに入り、そこから1日かけてイランまで70Km足らずという場所まで出向いて対面でオークションを行っていました。

この時間と空間を飛び越えることができるのが、ITを使ったリバースオークションです。私たちのリバースオークションの平均時間は3時間で30札ほどです。これは通常の比較購買で、10社から3時間の間に30もの相見積をもらったことと等しい。大変な業務効率アップです。自ら現地に出向いて対面することも考えると、リバースオークションに参加するまでの時間短縮はすごいものだと思います。ITを活用することでかなりの工数短縮ができるようになったのです。

建物の建設や維持管理はリバースオークション向き?

どんな案件でもリバースオークションが可能ですか。

すべての案件でリバースオークションができるわけでなく、ケースによってさまざまな条件設定があります。それは企業が何を求めているのかにも関係してきます。

そもそもリバースオークションでは入札するにあたって、仕様書を整える手間がかかります。これを考えると、間接材といえども、ある程度大きな領域についてリバースオークションは適っていますが、一方で小さな金額のものにはあまり適しません。トイレットペーパーなど少額の消耗品であれば、最安にするため購買に手間をかけなくてもそこそこ安ければそれでよく、むしろ発注の手間を省いたほうが全体最適になるという判断もあります。

建築物に関してもディーコープはコミットしているのですか。

ええ。建物の建設や、施設管理についても同様です。たとえばデベロッパーがビルを建てる際に、建屋の設計・施工はゼネコンに一括発注するとして、ジェネレーターやキュービクル(受電設備)、昇降機などの設備機器についてはコストコントロールのため分離発注にし、リバースオークションを施主に勧めることもあります。ビル清掃、警備、電気保安業務、消防設備点検など、建物の維持管理のところでリバースオークションするケースもあります。

品質はどう担保するのか、という質問もよく受けるのですが、手法はたくさんあります。分離発注でも全体の品質管理はゼネコンに依頼し、その分をコストオンして全体責任をゼネコンに取ってもらうという方法もあります。基本的には、リバースオークションの際に事前に仕様を厳格にチェックし、条件を満たせないサプライヤを参加させないことです。

ただ正直な話、業者の選定が値段という経済合理性だけで決まらないことも多い。たとえば保険会社は日本有数の不動産デベロッパーですが、彼らが重視するのは値段だけではなく、サプライヤが自社の保険のお客様かどうかです。つまり営業と密接な関係があり購買も含めてひとつのビジネスモデルになっていて、そういうところでは、リバースオークションというか入札制度そのものが馴染みません。

サプライヤの評価情報も加味したより質の高い情報を目指す

そうした不合理なビジネスの在り方は、是正していくべきだと思われますか?

いや、私たちは適正な「競争」を促す会社ではありません。そもそも、私どもは適正な「購買」をするにはどうすればいいかを考える会社です。お客様が求める購買条件や製品仕様をきちんと整理して、これに見合うサプライヤの情報を収集・評価するという、比較購買のソーシングに関する一連の業務を行う会社です。そのための手法の1つとしてリバースオークションがあるということです。価格だけが決定要素ではなく、お客様の固有の事情や条件に応じて的確なソリューションを提案することにこそ、私たちの比較購買のプロとしての存在理由があると思います。購買に関する企業のニーズには多様なものがあり、じつはさまざまな条件設定が行われているのです。

とはいえ、これから労働人口が減り、人手不足の中で競争だけをしていれば、需要供給の原理から価格はどんどん高くなっていきます。いま東京オリンピックを控えた建設業界が、まさにこの問題に直面しています。適正な税金の使われ方が担保されることを前提に、サプライヤが平等に利益を確保できる、新しい購買の仕組みをつくる必要があるのではないかと、個人的には思っています。

最後に御社の今後の取り組みについて教えてください。

清掃や警備といった業者選定で、新規の業者を選ぶときに一番重要なのは、業者の仕事ぶりに関するリファレンスです。そこで業者を選定したあとの評価情報をデータベース化して、お客様に提供していきたい。私たちのところにはまさにそうした部分で質の高い情報が集まってきますから。

今後は、業者リストの更新や仕様の検討・変更についてのコンサルティング業務なども可能な限り自動化し、お客様により使い勝手のいいサービスを提供していきたいです。たとえば、ソフトバンクのロボット、ペッパーに相談すれば購買の業者が選定できるイメージです。こうした完全な自動化システムができれば、日本のみならず世界でも初めてのソリューションになりますね。

聞き手・文:陣内一徳

谷口健太郎
Kentaro Taniguchi

1961年、広島県生まれ。早稲田大学理工学部大学院にて修士号取得。日商岩井株式会社を経て、2000年、ソフトバンク・イーコマース株式会社に入社。2001年、インターネット上で建築オープンマーケットプレース運営および入札を行うシーエムネット株式会社取締役副社長、2003年ディーコープ株式会社執行役員、2006年現職。