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CRE戦略マガジン

時代を切り開く新ビジネス戦略の重要な視点・その1 時代を切り開く新ビジネス戦略の重要な視点・その1

ICT を利用したビジネス戦略
ICT 普及によるビジネスのパラダイムシフト

コミュニケーションツールの一つとして社会インフラ化したICT は、その進化の速度を加速させながら更なる多様性を見せている。我々を取り巻くビジネス環境が激変している現在、その変化を予測して適応していくことは企業において必須の対策である。更に、今日見られる企業の戦略として、フェイスブックがSNS を、セールスフォース・ドットコムがエンタープライズ・ソフトウエア業界を刷新していることや、アップルとエンターテインメントの新しい繋がり方、自動車とITS(高度道路交通システム)の関係などに共通することは、ICT を利用したイノベーションであり無数のパートナーを巻き込んで進化する一つのシェイピング戦略といえることである。

ICT 活用によるビジネス展開

ICT を活用するビジネスを成功へ導く要因として一つ挙げるとしたら、近年途切れることなく登場する新種のコミュニケーションツールを利用することである。

もちろん事業内容を定めるため、誰(コアカスタマー)を対象とした事業なのか、ライバル企業との違いは何か(または、どのライバル企業と協働体制を組むか)、創造する新しい(ゼロサムでない)価値は何か、そのためにどのようなコミュニティ・コラボレーションをつくるかが先決である。その上で、必要なソーシャルネットワーキングツールを選定し、市場調査や顧客からのフィードバック、情報開示を積極的に行っていくことが、今日の企業に求められている。

もう一つ重要な要因としてオープン化が挙げられる。ICT を利用して積極的にコミュニティや関係者に情報を開示し、他企業・業界と協働していくためには、企業独自のノウハウは一部流出させる必要がある。しかし、コア技術やノウハウの強みを確保しつつ、ICT を利用することで社外の「智」と融合すれば、より高い次元に価値を高めていくことや新しいグローバルスタンダードを創造していくことができる。

ICT コミュニティの発達

Platform ソーシャルネットワーキングツールを利用して有用なコミュニケーションを成り立たせるためには、強い絆で結ばれたコミュニティの力が重要となる。
企業が自らの業績向上のみを目的として、上から目線だけでそのツールを利用したならば、オンラインコミュニティを重視するICT 社会においては致命的となる。双方向の広告媒体であることを充分認識し、顧客の小さな囁きが何千倍にもなるツールであることを理解する必要がある。
クライアントや利用者のことを第一に考えるのであれば、自社のメニューだけで顧客の満足するサービスが提供できない場合、コラボレーション企業や他社のHP へ誘導することなどが、信頼・尊敬・評価を勝ち得ることになる。

形だけのCSR を掲げるのではなく、秘密主義を排除した透明性と開放性が顧客の心をつかむ時代が来ていることを意識しなければならない。

ICT のプロアクティブな利用

ICT 技術を利用した一つの可能性として、バーチャルとリアルの融合による新しい価値の創造がある。

仮想と現実の境界が無くなっていく世界では、例えば実態の移動を伴わない旅行を定義できるかもしれない(心理的効果・映像と同化・リラックス)。ユビキタス社会の最新医療施設においては、病室にいながら擬似環境が形成できる。モバイルカメラによるバーチャルアイは患者さんの仮想的な眼となり、旅行に行きたい場所へ自由に移動できる。

また、療養を兼ねた観光中にもユビキタス医療機材を携帯し、常に遠隔による医療スタッフの診断が受けられることも考えられる。

内閣に設置(平成13年)されている「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」における平成22年の重点戦略に「地域の絆の再生」を挙げている。これは情報通信技術(ICT)を活用することにより国民が地域を問わず質の高い医療サービスを受けることを可能にするための政策であるが、高齢者のための在宅医療・介護の推進の域を出ていない。この戦略自体は重要な内容であるが、リアクティブな対応のみではなくプロアクティブな展開を実現したい。

融合とイノベーション、新しい日本の魅力とは

今まで独自に発展してきた領域、例えば病院・ホテル・旅行・スポーツジム・アミューズメントなどは、それぞれの役割を分離しなくてもよい。人が健康になるために、運動をして、病気を予防して、旅行や観光をする。ひいては地域活性化につながる。そのためにはさまざまな規制緩和や、移動の容易性を確保するための観光地を含めた広域バリアフリーが重要である。また、病気の種類と予防や回復に効く観光場所の関連が見つかるかもしれない。自分の好きな観光地で医療を受けたり、生涯を終える場所を選ぶことが一般化するかもしれない。

ローカルな強みを生かし、ICT を利用してグローバルに展開する(グローバルニッチの開拓)。既に一部地域では観光の分野で世界に向けた発信がなされているが、更に高度医療・安全・安心・エコ・バリアフリーな都市として日本の発信すべき潜在的魅力は多い。また、既述のコミュニティ主導のニッチな旅行企画を実現したり、多くの要望がある企画を事業化するなど可能性は広がっていく。

最後に日本の強みとは何かをもう一度検証する必要がある。暗黙知として日本人が有するおもてなし・きめ細かさ・案ずる心…ICT を利用して形式知へ変換していくことが難しい領域でもある。持てるポテンシャルを融合して発展させるためには、横断的知識を有した人材を育てるとともに、そのプラットフォームを創ることが重要になっていく。