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今後の建設業界の動向とマネジメント 今後の建設業界の動向とマネジメント

21世紀が始まってそろそろ10年になろうとしているが、この間の経済の激動ぶりには驚愕させられるものがある。投資ファンドの隆盛があったかと思えば、100年に一度の未曾有の不況と言われるような事態が世界中を急激に覆い尽くしてしまう、まさにジェットコースターのような展開である。経済をもはや日本一国だけで語るのは到底不可能な時代が到来した。経済においては国境など存在しない、疑いようのないグローバリゼーションが国内にも否応なく浸透したことを重く受け止めなければならない。

それはグローバルスタンダードという言葉に名を借りた熾烈な競争社会である。新しいパラダイムやコンテンツが生み出されると、それは一気に市場全体を席巻してしまい、その供給者は大きな成功と富を得て一人勝ちする。それについていけない人たちは、市場からの突然の退場を求められ、あるいは淘汰を余儀なくされてしまう一触即発の世界である。

この現代経済をリードする要素は、大前研一氏が示されているような1.ボーダレス(境界なき競争) 2.サイバー(電脳情報社会) 3.マルチプル(乗数経済)の3つで表現される。このいずれかの要素の中から新たなパラダイムやコンテンツが生まれる。ただそれは水面下の見えない世界の中で進行するため、その見えない実体に気づきそれを見通せる人だけに大きな事業機会が訪れる。逆にこれに気づかなければ、たちまち負け組の世界へと追いやられてしまう。建設関連産業に携わる私たちにとっても、これは蚊帳の外のおとぎ話ではなく、まぎれもなく身に迫る現実であり、この中で私たちは生き残りのための戦略や行動を考えていかなければならないのである。

国内の建設投資に目を向けてみると、2009年度の建設投資見通しは47兆円であり、最大であった1992年度84兆円の56%と半分近くにまで縮小した。対GDP 比率でも1992年度は15%以上を占めていた数値が、2009年度見通しでは約9.8%でしかない。現在の民間建設投資はリーマンショック後の影響を受けて低迷どころか雷雨状態であり、公共建設投資も減少の一途をたどっている。しかし冷静に考えてみれば、現在のこの数値が本来の先進国の正常な姿であり、他の先進国に比べてみれば、むしろまだ2~3%(対GDP 比率)は下がってもおかしくないくらいである。もはや土建国家と揶揄された頃の面影はなくなり、かつて土地神話という狂信的な言葉でこれを絶対的担保に、持合い株やメインバンク制度で結ばれた絆を利用して、一国の中だけで互いに商行為を繰り返していたあの牧歌的な時代にはまず戻れない。ただそれはつい10年ほど前の話であり、たった10年と少しの間に、この国は、名実ともにグローバル高度資本主義社会(かなり強欲な面はあるにしろ)へと切り替わってしまったのである。

建設事業の進め方においても、一つか二つしかなかった事業推進方式から、現在ではいくつもの選択肢が生まれ、その中から事業主はその事業の条件に最良と思う方式を選択できるようになった。それと時を同じくして「マネジメント」概念が勃興し、一時の不動産投資ファンドの隆盛によって国内の建設投資の世界にもAM やPM あるいはCM といった形で、各種のマネジメントが広く浸透していったのである。しかし、それは何も建設業界の中だけの話ではない。あらゆる業種が同時発生的にマネジメントの重要性に気づき、その実用に向けて真剣に取り組むようになった。それに現在は、新たに生み出される事業自体がいくつもの業種を包括するような複雑なスキームに進化しており、それにはマネジメントが必要不可欠な事業推進アイテムとなっているのである。

今後、建設業界も今まで以上にグローバリゼーションの中での戦いを強いられることになるのは間違いない。マクロ的に見れば開発・新築はさらに縮小し、替わりにリニューアル・コンバージョンのようなストック社会への変換がこれまで以上に進行するだろう。建設という一つの業種だけの視野では早晩立ち行かなくなる世界が、もうかなり深く浸透している。新たな事業創造の萌芽と伝播により新たな収益構造が展開し、企業はより総資産利益率(ROA)を重視した事業戦略を求め、新たなパラダイムの担い手になる市場開拓者が次から次に登場する、そしてそれはIFRS(国際会計基準)のような制度導入でさらに劇的に変化する、こんな厳しい現実が待ち受けているのである。

そんな中でマネジメントはさらなる進化を遂げると思われる。それは、企業の社内外を問わずあらゆる業種や事業で、マネジメントが存在しなければ高度な解決が果たせないからである。マネジメントは、業種と業種を連結し融合させながら、とてつもなく高度で巨大なシステムへと変貌する予感がしてならない。私たちも、クライアントのために、地に足のついたサプライチェーンの構築・管理ノウハウを基軸にしながら、社会を劇的に動かすシーズ(種)を正確に見抜けるスコープ眼と迅速な対応力を持ち続けていたいものである。それが、クライアントの真のパートナーとして、「UNSUNG HEROES」と私たちが名乗ることができる証だと確信している。

メディア紙上では悲観的な話が多い一方で、日本は現在色々な意味で世界から注目を集めている。米アップル社のシラー上級副社長が「日本市場は魅力ある技術を一番評価してもらえるし、生まれもする地域、エキサイティングで楽しい市場だ」と指摘しているように、世界の人々を魅了するアイテムやコンテンツが数多く存在する。だから何も萎縮する必要はない。日本人のもつキメ細やかな解決技術と顧客をもてなすホスピタリティー精神をもってすれば、必ず世界に伍して戦える。日本から拡がっていくパラダイムだって、きっといっぱいあるはずだ。なにしろ世界はボーダレスなのだから!