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エコの先に何がある? エコの先に何がある?

環境主義にはご注意を!

今年の夏は猛暑・激暑・酷暑とあらゆる言葉を当てはめても言い表せないくらいの過酷な気候でした。体温を超える気温に晒されたら、とても正常な思考回路は働きません。この“ 異常気象?” はやはり人災なのでしょうか。いわゆる私たちの排出した地球温暖化ガスによる影響が、こんなに暑い夏をつくり出してしまったのでしょうか。

主に先進国である私たちが、今まで豊かな暮らしを享受してきたために、その副作用として地球が暖まってしまった。この因果関係を否定することはできませんが、盲目的に信じてしまうのも危険です。

最近指摘されている氷河の後退も、数万年前から発達と消滅を繰り返していますし、大規模な気候変動も超長期の視点で考えることが重要です。

“ 環境” の視点を最重要視して、自然そのものに最も価値があり、人間の価値より“人間以外” の“ 自然” を守ることを最優先し、その国の文化までも否定することを「環境主義」と呼ぶとしたら、私たちはそれを無批判に受け入れるべきではないでしょう。


環境主義にはご注意を!

エコ=エコロジー×エコノミー

エコをエコロジーの意味だけに捉えるのではなく、しっかり経済性も加味した考え方であると定義することが一般的です。天然資源の少ない日本にとって、省エネは非常に重要ですし、既にあらゆる設備機器の省エネ化が図られてきました。省エネ技術を更に推進するために、各種補助金や税などの優遇制度を充実させることは重要ですが、それらの優遇制度はその効果がどれほどのものなのか、しっかり検証する必要があります。

例えば省CO2を推進するための補助制度であるならば、CO2を1t 削減するために、付加した設備の減価償却コストやエネルギーコストをできるだけ正確に算定して、より効果的なシステムに優先して補助金を交付しなければならないでしょう。また、太陽光発電の補助制度が復活して随分時間が経ちましたが、設置者に経済的メリットが発生するのは、十数年経過した後です。補助金がもらえないと経済的メリットが出る前に太陽光発電装置の寿命が尽きてしまいます。つまり、この制度の目的は、国内における太陽光発電の普及を促進し、装置の生産コストを下げ、更なる普及を推進することが目的です。しかし、海外の安価な太陽パネルが輸入された場合、補助金の 一部は海外企業の生産コスト削減のために私たちの税金が利用されたことになってしまいます。

エコライフは魅力的?

クールビズ今年の夏で、車の補助金制度が終了しました。企業側の省エネ車の更なる効率化と省コスト化に寄与していれば優遇制度の目的は達せられることでしょう。でもエコを推進するためには、別の視点も必要です。自動車の世界でハイブリッド車が出始めたころ、多くのハリウッド俳優達が高級車からハイブリッド車に乗換えていました。世間にインパクトを与える人達が、率先してそのような行動に出れば、自ずと大勢の人々も省エネ志向の車を購入するようになるでしょう。このことは、“ かっこ良さ” や“ ライフスタイル”が重要であって、“ 環境のために” は副次的効果なのです。
随分昔、省エネルックというのが流行りましたけど、当時広まることはありませんでした。多分かっこ悪かったからでしょう。それが今はクールビズに形を変えて、少しずつ導入されてきています。この夏の異常な暑さも影響しましたが、そこには“クール”さが一役かっているからでしょう。 建物でも同様な仕掛けが必要です。省エネビルがかっこよく見える仕組み。ビルの設備システムとして、影ながら省エネに寄与することも必要ですが、そのビルで働いている人達がみんなに自慢できるような世の中になればもっといいですね。省エネ志向でないビルで働くことはかっこ悪いことだと。

エコビル 日本の建物の「環境性能」を数値化したCASBEE などが取り入れられてから、特に新築のビルでは最高ランクの「S」クラスであることを強調して世間に公表しています。これらの省エネビルが生涯発生する運用コスト(エネルギーコスト)を最小化することと合わせて、“ 環境へ与える負荷の割に性能が高い” というお墨付きをもらった分けです。これらは不動産の価値を高めることにつながるはずですが、いわゆる“サスティナブル不動産”として、テナント誘致が促進され、投資家による関心が高まり、エコビルの流れが加速するには、“理屈”だけではないそこで働く人たちの“ 感情” に訴える仕組みが必要なのかもしれません。

エコはバランス

かつて「ローマクラブ」の「成長の限界」(1972年)では、地球の物理的限界を人口、資源、食料、工業生産、汚染の観点から、ある限定した条件下での考察と断った上で、地球へ与えるインパクトが指数関数的に増加していることに警鐘を鳴らし、均衡社会実現の提言を行ってきました。今その流れは、サスティナブル社会として、私たちの取るべき具体的アクションが明示されるようになりました。

また、“ 生物多様性” に重点をおいたNGO や企業の活動も活発化してきました。今までの人間を中心とした文明社会ではなく、人間もエコシステムの一部であるという考え方から、他の生物との共生と多様性を守っていく活動です。

人間や企業が経済活動を活発化させる上で、今までコストを意識しなかった空気や水、他の生命そのものにも本来価値があります。今後はそのような“ 価値” を可視化し、CO2と同様、経済システムの中に組み込まれていくことでしょう。

先進国の私たちは豊かな物質消費社会を享受することができました。でもこれからは、古来の日本に備わっていた、“ ほどほど感” を再認識して資源やエネルギーを使用して生活しなければなりません。また、企業は目的とするものやサービスを創り出すために、材料と1次エネルギーを無駄なく有効にインプットすることで、より付加価値の高い製品や知的生産物をアウトプットしなければなりません。

 

エコの先にあるもの

エコの先にあるもの 地球上の生物は、旧来“ 自然” と共生してきました。完全にエコシステムの中での生命活動だったわけです。生物たちは、後世に渡り存続していくために、何世代も世代交代を繰り返し、環境に適応してきました。人間が他の生物と違うのは、1世代の間にものを考える“ 頭” が発達してきたことで世代交代しなくても環境に適応できる生物になったことでしょう。
考えることができるということは“ 自然” を客観的に見ることができる“意識”があることです。その“ 意識” は“ 自然” から独立しているようにも見えます。でも私たちの意識が体に、私たちの体が他の生命に、他の生命たちが地球環境の影響を受けることが分かっているからには、その関係性を理解して適切な行動をとることが必要でしょう。

環境や自然は無限ではありません。実は“時間”も私たちが創っていかなければならないものなのかもしれません。エコの先にあるものは、私たち人間が他の生物を含めた自然と共生し、限りあるエネルギーを利用しながら、より高い次元の価値を生み出すことができる“ 時間” なのではないでしょうか。

【注釈】
ローマクラブ(Club o f R ome):
イタリア・オリベッティ社会長アウレリオ・ペッチェイとイギリスの科学者アレクサンダー・キングが全地球的な問題に対処す るために設立した民間のシンクタンク。〈1970年3月正式発足〉
http://www.clubofrome.org/eng/home