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まちのマネジメント−企業が地域を育てる まちのマネジメント−企業が地域を育てる

人口減少による「都市縮小」の時代に、近年エリアマネジメントの重要性が認識されてきました。地域資源を掘り起こし、経済を活性化させ、魅力や集客性を高め、環境を整えていく地域づくりですが、ここに企業が参画することの意味を考えます。事業モデルそのものが模索されているエリアマネジメントにおいて、地域と企業はどのような関係を築いていけるのでしょうか。

人口減少と都市間競争の激化

2050年の人口増減状況

日本の人口は2008年をピークに減少に転じました。2014年7月に国土交通省が公表した「国土のグランドデザイン2050」では、2050年には国土の6割以上の地域で人口が半分になり、うち3分の1は無居住地となると予想されています[図1]。

これまで、高齢化が進み地域コミュニティが維持できない地域を「限界集落」と呼んできましたが、昨年はさらに「消滅可能性都市」という用語まで登場しました。子どもを産む女性人口が減少し、全国の896の自治体が消滅する可能性があるというものです。都心部の豊島区でさえ消滅する可能性があるというのは衝撃です。

今後、国内の地域はコンパクトシティ化が進み、衰退する地域と人々が集まる地域に分かれると予想されます。これまで都市間競争とはグローバル化する世界の中で、東京などの大都市のプレゼンスをいかに高めるかという議論で使われてきましたが、今後は、国内の地域で生き残りをかけた競争が激化してくることは明らかです。競争時代の地域づくりとして人を惹きつけるためには、どのような活動を行っていけばよいのでしょうか。また、その時企業はどのようなことができるのでしょうか。

地域を育てる

地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・企業・事業主・地権者等による主体的な取り組みをエリアマネジメントといいます。これまで行政が主体となって行ってきたまちづくりを、一定のエリア内の住民、企業、利用者、開発事業者、自治会、商店会などが一体的主体となって、お互いに関わり合いながらまちをつくり、運営していくものです[図2]。

まちのマネジメント組織

東京・丸の内仲通りの街頭 単なる事務所街から週末も賑わう複合的なまちに変容した大丸有エリア。ビルオーナー、行政、入居企業、オフィスワーカー等が一体となってまちを育てている。仲通りは、道路という枠組みを超えた交流空間として維持・活用されている。

大手町・丸の内・有楽町エリア(大丸有エリア)、六本木ヒルズやミッドタウンなどの六本木エリアのほか、秋葉原、汐留、大崎、大阪北、福岡天神など大都市の業務商業エリアを中心に、その地域の魅力を高める活動としてエリアマネジメントが実践されています[図3]。また、住宅地でもその環境を維持・保全、コミュニティを形成するための取り組みとして行われています。

具体的な取り組みとしては、道路や歩道など公共施設のグレードアップを含めた街並み景観の形成や保全、イベントの実施や広報などの地域プロモーション活動、地域美化活動や防犯活動、広場や集会所などの運営管理といったものが挙げられます。エリアマネジメントの活動内容や組織形態は、地域の持つ資源や課題、目指すべき将来像によって様々です。エリアマネジメントの要素として[図4]のように大別することができます。

このような地域を育てる取り組みを個人に身近な主体が行うことで、地域の一員としての愛着や誇り、満足度が高まり、地域活力の回復・増進、ひいては資産価値の維持・増大が図られ、地域ブランド・人を惹きつける地域が形成されていきます。その地域での生活への憧れや、生活自体が観光目的地となるのも成果の1つです。

さらに、地域課題の解決策として、道路や公園、駅前広場など行政により管理されてきた公共施設をオープンカフェなどとして開放したり、敷地単位の駐車場附置義務制度を地域全体のルールをつくることで緩和するなど、現行の法制度を緩和していくことも可能となります。

エリアマネジメントは、地域間競争を見据えた魅力づくりのほか、環境や安全・安心への関与、公共施設の管理やまちづくりを行う行政の財政・人的負担の軽減、まちが集合マンションなどにより機能更新する中で、古くから伝統を守ってきた住民がマイノリティとなることによって生じる新旧住民問題の解決策としても期待されます。

エリアマネジメントの課題

一方、エリアマネジメントを実行するためには、人的、資金的な問題や成果の遅効性、地域の合意形成など、様々な課題もあります。

1. 資金問題
活動に伴う人件費やプロモーション費用をどのように捻出するかが課題です。地域自体を媒体とした広告料や公共施設の清掃・管理委託料などにより一部賄うことが可能ですが、現在のエリアマネジメントの多くは、大規模開発に伴う開発業者によるプロモーション活動費や行政支援などを受けており、資金面で自立した組織にはなり得ていません。

2.合意形成の問題
多くの関係者が関わり合うため、合意形成に時間がかかります。既存組織間の活動の競合や将来像に対する合意形成などを調整するコーディネートが重要となります。

3. 遅効性と活動の評価
エリアマネジメントの取り組みは、まちを創り運営することで、人を惹きつける地域を形成することですが、活動は長期にわたり、その成果も客観的な指標として明示しづらいものです。

4.担い手の問題
エリアマネジメントは、地域を1つの会社と見立て、将来像を描き、戦略を持って経営することが必要です。そのような経営者的思想でまちに関与できる優秀な人材を、資金のない中で確保しなければなりません。

地域になくてはならない企業に

これまでのエリアマネジメントは、不動産デベロッパーがその保有する不動産(=地域)の価値向上を目的として主導してきました。しかしながら地域の魅力の原点は、そこで生活する人、活動する企業のそのものです。今後は、地域で事業展開する企業がエリアマネジメントに関わり、活動の担い手となっていくことが重要です。エリアマネジメントへの参画により、企業ブランド、認知度の向上、所有不動産価値の向上、並びにCRE戦略上の選択肢の増加をもたらすだけでなく、企業が地域になくてはならない存在となることで、新たな建設事業の際に円滑な推進を図ることができます。エリアマネジメントを通して、企業が地域に寄与するとともに、地域が企業を支えるような良好な関係が生み出されます。

地域のために企業ができることは、CSRの一環として慈善活動的な地域貢献を果たすだけではありません。社会的な課題解決と企業としての利潤を追求するCSV(CreatingShared Value:共通価値の創造)という考え方があります。社会的課題の解決を事業化するという発想です。新しいまちづくりの担い手として、自らの業態に合わせた方法で地域に寄与することはできないでしょうか。地域の一員として地域と繋がり、地域を育てるというマネジメントの視点が、自身の事業収益基盤を強化するだけでなく、新しい市場にも繋がっています。