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エネルギー・環境・BCP変革 エネルギー・環境・BCP変革

建築が人々の活動にどのような付加価値を生み出していけるか。


東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)や電力不足に起因する省エネ(節電)の推進が注目されています。特に、人々が日々活動の“ 場”とする建築におけるBCP 強化・省エネ推進への取り組みが多くの企業の課題となり、試行錯誤が繰り返されている現状の中で、今後どのような潮流が生まれていくのでしょうか。
建築は人々が活動する為のハードの一つであり、前章でも価値観の変化について述べましたが、人の価値観の変化に応じて求められる建築も変化します。逆に、建築が人々の価値観を変える可能性も秘めていると考えます。例えば、建築と同じように、人の活動をサポートするツールの一部であった携帯電話が、今やスマートフォンに代表されるように、パソコン・テレビ・カメラ・本などの機能も融合した多機能デバイスとなり、人々の活動時間の大部分を独占し、高付加価値の象徴のようになっていることも一つの好例ではないでしょうか。建築にも今まで以上の付加価値を提供出来るように、追求する視点が必要であると考えます。

東日本大震災では、地震だけでなく津波・原子力発電所事故が重なる複合災害により、ライフラインの途絶、交通インフラの利用不能、サプライチェーンの寸断が発生(図-1:東日本大震災で重要な業務が停止した理由 参照)し、特に企業不動産の防災対策の重要性が再認識されました。

図-1 東日本大震災で重要な業務が停止した理由/【出典】 内閣府:「企業の事業継続の取り組みに関する実態調査 概要」

また、建物構造体には大きな被害はありませんでしたが、外壁パネルの落下、天井・照明器具の脱落、ガラスの破損やスプリンクラーの損壊といった非構造部材の被害が発生し、死傷者も出ました。埋立地など軟弱地盤の地域で敷地や道路の液状化が発生し、立地や地盤に係るリスクも注目されています。また、日本の原発政策が振り出しに戻り、日本のエネルギー政策の方向性は、一向に定まる気配はありませんが、その中でもスマートシティ/コンパクトシティ、再生可能エネルギーの推進、電力システム改革といった大きなキーワードは、明確になりつつあります。

整理すると、これからの潮流は、「新たに認識されたリスクに伴う防災対策の変革」「エネルギーシステムの変革」に対して、特にビジネスの世界では、企業が保有する不動産(オフィス、工場、研究所、商業施設、宿泊施設、流通施設など)における対応策を検討し、行動に移していく戦略が求められます。また、変わりゆく防災対策・エネルギーシステムの中で、“守るべきモノは何か”、“変えるべきモノは何か” を明確にした上で、建築に必要とされる性能とは何か、建築が人々の活動にどのような付加価値を生み出していけるかを考える必要があるのではないでしょうか。

新たに認識されたリスクに伴う防災対策の変革の中で、建築側(ハード側)の対応策としては、より防災力の高い(耐震性能が高い・インフラバックアップの充実など)建物に「移転」or「建替え」or「改修」する事が考えられます。従来は、防災性能向上は、移転・建替えの主な理由になりませんでしたが、例えば、オフィスの賃貸借の理由としては、(図-2:賃貸借予定の理由)に示すように、「耐震性能の優れたビル」や「防災体制やバックアップの優れたビル」に移りたいとの回答が大幅に増加しており、また、より地盤が強固な立地に移転する事例も出ています。このような、市場のニーズの変化の中で、建築には、耐震性能の向上やインフラバックアップの充実は、当たり前の事として求められています。更に一歩踏み込んだ価値の提供を目指し、テナント用電源を100%設け、震災時には、電源が不足する電力会社に電力を供給し、ブランド価値を高めた企業も出てきています。

エネルギーシステムの変革。方向性が迷走する中で、さまざまな議論・提案が出ていますが、資源を持たない国、日本では、「最低限の化石資源で、エネルギーを効率よく生み出し、使う」という共通の価値観は、今までも、これからも変わらないのではないでしょうか。

日本の建築も、この共通の価値観のもと、省エネ技術を磨いてきました。ただ、それらは個々の要素技術毎に特化しており、今後は、建物レベル・街レベルで統合制御されるスマートシティ化が進んでいくでしょう。東京都では、2020年東京オリンピックに向けて「国立競技場改築や防災機能向上など、現在進行している大規模な都市整備が完成する2020年こそが、オリンピック・パラリンピック招致の最大のチャンスであり、この機会を活かしたい」とのコンセプトに基づき、オリンピック招致実現に向けて、スマートシティ/コンパクトシティの整備に向けて動き始めています。

スマートシティに求められる機能とは何か。図-3:スマートシティのフレームワークで整理しました。また、具体的な取り組みとしては、経済産業省が進める4つの実証事業が代表的ですが、これらの実証事業の内、どの機能が重要視されているかを分析する為に、3箇所以上で実施されている機能に注目すると(図-3の色付きの機能)、ICT 技術を活用した、エネルギーの見える化、HEMS、太陽光発電制御、EV 関連制御や、再生可能エネルギーの導入などが見受けられます。東日本大震災以降は、山下PMC の中でも、業務用ビルのデマンドレスポンスの導入やBEMS 導入の検討依頼が増えています。まずは、コスト負担の軽い事業から実施し、蓄電池の導入などコスト負担の重いものは、今後の検討といった流れではないでしょうか。また、更に付加価値の高い建築を目指し、普段の省エネを推進する事で、非常時のバックアップ電源をより長期間使えるなど、BCP と省エネを融合する視点も重要だと感じています。

図-3 スマートシティのフレームワーク/【出典】佐々木経世:「世界で勝つ!ビジネス戦略力。スマートシティで復活する日本企業」を基に山下ピー・エム・コンサルタンツにて作成

以上、東日本大震災以降の「変革」の中で、今までとこれからの動向を見てきましたが、前述したように、具体的な戦略を考える前提として、自分たちにとって、“守るべきモノ”は何か、“変えるべきモノ” は何か、を突き詰めて考え、対策を実行していく必要があると思います。“守るべきモノ”と“ 変えるべきモノ” を間違えてしまうと、その後の戦略をいくら積上げても、いずれ瓦解していきます。皆さんの“ 守るべきモノ”、“ 変えるべきモノ” は何でしょうか。