週刊 施設参謀 週刊 施設参謀

経営課題を解決するファシリティ・
CRE戦略マガジン

変わり始めた価値観とシステム 変わり始めた価値観とシステム

◎『本当の意味での自立と連帯』、そして『共創』

本号では、『After 3. 11』の特集として、先ずは変わり始めたシステムや戦略についての話を展開 していきたいと考えています。

本題にいきなり話を進める前に、ちょっと復習をしてみます。前号では、今後の事業戦略がどのような方向へ向かうかという問いに対して答えている『事業戦略3. 0(著HR インスティチュート)』という著作から、『自らが主体的に働きかけ、変化を作り出すことでの新しい価値を創出する=変化創造』、さらに提供する価値は従来の見える価値から『見えない価値』へ変化する、事業戦略はこれら2つを踏まえたものに変化していくとし、これらを事業として体現するために、何より社会変化や市場の変化を踏まえ提供する価値をどのように変えていくかという『事業価値の転換』が極めて重要なこととされています。また、そのためにはビジネスモデルの変換と、マネジメントシステムの転換が合わせて必要とされています。

『価値』・・・?前号に限らず日常生活の中でも『価値』や『価値観』という言葉を耳にする機会は多 く、すごく親しみのある言葉に思えますが、改めて考えてみるとものすごく難しい言葉です。我々は、今や成功・成長への切符のようなアメリカ的な経営手法や、倣うべきモデルに加え、東日本大震災以前は絶対的なものとして考える必要さえなかったものが『3.11』であっさりと崩れ落ちる現象を目の当たりにして、いよいよ絶対的な価値観も失いました。そして、企業も個人も不確実な未来の成功に向けて自分で考え、行動することを余儀なくされています。もはや『見えない価値』どころか『見失った価値』です。

ところで、『After 3. 11』後に、その価値観がどのように変化したかを示す、興味深いアンケート調査があります(図-1)。



このアンケートは2006年から偶数年で実施され、震災後の2011年に臨時で実施されたものですが、このアンケート結果を調査主体は『7つのFindings』としてまとめています。私はここから『本当の意味での自立と連帯』、そして『共創』に想いが到ります。つまり、絶対的な価値観とそこに依拠していた自分自身に対する自信も大きく揺らぎ、自分だけ良ければというような自己中心的な考えが弱められている。その結果として、自ら考え、行動し、その結果を受け入れる『自立』。そして、自立すれば当然の帰結として他者との相対的な関係を考える。そこで、新たな社会とのかかわりの中から、『新しい連帯』が生み出され、企業においてはオープンなプラットフォームで他者と協業し顧客ですら気付かない新たな価値・真の価値を創出する『共創』という流れが本格化すると考えたわけです。私は、ここに今後の事業の大きな潮流・チャンスがあると考えます。

話はやや変わりますが、山下PMC が実践するコンサルタント業務は、通常一般のコンサルタントと異なり、常に実物としての不動産や建物を扱い、多くのプロジェクトでは建物に帰結します。その中で、お客さまから頂く高い評価は、実は技術的な課題を解消することで得ているという実感は少ない。もっと人と人のつながり、どれだけ表出されていないニーズ、多様なお客様の目指すべきゴール、価値観を共有し、そのために必要なプラットフォームともいうべき建物の具現化に貢献するか、これら必要条件と十分条件を共に充足することでようやく得られるものという感覚を持っています。この点において、冒頭の事業戦略3.0のいう『見えない価値』との共通点が見出せ、また常にクライアントとの協業の中でクライアントと価値観を共有し、クライアントが価値を提供するユーザーの見えない価値の顕在化『共創』にチャレンジしているものと考えています。

エネルギーと公共工事の発注システム

『After3.11』で絶対的に考えざるを得ない最も重要なことの1つは、エネルギー問題に他なりません。この問題は日本の将来を大きく変えてしまうほど、とてつもなく難しく大きな問題で、思いつきで答えられるようなものではなく、柄にもなく哲学的な考えに助けを求めざるを得ません。参考になると思われる言説を紹介します。環境倫理学者のK・S シュレーダー=フレチェットが1979年の論文の中で、化石燃料を題材にした文章、『将来の人々の権利の為に、現在生きている人々の権利、なかでも(電気料金が上がることで経済的に生活が苦しい)貧困層の権利が減少することは公正なのか?』という問いかけです。これは、ジョン・ロールズの『正義論』その貯蓄原理の中でいう、『まだ見ぬ、遠い未来の、あらゆる見知らぬ世代のために』、つまり世代間の正義についての問いかけを論拠としています。エネルギー・環境などに関わる事柄は、このような倫理的、哲学的な『価値観』を踏まえて考えるべき、極めて難しい課題と思われます。

もう一つ、日本の建築、特に発注に関わるシステムの中では、公共のシステムを考えることから逃れられません。日本の『予定価格』と、これを下回る『最低価格』を応札した会社が受注するという、税金を効果的に生かし社会資産を形成していくというシステム。これには当然設計者や施工会社各社の持つ優れた技術は反映されません。そして、その応用形として技術や経験を価格とともに評価する総合評価というシステムに変化し、Before3.11迄は見事に時代の変化に適合してきたといえます。ところが、東日本大震災、その復興という膨大な業務量の前では、そのシステムも機能不全を起こさざるを得ません。そこで新たなシステムとしてCM の活用が本格化の兆しを見せています。このことは、明治時代から連綿と続くシステムが不連続に変化したという点で、非常にイノベーティブな出来事と考えられます。リーダーシップ論の名著『EQ』でいう、システム変更の成否のカギとなる価値観は既に大きく変化しました。システムを転換する土壌は整っているわけです。

本号では、これら2つ、既存の価値観では回答できない大きな課題、エネルギーと公共工事の発注システムについて、山下PMC の取り組みと事業の潮流を紹介いたします。