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2020年、日本の宝の山はココにある | 藤村龍至氏、田中元子氏、川原秀仁座談会 2020年、日本の宝の山はココにある | 藤村龍至氏、田中元子氏、川原秀仁座談会 2020年、日本の宝の山はココにある | 藤村龍至氏、田中元子氏、川原秀仁座談会

アベノミクスによる日本経済回復の兆しがささやかれる一方、これまでどの国も体験したことのない少子・高齢化社会へ世界の先陣を切って突入した日本において、これからの私たちは、何を見据えていくことが求められるのか。今、改めて「日本の魅力」に向き合うことから、世界の中の日本、日本の中の東京、そして地方都市を見つめ、ひもといていく。その先にここからの日本が成し得る、「ポジティブな縮小」と「新しい成長」の形を模索したい。

座談会収録前のアイスブレイクとしてサプライズで行われたのが「けんちく体操」。「けんちく体操」とは建物の形を身体で真似ることを通して、改めて建築を観察し、学ぶというもので、田中氏らは全国、世界へとワークショップの輪を広げている。さて、今回4人が「けんちく体操」として創り上げたのは……そう、まさに日本の魅力のひとつである東京駅丸の内駅舎(竣工:1919 年/設計:辰野金吾)でした!戦災でドームの屋根が焼失し、3 階建てから2階建てに復興されたのが1945 年。それから65 年の月日が経ち、2010 年に元の姿に復元されました。2020 年東京オリンピック時には、これまで体験したことのないくらいの多くの人々が、世界中からここを訪れることでしょう。

藤村 龍至ふじむら りゅうじ1976年生まれ。建築家、ソーシャル・アーキテクト。東洋大学専任講師。住宅や集合住宅、教育施設の設計と共に、公共政策や国土計画の構想に精力的に取り組む気鋭の建築家。大規模な国土開発の歴史を批判的に捉えながら、JRの区分けに基づく経済圏やインフラ輸出を提案し、注目を集める。さらに東京郊外を舞台に、老朽化した公共施設の再編成に行政や住民とともに取り組み、ソーシャルデザインに役立てるプロジェクトを推進している。共著に『現在知vol.1郊外その危機と再生』(2013/NHKブックス)などがある。

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田中 元子たなか もとこ1975年生まれ。ライター・クリエイティブファシリテーター。1999年、青山アパートの再生プロジェクト『DO+ project』を設立。ロンドン生活を経て、帰国後の2004年に大西正紀と共にクリエイティブユニット“mosaki”を設立。建築を中心とした各種プロジェクトの企画・制作を行う。2010年よりチーム「けんちく体操」のメンバーに加わり、ワークショップを全国、世界へと展開。2014年日本建築学会教育賞(教育貢献)受賞。主な連載に『妻・娘から見た建築家の実験住宅』(2009-2011/ミセス・文化出版局)ほか。

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川原 秀仁かわはら ひでひと1960年生まれ。山下ピー・エム・コンサルタンツ代表取締役社長。1983年日本大学理工学部建築学科卒業。農用地開発/整備公団、農水省、JICA等を経て、山下設計に入社。1999年に山下ピー・エム・コンサルタンツに転籍。山下PMCの創業メンバーとして参画し、国内CM技術の礎を築く。メガプロジェクトを中心に代表的CM/PM案件に従事し、近年では建物の事業継続と資産保持の観点から顧客企業の経営戦略をサポートする事業創造部門の立上げを行う。CCMJ、認定FMr、一級建築士。主な受賞に2012年国際CMコンクール準グランプリ(武田薬品工業湘南研究所プロジェクト)ほか。

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川原今回のテーマは「日本の魅力」、そしてそれを「伝える」ことだということで、まず私から口火を切らせて頂きます。

私個人の考えになりますが、世界から見ても日本は魅力たっぷりの国です。一流の製造業があり、一流のコンテンツ産業があり、その一方で環境問題対策でも群を抜いている。現政権が掲げる政策「国土強靭化」でも、世界トップクラスです。単に強い建物、都市を作るというだけではなく、災害が起きたとしてもものすごいスピードで回復してしまう。

健康・長寿の分野も一流です。日本はこの分野では世界のトップランナーですよ。日本は少子・高齢化時代を迎えつつあるのですが、短期成長を果たした国はどこでも同じ運命にあって、その中で日本は一番最初に少子・高齢化時代を迎えるわけです。世界でもいち早くノウハウを蓄積できる「課題先進国」とも言えます。

いま日本では社会問題についてネガティブな声も多いのだけれども、オプティミカル(楽観主義的)に見ていくと、この国は宝の山だなと、改めて思うんです。これらをいかに融合・統合させられるか、一大内需を興して、さらには世界へ外販できるかが問われている。

「2020年」を見据え、社会・経済も変化

川原特に2020年の東京五輪開催を境にして、開催までの約6年間と、開催後で、2つのステージが生まれると見ています。

いま、五輪開催にあたってのインフラ整備に始まって、スポーツ施設、競技場もどんどん作っていかなければいけないという状況があります。それは一つの産業として大事なんだけれども、その前に、そこに向けての日本のあり方をもっと魅力的にしよう、整備しようというマインドもある。そこから新たな社会・経済のあり方が生まれてくるように感じるんです。

私はオリンピックより、パラリンピックが同時にやってくることに注目したい。日本の都市において、健常者にもハンディキャッパーにも平等に使いやすい、ユニバーサルデザインをいかに根付かせるか。健康・長寿国家、高品質国家として世界を生き抜くため、日本をどんなふうに向けていくかが問われています。オリンピック・パラリンピック施設は、それを具現化したものとして生まれていくべきだと思うんです。

増える訪日外国客、米仏並みの水準も

藤村2020年が転機になるというのは本当にそうだと思います。日本の魅力を海外に売り込むということでいえば、例えばインバウンド方向としては、観光産業ですね。観光目的の訪日外国客が2013年に1000万人を超えたのですけれども、フランスと比較すると、フランスは8000万人を超えているんですね。

川原8300万人ですよ。

藤村それを考えると日本はまだまだ発展途上で、開拓の余地があると思うんです。

内需に関して言えば、インフラの再編成ということがこれから必要になってくることですので、それに向けてどういう準備をしていくのか。それが本格的に始まるのが2020年以降じゃないかと私は言っているんですけれども。

川原インバウンド、つまり訪日外国客数について、日本政府は2020年目標を2000万人、2030年目標を3000万人としています。ところが先ほどの話しの通り、フランスにはすでに8300万人来ているわけです。ちなみにアメリカへは6500万人。それと比べると、目標が遠慮し過ぎですよ。2020年目標を5000万人と、目標を今より2.5倍くらい上げてしまっていいんじゃないかと私は思ってるんです。

田中日本の魅力は、外国の一部の方には感じてもらえる状況になっていると思います。しかし、フランスやアメリカに比べると、出来上がったイメージがまだ少ないと思うんですね。京都、ニンジャ、ゲイシャ、富士山みたいなところから、その先は急に「オタク」に飛んで行く。極端なんですね。その中間にある、日本独特の町並みですとか、自然の豊かさですとか様々な表情については、一部を除くと共通言語のように語られていないのが現状ではないかと。 そういうところを押し出せる素材って、実はたくさんあるんじゃないかな、と個人的には感じますね。

ドイツのバウハウス大学に招待されまして、「けんちく体操」のワークショップをやったことがあります。ほとんどがドイツ人の参加者だったのですが、その中にスウェーデンの方が混じっていて、自分の国に持って帰ってやりたいということで、スウェーデンでやってくれたりもしました。ドイツの方もスウェーデンの方も、地元の建物に対してはすごく詳しいんです。彼らが彼らの地元の建物を「けんちく体操」で表現すると、「ここはこうなってる」「中はこんな感じ」と、すごく積極的に、大人たちが建物を慈しむように「けんちく体操」のポーズを考えてくれるんですね。ここでは、外国に発信する、海外の方に自分たちの魅力を感じ取ってもらう際には、まず自分たちが自分たちの国の魅力をよくわかっているということが大事だということを痛感しました。

そう考えると、例えば、日本の建物についても、日本人もよく知らないということが多いのが現状です。だからまずは日本人自らが改めて日本の魅力に気づき、再発見するということも大事なんだなと思っています。