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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

BIMのとてつもなく巨大な可能性

建BIMのとてつもなく巨大な可能性 代表取締役社長 社長執行役員 川原 秀仁

 BIM(Building Information Modeling)が、国内の建設産業に急速に浸透し始めている。この1年で加速度が増した感がある。ちょうどバブル以降にCADが普及していった状況と酷似している。あるいはEメールの普及の仕方もそうだった。だからそれほど時間を要さずに、ほとんどの建設プロジェクトでBIMを用いる時代が訪れることだろう。しかし、そのインパクトはCADなどの比ではない、とてつもなく巨大な可能性を秘めている。

 現在、BIMはビジュアライジング(3次元可視化)・各種解析シミュレーション・工種間干渉チェックの大きく3つの要素で多大な効果を発揮している。計画の段階で多角的な方面から仮想現実を体験できるので、発注者(事業者)が建築の専門的な難しい課題に直面し決断を迫られる際に、その決断を促しやすく、さらに迅速化することに大いに役立っている。

 とはいっても、現在のこの状況のままで、発注者が自らお金を出してでも欲しいアイテムになっているかと言われれば、残念ながらそこまでには達していない。発注者からしてみれば、建物を新築する時だけ一時的に必要な専門ツールに過ぎないからである。建物の引渡しを受けて発注者が実際に建物を運営する段階になって、建物の運営(≒Property)管理と資産(=Asset)管理に向けて有効に活用できるようなものでなければ、発注者は触手を伸ばさないのである。BIMそのものが、資産形式の基となり、薄価と連動する。そして、会計制度と税制度に対応できる機能を保有し、事業運営そのものと直結すべきなのである。すなわち、CRE(企業不動産)戦略やPRE(公的不動産)戦略をそのまま体現できるツールとなる必要がある。それには資産形式の単位となる工事費内訳書の細目と、ひとかたまりの単体として変換されオブジェクト化された3Dユニットが相対連動して、中央監視システムや財務管理システムとも呼応することにより、簡単に操作できるようにならなければならない。あわせて施設運営管理者が容易に扱う事ができるか、あるいはBIM更新の継続サポート体制が安価にできることも必需となる。

 ここまで行くには、道のりはとても長いように感じられるかもしれない。事実、公共機関のBIM採用もまだまだ足踏み状態にある。しかしながら、便利で合理的な世界へと進化していくのが世の常というものである。ひょんなことがきっかけになって、事態は劇的に促進されることになる。たとえば、IFRS(国際会計基準)におけるコンポーネント・アカウンティングの考え方が何らかの形で適用されることになった場合は、すぐにその必要性が論じられるようになっていくに違いない。

 建築の業界内でこれらの開発が勢いよく進まないのは、建築技術だけではない経営・財務・法務・不動産などの他の深い専門技術が縦横無尽に絡みあうために、全体としてこの統合技術を構築していく主体者が不在であるためでもある。この分野をカバーする学問も確立されていないし、大学に講座があるわけでもにない。ましてや、各業界間の用語や費目の統一が図られているわけでもない。それでも今、とても必要とされている技術なのである。

 だから、近い将来に誰かが必ず創り出すはずである。そのキャスティングボートを握って、ぜひ建築業界からの技術と制度構築によって実現させたいものだ。その先には途方もない可能性が拡がり、BIMクラウドと表現してもいいような、ICT(情報通信技術)が向おうとしているのと同様の世界が生まれるかもしれないのである。

本記事は、日刊建設工業新聞 2013年9月4日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。