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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

建築でも「やっぱり日本製!」という日を夢みて

建築でも「やっぱり日本製!」という日を夢みて 代表取締役社長 社長執行役員 川原 秀仁

 今回は建設産業のことについて言及してみたい。日本の建築・建設の品質は世界に冠たるものであるとよく言われる。確かにその通りである。日本国内の完成レベルで語るなら、建設産業は突出した国際競争力を有している。本当に比類なきものがある。

 それではその本質はどこにあるのだろうか。それは、著名な建築家や設計事務所、優秀なゼネコンやサブコンだけに存するものではない。それは、彼らをはじめ下請け業者や専門工事業者・メーカー、あるいはそこで黙々と真面目に働く市井の職人や作業員の人たちまでを含む、巨大なピラミッド・ストラクチャーにあり、国内の建設産業全体で構築しているシステムにある。

 そして、それは完成した「モノ」ばかりに関心がいきがちであるが、着目すべきは「人々の資質」の方である。長い歴史や文化によって養われ、人々の中に遺伝子として組み込まれた繊細で豊かな仕事力こそ、世界に類を見ない能力であり、これが秀逸な完成品質を創りあげているのである。私はその中に大きく二つの特徴があるとみている。

 一つ目は、技術者から技能者(職人)・作業員にいたるまでの建設産業に携わる全者の中に品質向上意識と顧客への責任感が宿っているということである。二つ目は、いったん約束してしまえば会社間を越えてでも一致団結して解決に向かおうとするチームワーク力が発揮されることである。この二つの資質の共存は、世界のどこにも存在しない(あるいは存在しにくい)日本ならではのものと明言できる。この事実は、グローバル社会が到来したおかげで鮮明になったことでもある。

 それでは、この完成品質をそっくりそのまま海外に輸出することができないものだろうか? これがなかなか一筋縄ではいかない。前述のように巨大なピラミッドの重いシステムの上に成り立ったものだからである。それに世界各国に横たわる規制や煩わしい法務の問題、商習慣の問題(特に中東などにみられる留保金支払い拒否の問題)などの障壁も大きく影響してくる。あまりうまくいっていない話は山ほど聞こえてくる。

 それでも自動車に代表される工業製品は、いち早く世界進出を成し遂げ、世界的評価を確立している。工業製品が反復可能な一品種大量生産であるのに対し、建築は手間のかかる一品単位の注文生産なので、生産プロセスの違いから世界への外販が難しいともよく言われる。しかし、自動車産業も最初は建設産業と同じように、広大な裾野産業が下支えするピラミッド・ストラクチャーの重層構造を国内だけで保有する状況から、現在のようにまで変遷していったのである。時間はかかるかもしれないが、必要なことは、MC(マネジメント・コントラクト)方式のようなやり方で、技術ノウハウや教育訓練システムをプログラムにして、これを各階層の"人財"と一体にして販路を拡げていくことだと思われる。

 私自身は、この特技を応用して、建設の部分だけではなく、もっとバリューチェーンの川上から川下に至るまで(事業創造・企画から運営まで)拡げられないかと望んでいるし、拡げられるとも確信している。コンソーシアムで臨んだり、特化した用途の建築物から始めるのでもよいではないか。

 建築においても、一級の完成品質と運営品質が欲しいんだったら「やっぱり日本製!」、という日が来ることを夢見て、建設産業全体でチャレンジしていきたいものである。

本記事は、日刊建設工業新聞 2013年7月29日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。
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