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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

得意と不得意の融合で新機軸を

特異と不得意の融合で新機軸を 代表取締役社長 社長執行役員 川原 秀仁

日本の強みとは一体どんなものがあるだろうか? 少し深堀りしてみると、ちょっと乱暴な括りになるかもしれないが、大きく三つの要素にまとめられるのではないだろうか。

一つ目は「日本の魅力発揮」であり、前回も述べたように"高品質技術"によって生み出される商品・サービスを筆頭に、高い民度を有する社会と人材、それにおもてなしの心、最近特に注目されるようになった食・観光・景観、クールジャパンに代表されるようなコンテンツ・ファッション・デザイン・メディア芸術・ICTに及ぶソフトパワー、などが挙げられる。インターネットが世界的に普及したことと、メディアでの登場回数が増えたことで、この認知度も広く世界の隅々にまで行き渡るようになってきた。

二つ目は「健康長寿」であり、日本は男女とも平均寿命が世界最高水準に達し、世界最速で少子高齢化が進行しているが、同時に医療・介護関連の技術や社会システムの整備、インフラの充実も進んでいる。国民からみれば、保険制度や年金の問題で不安な面ばかりが先に立つものの、高度医療のみならず浸透が著しい地域医療、医療技術・医薬品・医療機器の革新、関連する介護・健康サービス関連産業など、多様なサービスを国民が選択し健康長寿を享受できる基盤の整備が進行中であり、これも世界随一のスピードである。

三つ目は「環境・低炭素・BCP」であり、これも日本が長い年月をかけて得意技に仕立て上げてきた要素である。地球環境や資源エネルギーの制約を突破するのに必要な省エネ・3R・水処理・環境整備・低炭素化などの技術力は、世界に誇るべき地位を占めている。

また東日本大震災を境に、BCPの概念も急速な広まりと発展をみせ、世界の範となる様相を呈している。加えて最近では、"レジリエント(強くしなやか)な国土造り"ということで、"災害が発生しても被害を最小限にくい止め、実害があった部分も素早く元どおりに回復させるような総力"もまた、日本が世界に誇るべき強みとして注目され始めている。

ただ、これらの要素が、それぞれ個別に発展しただけでは大きなイノベーションには繋がらない気がしている。やはり、これらいくつかの要素が複合的に絡み合い統合化していくことで、新たな創造的事業が多様な形で展開されていくようでなければならない。

一方で日本(特に技術分野で活躍している人たち)には、弱みというか、苦手な分野も厳然と存在していることも忘れてはならない。それは、「財務・会計的概念」である。事業や企業は、その経営・運営状況を見極める指標である損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)の二つの財務諸表によって優劣を左右される。

これはもちろん世界共通である。日本がIFRS(国際会計基準)を導入するかどうかは別にしても、経営指標の世界同一基準化は年々進んでいる。これを工学的視点で捉え戦略立てて考えていく方法論は、日本からはなかなか生まれない。以前、投資ファンド等の強欲な面ばかりに目が向いて、とかく敬遠気味になっていたが、健全なやり方を行うのであれば、それは必要不可欠な手法なのである。どんなに得意な分野の統合化が出来たところで、この財務・会計というフィルターを素通りするわけにはいかない。

今後日本は、得意な三つの要素と不得意な財務・会計要素が上手に融合しあうことで構築される新基軸が、発展的先進国を維持していくカギになるのではないかと思われる。現代社会は、ボーダレス(境界なき競争)社会であり、ダイバーシティ(多様性)社会である。その中で誰が次代を担うのか? それはこの辺りの話の中に隠されているような気がしてならない。

本記事は、日刊建設工業新聞 2013年5月9日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。
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