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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

「ものづくり」から「営みづくり」へ進化

「ものづくり」から「営みづくり」へ進化

 現在、建設業界は忙しい話題で包まれている。アベノミクスによる積極的財政支出と大胆な金融政策、併せて東京オリンピック招致とこれらに付随して影響される潜在的経済効果が功を奏していることは誰もが感じているところである。世界的異変や天変地異でも起こらない限り、おそらく2020年いっぱいまではある程度見通しの良い状況が継続することだろう。

 それでもこれは6年と少しの間だけの話である。何も策を講じずにただ時勢に委ねているだけでは、再び以前の状況に戻ってしまうか、それ以下になるといっても過言ではない。せっかく訪れたこの猶予期間を有効に活用したいものである。

 そのためには、まず内外の社会や経済の現況を深く理解する必要がある。これまで日本は、資源を輸入して手を加えた製品を輸出する加工貿易立国としての分かりやすい経済モデルが永く続いてきた。だからいまだにそのイメージが強く残っているが、現在の日本は全く違う実像の国である。貿易依存度・輸出依存度とも世界最低の部類に属する、内需で成り立っている国にずいぶん前から変貌を遂げている。円安に振れても貿易収支があまり好転しないのもそのためである。

 これに換わり堅調なのは所得収支である。たとえば、海外での生産販売の利益が、海外子会社からの配当や技術提供に伴う対価という形で、日本の本社に回ってくる。日本の本社が出す配当は個人を含む投資家にも分配される。その配当が国内のさまざまな事業を動かす元手となっている。私たちを豊かにしてくれる経路がとてもややこしくなっているが、この「しくみ」を知らなければ未来への間口は狭まってしまう。

 近年さかんにいわれるグローバリゼーションという概念! 今や4Cと称される情報・資本・企業・消費者は、自由に国境を往来し簡単に富が移動する世の中になってしまった。そこで翻弄(ほんろう)されるのは国民国家の側である。本来国内に落ちるべき富が、いともあっさりと海外に流出してしまうからだ。ということは、いずれグローバル経済側に立つのか、国民国家の側に立つのか、選択を迫られることになる。これは世界中の国家に突き付けられた難題でもある。

 どちらを選ぶか? 私なら、まずは国民国家の側である。自らが母体とする国の社会や経済基盤が危うくなっては、私たち国民が世界へ羽ばたこうにもそれが根底から覆ってしまう。国民国家としての日本の立ち位置をしっかり見定めた上で、成熟した先進国としての魅力と本質を堅持して、グローバル立国を目指していく姿勢が重要ではないかと、私は確信する。

 そのために活用しなければならないのが、これまで何度も力説してきた日本の特技である「日本の魅力発揮」「健康長寿」「環境・低炭素・強靱(きょうじん)化」の3要素である。3要素を統合的に組み合わせ、これに「財務・会計的概念」を加えることでグローバル経済にも通用する社会・経済モデルを創出していけばよい。建設業界はこれを施設建築とその運営にまで落とし込んでいかなければならない。それが可能なら「技術で勝ってビジネスで負ける」と久しく言われ続けてきた悪循環から脱却できる。

 日本と日本人の関わりだけで形づくられてきたメード・イン・ジャパンから、日本発によって考案された「しくみ」によって、世界中の資本や人々が日本とともに価値を創造し富を産み出していくようなメード・ウィズ・ジャパンに軸足を変容させていかなければならない。それが「ものづくり」から「営みづくり」への進化そのものである。これを突破できれば、私たちは自信を持って2020年以降を迎えられるのではないだろうか。

本記事は、日刊建設工業新聞 2014年6月5日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。