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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

自信持ちジャパニーズ・クール探求し発展

自信持ちジャパニーズ・クール探求し発展

 デザイン! 単純に日本国内で「意匠」という意味に使う、デザイン。成熟先進国家にとって必需のアイテムであることに議論の余地はない。これから先も日本が発信するデザインの数々が、世界に少なからず影響を与え続けていくことだろう。建築や都市のデザインだって例外ではない。それは一部専門領域の人たちだけの理解から、広く世界一般の人々の理解へと拡がっていく予兆がとても強く感じられる。

 これまで国内の建築識者の間では、「現代日本のほとんどの都市デザインは混乱し、無秩序な混沌(こんとん)が都市空間を支配している」「様々な建築デザインが氾濫し、野放しの看板やディスプレーが街をわがもの顔で跋扈(ばっこ)している」というようなことがしばしばささやかれてきた。ある意味そのとおりかもしれないが、私自身には少し違ったように映る。

 工業的イメージが強かった高度成長時代や、一億総中流とメディアが連呼したバブル時代のころに比べると、日本の街並みや建築は総じて随分とスタイリッシュになったものだと思うのだが、読者のみなさんはいかがだろう? そして以前に比べてとてもクリーンで快活なイメージも強まった感がある。それに単体としての建築の完成度は申し分なく、日本らしい華奢(きゃしゃ)で繊細なイメージもうまく表現されている。この認識が世界の多くの人々にも届き始めている。

 東京だけを例にとってみても、皇居周りのような静謐(せいひつ)かつ威厳が感じられる場所から、カルトSF映画「ブレードランナー」が描き出したようなサイバーパンク都市のイメージが強い渋谷スクランブル交差点周辺や秋葉原・新宿エリア、通称「谷根千」と呼ばれる昭和風情が色濃く漂うようなエリアまで、世界から訪れる人々を魅了する都市空間であふれている。

 歴史ある神社があるかと思えば、その隣には先鋭的なオフィスビルがそそり立つ。伝統と最新が仲良く共存する姿や、全く異なる特色のエリアが混在し融和して都市全体像を形成する様は、これまで日本人識者の方々があまり関心を示さなかったり、肯定することがなかったりした部分だ。世界の人々が評価しているのは、実はその部分に他ならない。

 日本が持つ個性や特徴を今一度考えてみる。「わび・さび」にみられる簡素で物静かな佇(たたず)まいを供出する洗練された美意識、「いき」にみられる庶民の生活様式から生まれた明快で彩り豊かで親しみやすい美意識、「禅(あるいはZEN)」にみられる禁欲的で研ぎ澄まされた精神から覚醒を促すような美意識、等々、日本には多様な美意識が一般生活の隅々にまで宿っている。それは西洋のような階級制度によって守られた上流の人たちだけのものではない。西洋とは異なった社会の異なった感性から生まれる「美」に惹(ひ)かれる人々が、私たち日本人が思う以上に多く存在するのである。

 だから、この現象をうまく活用すればよい。これから先も日本が世界に誇るべき特有の文化、民度の高さ、社会秩序の良さ、人々の優しさや礼儀正しさ、などの営みそのものを建築や都市デザインの中にどんどん投影させ融和させていくのである。それはさらに広義に解釈される「計画」という意味のデザインへと昇華され、そのデザインは意義深く本質的な輝きを放つようになる。少し前までの西洋至上主義で成り立っていた価値観からは大きく変容を遂げた新しい価値観を見い出すことにつながるかもしれなない。

 せっかく世界から注目され好印象で彩られた国、日本! もっと私たちは自信を持ってジャパニーズ・クールを探求し発展させていってもいいのではないか? と私は実感する。

本記事は、日刊建設工業新聞 2014年5月8日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。