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日刊建設工業新聞連載「所論諸論」

世界をリードする高品質国家へ

世界をリードする高品質国家へ

 昨年は、年初のアベノミクスに始まり、年末に和食がユネスコの無形文化遺産として登録されるに至るまで、明るい話題も多く、日本社会が少し自信を取り戻した1年だった。中でも極めつけは、2020年の東京五輪・パラリンピック招致を獲得したことに尽きる。そのメリットは、経済効果・海外への情報発信・国と国民の一体感など、測り知れないものがあるだろう。

 とりわけ建設業界が受ける恩恵は絶大である。競技場や選手村などの直接的な施設役資ばかりか、インフラや関連施設の整備まで非常に広範囲に及ぶ。五輪・パラリンピックの成功に向けて、山積みする多くの課題を解決しようとする強い意志を、業界全体で共有していかなければならなくなるはずである。

 そして、これから五輪が開催されるまでの7年間で、いかにこの日本が長期的視点と未来への戦略を持って臨んでいくことができるかも試されることになる。まず、施設整備を続けながら国や経済としてのあり方を再構築し、世界に売れる日本ブランドカを身に付ける必要がある。たとえば、非常に有望な道が見え始めた“インバウンド(訪日客)”需要の拡大を積極的に展開していくのはどうだろう。外需の力で内需を押し上げる最良の近道でもある。

 昨年、日本への渡航客は初めて1000万人を突破したが、世界的需要を誇るフランス8300万人、アメリカ6700万人、スペイン5700万人の数に比べれば、まだまだ大きな格差がある。中国にいたっては、過去10年間で2600万人以上の客数を伸ばし、現在では5800万人と堂々の世界第3位国に躍進するほどである。これを見れば、日本が持つ本来のポテンシャルを持ってすればこれらの国に引けを取るものではない、と考え直す人も多いことだろう。

 昨年登録された富士山をはじめとする多くの世界遺産や観光資源、巻頭に記した和食を筆頭として多様な拡がりをみせる食文化の楽しみ、クールジャパンに総称される日本のカッコよさ、そして何より、本来の意味を母国語以外に翻訳し難い“お・も・て・な・し”の精神と行動規範をもって訪日客を迎え入れる。さらに、これらの総合力が重要になる。当然、施設建築もこの中に溶け込ませるべき欠かせないアイテムとなることは言うまでもない。

 それにも増して、考えていかなければならないのは2020年以降のことである。この間にも日本は確実に少子高齢化の道をひた走る。この避けては通れない難題にどのように向き合い克服していくかも大きく問われている。今回巡ってきた好機は、その準備を行うための猶予期間であるともみなすことができる。

 私自身、2020年以降のカギは五輪よりむしろパラリンピックのほうにあると考えている。多くの選手=障害者を一度に受け入れることで、都市や地域・施設のインフラ整備やユニバーサルデザインの本質的機能を再確認し、人的サービスのあり方と合せた総合的な受人体制を構築していくことが、少子高齢化社会の解決に向けての布石となるはずである。パラリンピックを地域や組織ぐるみで完璧にオーガナイズできることこそ、未来を見据えた真のピジネスモデルを得ることに繋がる。

 経済規模だけで言うなら、中国の次にいずれはインドも日本を追い抜くことだろう。だから日本が進むべき道は、決して経済規模で勝負することではない。世界をリードする上質な知財やノウハウ・人財を駆使した高品質国家となることである、と私は思う。

本記事は、日刊建設工業新聞 2014年1月8日に掲載されました。掲載元の許可を得て、掲載しています。
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