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週刊 施設参謀

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発注者目線の仕事術 発注者目線の仕事術

vol.07改正品確法の施行で
重要さ増す基本設計

図面よりも大切な特記仕様書

このように実施設計段階に施工者が参画してくると、実施設計や設計図書の在り方が問い直されることになる。

現状では慣習的に定められた設計図書を用意する感覚で業務を回すのが精いっぱい、という設計者も多いかとは思う。だが一部の設計事務所では、実施設計を効率化して、基本設計やプロジェクトのマネジメントに自社の強みを集約する動きも見られる。今後の流れを見据えると、実施設計図をいかに効率的に、かつ効果的に描くことができるか、という視点が必要となってくる。

もともと、基本設計図は発注者に、実施設計図は施工者にそれぞれ設計意図を伝えることが大きな目的だ。効率を上げるには、必要最小限の設計図書で、いかに設計意図を正確に伝えられるかが要点となる。

その際に発注者は、設計図書に含まれる図面それ自体よりも、むしろその上位に位置付けられる要項書や、資産や工事などの管轄を整理した区分表の方を重視する。なぜならこれらに含まれる条項が、建築や電気、設備、内装といった工事責任の範囲を明確に規定し、関係各社の役割分担を位置付けるからだ。前提がしっかりして初めて、図面が意味を持ってくる。

そして当社では、設計図書と契約書本体との架け橋となるのが、特記仕様書と捉えて重視している〔図2〕。図面よりも後回しになりがちかもしれないが、むしろ先駆けて作成するべきだ。特記仕様書に漏れがあれば、発注者に思わぬ損害を与えることになるかもしれない。

発注者が重視するのは図面より契約

[図2]
発注者が重視するのは図面より契約
契約上は設計図書より、要項書などが上位に位置付けられる。特記仕様書は、図面の読み方の手引き書であると同時に、上位の書類とリンクする役割を果たす。設計意図を守るためにも丁寧に作成したい

必要な図面を見極める

一方、実施設計の図面は工事費算定の基礎となるもので、施工者にポイントを押さえた情報を伝え、実体のものづくりへとつなげる役割を持つ。そのためには、図面の優先順位を認識し、しっかりと描き込む図面と、省略しても構わない図面とのメリハリを付けて描き分けたい。

建築士の業務報酬基準を定めた2009 年国土交通省告示第15 号では、実施設計で作成すべき79 項目の図面類が例示されている。だが必ずしも全て作成する必要はない。告示にも、「建築物の計画に応じ、作成されない図書がある場合がある」と明記されている。にもかかわらず、慣習的に全てそろえてしまっているようであれば見直してみよう。

設計図書の合理化のポイントは、図面間の不整合や矛盾をなくすために、設計の早い段階で図面の一元化を進めておくことだ。当社が関与する建設プロジェクトでは、基本設計がある程度形になった段階で「マスター図」に情報を集約してから、必要な図面を展開するように手順を定めている〔図3〕。

図面の枚数を減らし情報を集約

[図3]
図面の枚数を減らし情報を集約
必要な図面を厳選して作成したい。体裁を整えるためだけに多くの図面を用意するのではなく、1 枚の図面に情報を集約したマスター図を作成する。構造や設備、電気の各図面を重ねることで、矛盾もチェックできる

1つの図面に情報集約

マスター図は平面詳細図に構造や設備、電気などの図面を統合したもので、施工図でいうところの総合図に当たる図面だ。それを設計段階で作成する。

設計変更は、随時このマスター図に集約してそこから参照するように徹底すれば、図面間の不整合による描き直しも減る。構造や設備間の干渉も早い段階でチェックできる。

こうして設計の骨格部分をしっかりさせれば、設計者がディテール図面を描かなくても、施工者は大きなトラブルなく施工を進めることができる。例えば、天井伏せ図や展開図など、意匠面で施工者に伝える要素が特になければ、図面を描かなくても支障はないはずだ。

設計本来の役割は、発注者の要望を整理して建築という実体に近付けていくことだ。発注者の視点から見れば、本来、実施設計よりも基本設計の占める役割の方が大きい。この機会に基本設計の重要性を見直す必要があるだろう。

POINT

  • 公共工事の品確法の改正は、設計事務所に設計業務の合理化を促す
  • 作成すべき書類や図面に優先順位を付け、設計プロセスの無駄を見直そう
  • ●構成・本編イラスト:ぽむ企画  ●企画:納見 健悟
    本記事は、『日経アーキテクチュア』2014年9月25日号に掲載されました。一部内容を改変し、掲載元の許可を得て、掲載しています。

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