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週刊 施設参謀

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発注者目線の仕事術 発注者目線の仕事術

vol.01発注者とともに考え
経営戦略を建築に仕込む

川原 秀仁

講師:川原 秀仁代表取締役社長
1960年生まれ。日本大学を卒業後、農用地開発公団(当時)、農林水産省、国際協力機構を経て山下設計入社。1999年から山下PMC。創業メンバーとして参画し国内CM技術の礎を築く。大規模プロジェクトを中心にCM・PM案件の統括マネジャーを務める

「事業5用途」という言葉をご存じだろうか。これは「オフィス、ホテル、商業施設、共同住宅、倉庫」のこと。不動産会社による開発案件のほとんどを占める、施設の用途区分だ。不動産市場全体では、取引の約7割がこれらの用途に当てはまる。例えば、組織設計事務所が扱う物件については、その半数程度が事業5用途に含まれるのではないだろうか。

事業5用途に対する需要は堅調だ。だが厳しく採算性が問われること、提案の余地が少ないことから、建築関連の技術者が手掛けるうまみは減っている。事業5用途に含まれる施設は、不動産会社主導で事業や建築のノウハウが確立されているからだ。景気がよい時代はそれでもよかったが、過剰供給と建設費の高騰で新築物件が頭打ちになりつつあるいま、これだけでは業務の拡大は望めない。

狙いは事業5用途以外

では、どうすればいいのか。事業5用途以外の施設に目を向けてみたい〔図1〕。CRE戦略という言葉をご存じだろうか。これは企業が保有する不動産(Corporate Real Estate)を利活用する戦略をいう。2008年には国土交通省から「CRE戦略を実践するためのガイドライン」が発表されるなど、国も力を入れている。

ブルーオーシャンは事業5用途の外にある

[図1] ブルーオーシャンは
事業5用途の外にある

不動産会社が主導する事業5用途(オフィス、ホテル、商業施設、共同住宅、倉庫)は事業や建築のノウハウが確立されており、競争も激しい。他用途の施設は提案の余地が十分にあるブルーオーシャンだ

いま多くの企業が頭を悩ませているのは、所有する不動産を本来の事業と連動させつつ、どう有効活用するかだ。国内の不動産資産規模の約2割を占める法人所有不動産。その中で収益不動産として活用されているのはごく一部だ。多くの企業は、自社所有の遊休不動産を本業で有効活用する視点から、施設計画を立案できる人材を求めている。建設界にとって大きなチャンスだ。

建築技術者が腕を振るう余地が大きいのは、事業者自らが所有する不動産を活用するケースだ。例えば、生産工場や研究開発施設、データセンター、物流施設、学校、医療施設。こうした分野が有望であると感じている。なぜなら提案の余地があり、その提案が発注者の事業そのものに大きな影響を及ぼす可能性があるからだ。

箱の内外を統合する利点

データセンターを例に説明しよう。データセンターを構成するサーバー群は、JIS規格により、一つひとつが震度7程度の地震に耐えられるように定められている。それぞれに耐震性を持たせるには、サーバーのラックごとに耐震対策を施す必要がある。これを建物の事業企画段階から考慮に入れ、例えば建物と一体的に耐震対策を取れるとすれば、コスト削減効果は大きい〔図2〕。

これまでは建築側の守備範囲は建物とそれにまつわるインフラの整備で、内部の設備機能は他分野の専門会社が担うというように、箱と中身のつくり手がはっきりと分かれていた。箱と中身を事業の企画段階から見据えて考えることができれば、より合理的で採算性が良く、発注者にとって付加価値が高い提案へと導くことができる。

[図2]施設の箱と中身を一緒につくる
これまで生産・インフラ系施設では、建物(箱)は建設業が、設備(中身)は機械設備メーカーが分担していた。計画段階からまとめて考えることができれば、事業効率が高まり、採算性も向上する

・株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツは、2018年4月1日に、株式会社山下PMCに社名変更しました。
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