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日本は各産業がティッピング・ポイント前夜 経済停滞の悲観的なニュースに惑わされるな

急激かつ非直線に進化する「ティッピング・ポイント」

「ティッピング・ポイント」とは、一つのアイデアや社会的行動がある日突然一気に敷居を超えて野火のように拡がっていくような劇的瞬間、図にするとこれまでの進化の延長線上からポンと離れてマジョリティになる瞬間です。現在の日本では、建設産業も他産業も今まさにその手前にいるんじゃないかなと感じています。

すでにティッピング・ポイントを超えて成熟している代表的な例は音楽産業です。ストリーミングサービスによって音楽を聴く習慣は大きく様変わりしました。

インバウンド観光もティッピング・ポイントを超えました。SNSで誰でも気軽に発信できるようになり、世界中から観光客が来て2013年にはインバウンド年間1000万人のラインを突破しました。

日本では、他の産業もティッピング・ポイントを迎える夜明け前のような状況になっていると感じています。

1.ティッピング・ポイントに不可欠な3原則
2.日本で生まれつつある、ポイントの萌芽
3.変革のために「当たり前」から一歩抜け出よう

1:ティッピング・ポイントに不可欠な3原則

私がマルコム・グラッドウェル著『ティッピング・ポイント』を読んだ2000年当時は、まだSNSという発想もバイラルマーケティングやプラットフォームという概念も存在しませんでした。しかし彼が伝えたい本質は同じで、当時と技術的な違いはあるにせよ今も参考にすべき点が多々あります。彼は、ティッピング・ポイントを迎えるための3原則があるといいます。

1つ目は「少数者の法則」です。人々へ流行の伝搬をスタートさせるには特別な3種類の能力を持った少数者が大きく関与します。本では「コネクター」という人脈豊富なつなぎ役、「メイヴン」という情報通、「セールスマン」という個性豊かな売り上手が挙げられています。刊行当時は人が対面した際の“口コミ”が伝搬の重要ルートと設定されていましたが、今はネット上のSNSやプラットフォームがその役割を担っています。私たちは昔より手軽にマジョリティを作り出せるようになっているのです。

2つ目は「粘りの要素」です。性質が粘り強いという意味ではなく、人の脳裏にこびりつくような“粘り”の印象を後々まで残すという意味です。一度聞いたら忘れない、一度体験したらまたやってみたくなる、そういった存在もティッピング・ポイントを作る要因です。

3つ目は「背景の力」です。そのときの社会的・時代的環境、社会全体がそれを発展させようとする大きな潮流も、要素として不可欠だといいます。今の日本は皆が「失われた20年」を前提にした停滞状況に飽きて「変わらなくちゃ」という潜在的な機運に満ちてきました。背景も揃い始めているのです。

2:日本で生まれつつある、ポイントの萌芽

建設産業もそういった状況下にあります。「粘りの要素」でいえば多様な発注方式が生まれて、いろんなサプライチェーンの組み合わせが出てきました。また、アイドリングエコノミー、シェアリングエコノミーもマジョリティになりつつあります。

表には出ていないだけで、実は水面下では新しいビジネスを考える人の気泡だらけです。それを統合するプラットフォームや、既存概念を突き抜ける粘着質を持った存在が見つかれば、その事業はすぐにティッピング・ポイントを迎えられます。

例えば、スポーツでもDAZN(ダゾーン)が Jリーグの前放映権を握ったことで配信・視聴スタイルが変わりました。このティッピング・ポイントによって現在はスポーツビジネスという概念が大きく揺さぶられています。

建設業界で求められているのもそれと同じような世界です。リアルとの組み合わせのほか、自動設計や自動データ収集が成り立って一つのベースを作るようになれば、それを中心としたサプライチェーンに全部切り替わっていきます。建築物という出来上がりのものだけでなく、造り手の企画設定の立て方や調達方法、情報データの集め方まですべてを変える画期的な状態になるでしょう。

ただし、これは個別にクローズドな技術開発やプログラム開発を行う汎用性がない状態ではダメです。汎用性をつけて互換し合い、それが集積して大きなプラットフォームになるからこそ大きなムーブメントを起こせる。一社で行うより、皆が参加する流れにするのが最重要です。

3:変革のために「当たり前」から一歩抜け出よう

手作業で厄介な部分はおそらく自動化されます。そのときに最後まで残るAIでは代替できない部分、人にしかできない部分にちゃんとフォーカスできるかどうかで未来が変わってくるのではないでしょうか。

そのために今から実践できることはたくさんあります。建設産業であれば、お客さんに一番利活用されるデータは何か、建築物というリアルを説明するデータはどう運用すればベストか、何が足りず何を作ればいいかを考えることが大切です。

全く関係ない先進を組み合わせてティッピング・ポイント要因を生み出す作業は、当社でも試みています。とても興味深いのは、あまりにも対象を広げ過ぎていたときは、アイデアがなかなか出てこなかったことです。でも「単にマッチングとしてこちらの遠い人とあちらの遠い人を結びつける世界から発想しよう」と範囲を限定すると、若い人たちからどんどんアイデアが出てきました。 手が届く範囲から始めると、前向きな妄想や突飛な発想が湧きやすいのです。

今後は「粘着の要素」で新手法を印象づけられるよう、パートナーの皆さんも巻き込んで、未来のティッピング・ポイントのエンジンにしたいと考えています。

日々のニュースはいつもネガティブですが、日本は実は失速しているわけでも停滞しているわけでもありません。ティッピング・ポイントが起こればその部門の産業はしっかり成長しますし、経済低迷とは無縁の世界で生き抜けます。

自分の業界が衰退産業だからと卑下する必要もありません。むしろ衰退と思われている産業のほうが伸びしろがあるブルーオーシャンです。建設産業もそうです。建物にはインフラやエネルギー供給まで全て繋がっているため事業の裾野が広く、工夫のしどころが多く残されています。皆さんも近傍の経済の浮き沈みに左右されることはやめて、悲観せず可能性を追究していきましょう。

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