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シェアリングエコノミーは他人事ではない

日本にビジネスチャンスがある3つの理由

実は日本と相性のいいシェアリングエコノミー

日本でも定着しつつある「シェアリングエコノミー」。空いている空間や時間をシェアするビジネスとしてライドシェアや民泊、コワーキングスペースなど、仕事やプライベートで利用する機会も増えてきました。でも、自分たちの業界・産業とは無関係のビジネスモデルだと思い込んでいる人が多いのではないでしょうか。

確かにシェアリングエコノミーというと、UberやAirbnbに代表される海外のプラットフォーマーの印象が強く、国内企業のビジネスとは関連が薄いように見えるかもしれません。また、いわゆる第1~3次産業をメインストリームビジネスと捉えている人にとっては、シェアリングエコノミーはモノを持たない特殊な経済活動に感じられるかもしれません。

しかし、私は日本の文化、日本人の国民性こそシェアリングエコノミーと親和性が高く、社会に事業化のタネがたくさん浮遊していると考えています。その理由としては、

1.日本の“おたがいさま”精神
2.待ったなしの地方創生
3.日本企業が得意とする調整型人財


の3点が挙げられます。

理由1:日本の“おたがいさま”精神

「シェアリングエコノミー」と「アイドルエコノミー」はつい混同・同一視されがちですが、私はこれらを明確に区別して捉えています。前者は有機的で、個人と個人との信頼や共感を土台にする「人の思い」を乗せたシェア、後者は無機的で、ツールを使ってシステマティックに空間・時間をやり取りするビジネスだからです。

後者の「アイドルエコノミー」は、人を介さず効率性や合理性を重視する人に支持されています。前者の「シェアリングエコノミー」は「アイドルエコノミー」と逆で、古くから存在する「おたがいさま」や「おすそわけ」の精神とも結びついて、日本ととても相性がよいビジネス形態だと感じています。

シェアリングサービスのタネはたくさんある

例1:共働き世帯が忙しい時間に少しだけ子どもの世話を頼むサービス。

例2:通常の医療施設だけでなく空き家・スペースを活用して介護に利用するサービス。

日本ではすでに、ご近所や仲間間で当たり前のようにサービスやモノをシェアする文化が根付いています。意識的にそれらをすくい上げてプラットフォームに乗せれば、すぐに事業化(=シェアリングエコノミー化)できます。単に私たちが事業化のタネとして気づいていないだけで、周囲にはたくさんの需要が転がっているのです。

理由2:待ったなしの地方創生

日本が抱える大きな課題の一つ、地方創生。もはや自治体任せの企業・人の誘致だけでは少子高齢化・過疎化の流れに抗うことは不可能です。そこで鍵になるのが、シェアリングエコノミーです。現在、ITを活用したプラットフォームビジネスはどこでもスタート可能になっています。空間を飛び越えられるという特長が地方には非常に向いているわけです。

現在の働き方や暮らし方のトレンドを考えると、地方に魅力を感じた人に拙速に定住を求めるのではなく、来訪者が空間・時間を選んで過ごしてもらえる場や仕組みを作るほうが、結果として継続的な利用が見込め、地方にとっても収益につながります。ITテクノロジーとパラレルキャリアを後押しするインフラを整えれば、地方でもシェアリングエコノミーを確立できる可能性は大いにあるのです。

地方には都会では手に入らない価値・ブランドがまだまだ眠っています。シェアリングエコノミーによって人の交流が活発になれば、地産地消に留まっていた名産品を知る人が増えるでしょう。それを愛する地元の人々の情熱に触れる人も増え、話題や評判をプラットフォームに乗せて遠くまで届けて拡げることができます。

理由3:日本企業が得意とする調整型人財

第1〜3次産業(GDPに計上される産業、メインストリームビジネス)のシステムは、労働人口・消費減少等の影響により揺らぎ始めており、それに替わるニュービジネスが求められています。

以前のコラムでもお伝えしましたが、日本企業の多くはロジカルに物事を考え、精密な技術・製品を生み出すことを得手とする一方、ビジネス創発で重視されるデザイン思考は不得手という傾向があります。残念なことに、このような傾向を自覚しているせいか、新しいシェアリングエコノミーは自分たちとは関係ないものだと、無意識に切り離してしまう人が多いように感じています。

確かに、突出したアイデアや行動力は貴重です。しかし、同時にそういったデザイン思考の人財を活かそうとすれば、調整役も必ず求められます。幸い日本企業には、突き抜けた考え方を尊重し、組織全体で推進できるように周囲を説得してフィットさせていく、バランスに長けた調整型のビジネスパーソンが揃っています。

どんなに突出した能力・アイデアがあっても、社会を一気に変えるのは難しい。しかし、現状を踏まえながら徐々に新概念を社会に広められる調整型人財が加われば、実現化・マネタイズ化の動きが加速する。

日本のシェアリングエコノミーはメインストリームに

このように日本の文化、社会・経済、日本企業の特性を考えると、シェアリングエコノミーは大きな成長、これからの産業の主役の一つとなる可能性を秘めていることがわかります。その過程では現在のサービスやモノと融合した「半歩先」のサービスとして登場するかもしれません。便利だと思う人が増えれば徐々に現在のメインストリームを変容させ、結果的には全体が入れ換わることもあるでしょう。

ただし、日本発・日本オリジナルのシェアリングエコノミーは海外資本のようにプラットフォーマーが独り勝ちする構造ではなく、近江商人の極意「三方良し」の精神に基づくような「プラットフォーマー/サービス提供者/サービス利用者」のすべてが幸せになる、そんなビジネスモデルになり得るのではないでしょうか。

事業化以前・事業化未満のタネはイオンのように世の中に浮遊している。チャレンジ・ベンチャー精神を持った人・企業がサービス化してくことで、いずれはメインストリームの一部、あるいは駆逐する存在となる。

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