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ITだけがプラットフォーマーではない

勝者になるための究極のマッチングビジネス

山下PMC 代表取締役社長 川原秀仁

2019年3月末に新著『プラットフォームビジネスの最強法則-すべての産業は統合化される』を刊行しました。そこで今回は、本書のテーマであり、私が常々、講演会やWeb・SNS等の場でも発信している、組み合わせの発想で創るプラットフォームについて、少しご紹介させていただきたいと思います。

プラットフォームに対する誤解

GAFAに代表されるITプラットフォーマーによるモノポリー(市場寡占)について、連日メディアで取り上げられていますが、「プラットフォーム」という言葉を聞くと、ネット上のサービスを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
しかし、私自身は決してネットだけに限定されるものではなく、リアルな世界も含めて、「Aをしたい人とBをしたい人を結びつける場所」とプラットフォームを定義しています。つまり、プラットフォームとは、人・モノ・サービス・施設・インフラ…あらゆるものがボーダレスにつながり、様々な産業が融合・統合化される仕組み。そして、デザイン思考をもった人だけが、その仕組みを実現できると考えています。

常識を疑ってみる

デザイン思考をもった人だけがプラットフォームを創り出すことができる。そして、プラットフォームを創った者だけがビジネスの勝利者になれる。―――それは、山下PMCの歴史、自分自身の経験から導き出した答えです。
当社は日本初のPM/CM専業会社として創業し、今年で22年を迎えます。創業当初は、訴訟社会である米国式のマネジメントをそのまま採用しましたが、使命感やチームワークを尊重する日本の企業文化・商習慣とは合わない点も多く、改良が必要だとすぐに感じました。
現在、私たちは、常にお客さまの側に立ち、対話を重ねながら、事業の川上からお手伝いするPM/CMのサービスを提供していますが、これは、私たちが苦しみながら生み出してきた独自のスタイルです。

加えて、他の産業のやり方もよく観察して、自分たちの仕事に取り入れられないか、常に研究してきました。たとえば、今では建築で常識となっているコンカレント・エンジニアリングは、製造業を手本に生み出した手法です。
このように、デザイン思考とは既存のやり方やひとつの分野の情報だけに固執せず、情報を幅広く収集・分析・応用する、一見関係のなさそうなもの同士をつなぎ合わせ発想を広げる思考です。もし、私たちにデザイン思考を持とうという意識が完全に欠如していたら…きっと、多くのお客さまからご支持いただける今のような企業にはなっていなかったでしょう。

BS主義からオペレーション主義へ

日本はロジカルに物事を考え、技術を開発し、緻密に製品を作ることは得意ですが、既存の技術やサービスを「組み合わせる」ことは総じて不得手です。しかし、近年のUberやAirbnbの急成長は、技術革新だけがイノベーションではなく、組み合わせもイノベーションになりうることを証明しました。
これからの日本に必要なのは、柔らかい発想で組み合わせの方法を考え、すぐに動き出せる軽やかさです。硬直化した思考のままでは、プラットフォームを創り出すことはできません。
また、昨今の社会・経済のメカニズムの変化はプラットフォームの創出にとっても好機となっています。

その変化のひとつは、BS主義からオペレーション主義への転換です。お客さまの企業でも、資産の所有より活用、利益の留保より価値ある投資へと、儲ける考え方が変化していることを感じている方も多いのではないでしょうか。オペレーション主義のもつ軽やかさは、ビジネス創発にプラスに作用し、これからのプラットフォームの創造・活性化の原動力となることでしょう。

変革の起点「7つの領域」

これまで、プラットフォームを創り出すための基本的な思考法や、把握しておくべき社会・経済の変化について述べてきましたが、さらに私は具体的なアイデアとしてそれをまとめ、提案に移すための起点として「7つの領域」を提唱しています。

その理由は、今後、民間投資を引き出すためには、ESG、SDGsの観点が必須であり、多くの企業で社会の共通課題をビジネスの力で解決するCSV経営を推進しようとしているからです。
そこで私は、社会の共通課題・関心にマッチした7つのテーマを設定したのです。いずれのテーマも単なる業種・施設用途の区分ではなく、課題解決ソリューションの起点として考えています。

「7つの領域(戦略)」+建設バリューチェーンの再構築

一つひとつの子細な解説はここでは割愛させていただきますが、一例として、ボールパーク・プロジェクトをご紹介します。

様々な産業をつなぐボールパーク・プロジェクト

東京オリンピック・パラリンピックを1年後に控え、スポーツビジネス成長の機運が高まっています。しかしながら、これまでの経過を見ると、当初の期待値を上回るほどの経済効果は出ていないようです。一方、米国のスポーツビジネスは、過去20年間で3倍もの規模に成長しています。なぜ、米国では上手くいったのでしょうか?
米国と日本を比べたとき、最も大きな障害となるのはスポーツの捉え方です。日本は昔からスポーツは体育の延長であり、スポーツでお金儲けをすることに抵抗感を示す人が少なくありませんでした。そのため、学生・アマチュアとプロ団体は完全に切り離されていました。
しかし、米国でのスポーツはエンターテインメントの一種。スポーツで人を集め、人を楽しませ、街全体に利益を生み出すビジネス要素として活用しています。

そこで、山下PMCでは、米国のボールパークを参考にしながら、スポーツを起爆剤に街を活性化させるための仕組み創りを始めています。プロジェクトマネジャーがハブとなり、複数の産業、自治体、様々な属性の人、スポーツ・商業施設をマッチング。さらに今後は、リアルだけではなく、eスポーツをはじめとしたネットビジネスとも複合的に絡んだ仕組みに発展していくことが予想されます。

街と一体となったこれからのボールパーク

ここで重要なのは、スポーツコンテンツや施設に対する固定観念・既成概念を捨てること。そして、単一の産業・用途ではなく、組み合わせの発想でビジネスを創る軽やかさです。図(「7つの領域(戦略)」+建設バリューチェーンの再構築)にある通り、当社では、ボールパークの建築プロジェクトを、7つの領域の「スポーツビジネスと余暇」のカテゴリーに位置付けていますが、実際には、他の領域との融合、統合化を繰り返し、進化し続けています。

冒頭で述べたように、プラットフォームはネットだけのものではありません。ちょっとだけ視点を変えて、組み合わせ(マッチング)の発想を取り入れれば、新たなプラットフォームを生み出し、ビジネスの勝者になれると、私は確信してます。

プラットフォームビジネスの最強法則
すべての産業は統合化される
著者:川原秀仁 山下PMC 代表取締役社長
出版社:光文社 定価:1,600円(税抜き)

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