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建築業界でも、デジタルでは代替できない人財育成を AI・IoT時代の真のリアルとは?〈後編〉

建築業界は何をすべきか

リアルとサイバーの世界が融合されていく将来に向け、建築業界も旧来のしがらみから離れた改善が求められます。建築物や人的リソースというリアルを重視した方法から、つながりを活用した方法、デジタル化やネットワークを駆使した方法へ移行しなければいけないのです。

建築の世界では成果物が2つあります。1つは建築した建物そのもの、もう1つは竣工図書です。建物自体はリアルでしか出しようがありませんが、竣工図書はまだリアルからデジタルへ移行する余地があります。これをデータ化し、建築専門家以外の人々、たとえば建物運用会社スタッフや財務管理スタッフも理解できるような記述に換えるのは、建築業界がネットの波を乗りこなすために必要な第一の改善点でしょう。

第二の改善として提案したいのは、データ化を進めるにあたって「最適解を導ける人財」を育成することです。テクノロジー自体を極めるのと同時に、そのテクノロジーを使いこなせる人財を育てるリアルの部分にも力を入れるのです。

AIのような自動化領域だけを突出させて、単純に条件だけで事業と事業をマッチングさせてもダメです。コミュニケーターのような情報を的確に伝えられる伝達者、モデレーター・ファシリテーターのような相手の感性に合わせたアドリブ対応が可能な仲介者、従来の情報から新しい発想を生み出すイノベーター、これらリアルな「人」のスキルや知恵を土台にして、初めてネットテクノロジーを有効利用する世界が開かれます。

実施設計をなくす

特に建築物は膨大な要素から成り立っています。発注者の事業内容、財務状況、経営方針は千差万別です。建築物の立地条件、利用目的、求められる成果、機能やスペックも1つとして同じものはありません。関わるお客様、工事関係者もそれぞれの事情や目的があり、現場ではそれらすべてを統括した上で「最適解」を調整する人財が必要です。つまり、技術は「最適解」を実現するための手段の1つでしかないのです。

業界ではリアルとデジタルの両方を意識し、新しい建設バリューチェーンを生み出せる人財を作りながら彼らが活躍できる場を整えなければいけません。私たちはその試みを具現化しようと展開を始めています。ある大規模プロジェクトでは、実際にリアルとサイバーを融合させた新しい設計方法を取り入れることを予定しています。業界では常識となっている基本設計→実施設計→生産設計という設計工程を見直し、実施設計をカットしようとしているのです。

実施設計は設計の7割を占める大きなプロセスですが、実はカットしても問題ないと考えています。基本設計を的確にデータ化した上で、無駄のない生産設計につなげられるように「人」が建築知識とデジタルスキルを駆使してアレンジすれば、実施設計がなくても工事が成立するからです。

この新プロセスをすべての関係者に説明しメリットについて情報共有すること、複雑な建築情報を集約し、将来も使えるデジタルデータに変換すること、そして工事関係者を含めて実施に移すことにおいては必ず有能な「人」が介在します。私たちの会社ではすでにそういった人財を育成し、建設を俯瞰的に見ることができる仕事を進めています。

建築業界はまだ専門知識の壁が厚く他産業からの参入障壁が存在していますが、優れた技術を持った巨大企業にいつ進出されるかわかりません。そのためにもリアルな人たちが今持っているスキルを磨き上げて、私たちの手で他業種の脅威に代替されない世界を確立する段階ではないでしょうか。

若い人たちはすでに危機感を持っています。彼らが活躍できる場を広げるためにも、私たちはアナログ一辺倒の世界から抜け出す必要があります。建築業界ではネット化というとBIMで思考が止まっている節があります。しかし真のネットワーク世界はさらに広く、BEMS(ビルディングエネルギーマネジメント)のような中央監視システム、財務会計・事業運営システムまでも含むものです。早くその広さに気づき、建築業界の内部から活用する制度や仕組みを構築すべきだと考えます。

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