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人口減と社会システムの変革は不可避 – 首都圏を例にした健康長寿社会の未来像とは〈後編〉

誰もがピンピンコロリを実現できる社会が理想

そもそも、私たちはどんな社会を目指せばよいのでしょうか。高齢者の割合が増え、生産年齢人口が減るのは確実です。寿命が延び「働く」以外の活動が格段に増えるのも確実でしょう。その中で私が理想とするのは、いわゆる「ピンピンコロリ」を誰もが実現できる社会です。言い換えれば、誰もが亡くなる直前までは元気でいられ、自由に活動して充実した時間を過ごせる社会です。

施設活用というハード面では、償還時期を迎えた公共施設の見直しが必須です。人口増加を見越して地域内で点在していた施設は、このまま建て直しても維持管理に大きな負担がかかります。今後少ない人口で維持するためには機能も建物も集中させることが必要です。図書館やスポーツ施設、託児保育や介護施設など1施設1機能の考え方を改め、1カ所で複数の役割を果たせる施設に造り替えるべきです。新築以外にも、コンバージョンやアイドルエコノミーの導入も視野に入ります。

システム改善というソフト面では、今の医療介護制度に頼るほか新しい地域ネットワークとの連携が望まれます。日本の医療・介護は、再生医療や遺伝子治療などをはじめとする先端医療技術と施設が発展し、2000年から導入された介護保険制度のおかげで地域医療施設や介護施設、在宅介護のシステムも当たり前になりました。ただ、今後の高齢者増加を考えると、このままでは間違いなく機能がパンクするでしょう。これからは「これらの施設に入所しなくてもいい人たち」を増やす必要があります。

そこで求められるのが、多機能施設とそれを活用するための人財・運営システムです。地域内で健康増進やスポーツ振興、文化教育などのサービスを好きなときに気軽に受けられる環境を作り、元気な人たちで循環させられるようにするのです。私は、このシステムには「有料化」も組み込むべきだと考えます。無料ではなく、サービスを受ける人は一定の費用を支払ってもらう。ビジネスとして経済循環を構築するのが仕組みを長続きさせるポイントだからです。

先進国トップの高齢化社会、だからアウトバウンドできる

システムの「有料化」は、日本経済におけるシニア世代の資産を社会に循環させる施策としても有効です。仮に「国(政府)の金融資産の貸借対照表」を作ってみると、国の金融資産は約1800兆円あります。そのうち96%は国民の貯金で構成され、4%は円建ての形で海外にあります。この国民の貯金のうち80%は65歳以上が保有しているのが現状です。とはいっても、彼らの日常の収支は支給される年金額の範囲でしかなく、「節約、ときどき贅沢」というのが生活の基本スタイルです。

ないわけではないが、使う場面が限られている。それがシニア世代のお金の特徴です。それならば、彼らの「贅沢」の部分を地域システム内で上手に循環させれば、持続性を維持できるのではないでしょうか。若い世代だけに負担を強いる仕組みはもう無理です。資産を持っているシニア世代で新しい経済体系と活動場所を作らなければ、日本経済全体が倒れてしまいます。

もちろん、新システム実現のためには民間の工夫だけでなく、官の制度によるバックアップも必要です。今なら、国道16号沿線の人口集中地域がまさに新しい仕組みが求められるエリアであり、官民双方のリソース投入の意義があると考えます。

副都心を結節点として郊外へとつながる都市発展のモデルは、実は日本独特のものです。現在はベトナムやタイの都市に向けて「開発モデルパッケージ」として外販されています。少子高齢化社会に対する解決策もうまく構築できれば「社会システムパッケージ」として世界に示し、輸出が可能です。人口減という現象は、考え方次第では未来経済に活用できるのです。どんな方向へ舵を切るか、現在の私たちは答えを迫られています。

健康長寿社会の実現と少子高齢化対策

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