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いち早くクライアントの収益が望めるよう慣習を打ち破る「建設バリューチェーン再構築」を〈後編〉

まず竣工図書にデータを集約させることを目指す

実建築物に即した情報が最終的に竣工図書類としてクライアントに渡ること自体は、非常に良いシステムだと思います。問題は、どんな状態で情報が渡ればベストなのか、それを構築するにはどんなプロセスが必要か、という2点です。

前者の答えは比較的シンプルです。今後施設でIoTやAIを活用したビジネスを展開したいなら、あらゆる情報のデータ化が求められます。クライアントの間でも複数施設を管理するために情報をデジタルデータに置き換える流れがすでに起こっています。竣工図書類も同じように、紙を中心とした構成からデジタル化へ移行すべきです。

データ化のメリットはいくつかあります。まず一元化しやすく情報の散逸がありません。紙ベースの情報はやり取りする間に紛失したり、確認したくても資料がなく現状から構成し直したり、デメリットが多く業界でも悩みの種です。データであれば必要なときに必要な人がすぐアクセスできるので、これらのコストが大幅に削減できるでしょう。

また、データ化すれば表現の選択肢が増えます。クライアント向けの情報を抽出して見やすく提示したり、設計担当者が必要なデータだけ並べて経過を確認したり、竣工後も同じデータを使って運用担当者が施設状況を把握できるようになります。建物について一度完全な竣工図書データが揃えられれば、過去の履歴確認だけでなく修繕や将来の運用にまでデータが活用できるのです。

第一歩として「データ化された完全な竣工図書類」を目指せば、応用はいくらでも利きます。しかし実現するまでには、建設業界にいる私たちが従来の方法を打破しなければいけないぶん少し時間がかかるかもしれません。紙ベースだった情報のデータ化を進めるほか、施工段階でも修正に合わせて図面と情報を連動させなければいけないからです。

今までなぜそれをしなかったかというと、やはり「面倒」だという気持ちが先に立っていたからではないでしょうか。これはシステム化すれば解決できると考えます。

すでに始まっているシステム化の試み

従来の図書類は、大きな情報の塊でありながら中身を確認できない、いわばOS型の情報でした。翻って私たちが目指しているのはアプリケーション型です。基本設計図書や設計説明書などは個別に管理でき、統合された情報はBIMのプラットフォームから確認できます。従来では1行ずつリストに収められていたような細かい数値情報もデータ化し、元台帳として誰もがアクセスできるようにします。クライアントも施工者も、欲しい情報があればデータから検索してすぐに得ることができます。

「面倒」ではなく「必要な作業」として建築プロジェクトに組み込むために、私たちは情報集約システムを構築し、運用を始めています。発注図書(設計者や施工者選定に必要な要件をまとめた書類)には、プロジェクトのあり方とやり方を明記。設計や工事監理、検査など、建設生産に必要な役務・行為をすべてプログラムに反映させ、実行に対するトレーサビリティを効果的に行う。このように履歴まで残す完全なデータを揃えて「究極の伝達図書体系」をつくり 、建設バリューチェーン再構築の基盤につなげることが目標です。

このシステムが業界の新しい慣習になればプロジェクトが同時並行で進められ、専門家を必要とする複雑な作業が省力化されます。また、事業と建物という少し遠く感じられていた存在が融合し、施設データを使った新しい発想のビジネスを展開させることもできるでしょう。この構想に賛同してくださる人々は各地に増え、セミナーや講演で解説すると毎回大きな反響をいただきます。今年はさらにマーケティングを行ってこのシステムを広げる元年にしたいと考えています。

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