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2020年東京オリンピックを控えた今、次の50年を見据えた施設を 建設業界は「組み合わせ」と「柔軟性」に気づけるか〈後編〉

柔軟性を持った改修・活用はすでに始まっている

これまで経験で考えると、一番のネックは建築や改修に携わる人たちが「組み合わせ」や「柔軟性」というキーワードに気づけるかどうかです。図書館を改修したいと考えた場合、一般的には「図書館を図書館としてうまく改修できるプレーヤー」が求められ「図書館建設の実績」が重視されます。その発想の出発点から変えなければいけない段階だと思うのです。

私が提唱したい「将来のさまざまな構造に応用できる柔軟な施設」は、さまざまな場所で具現化され始めました。たとえば高知県の土佐町では廃校になった小学校校舎が転用され、地域の集い場「相川コミュニティセンター」、ITインフラを整備した「シェアオフィス相川」として運営されています。既存の耐震構造は活用して内装と設備を替え、新しい用途に合う施設に造り直した一例です。

単に施設に手を入れただけでなく、ITインフラに注目して施設を外と「つなぐ」ことも視野に入れたのが大きな特徴です。施設に多種の機能を持たせ、他地域ともつないで活用する。既存の「限られた用途の施設」を考えているだけでは得られなかった着想でしょう。

施設に対する固定化した概念を崩し、機能モジュールの集積体と考えて、それらの「分解・組み合わせ・統合」の可能性を探る。施設単体で存在させるのではなく、地域や社会とのつなぎ方を念頭に置く。自治体が持つPRE(Public Real Estate)も、企業が持つCRE(Corporate Real Estate)も、個人所有の不動産や住宅でも考え方は同じです。過去の50年同様のスクラップ&ビルドという手法に囚われず、この先の50年を見据えた柔軟性の高い施設・建造物をめざすべきです。

日本に体力がある今だから、施設転換を進めよう

施設を取り巻くインフラも今後は大きな変化が予想されます。交通機関は自動運転や自動配送でもっと変わるかもしれません。電気やガスは自由化によってまったく違う経路で届く可能性もあります。IT業界で革新的な通信技術が生まれたら設備はガラッと入れ替わるはずです。フィンテックの世界で注目されるブロック・チェーンも、そのうちインフラになっているかもしれません。これらの社会構造の変化、利用シーンの変化を許容できる施設を、私たちは造らなければいけません。

ちょうど今、多くの施設が償還時期を迎えています。建設業界は2020東京オリンピックを目前にして好況、新しい取り組みに挑戦する体力があります。そして人口のボリュームゾーンと現役世代がマッチした最後の時期です。大きな変革が実現できる条件はこの数年間だけ揃っています。この数年で私たちは「将来のさまざまな構造に応用できる柔軟な施設」の重要性を認識し、建造物として形にする算段をつける必要があるのです。

ただこれは民間企業だけで行えるものではなく、自治体や省庁も協業して地域全体・日本全体で取り組んで初めて社会に根ざした成果になります。現在、スポーツの世界ではいくつか成功例が出ています。たとえば、千葉ロッテマリーンズの球場では千葉市と協議して新しい運営制度を設け、民と官が一緒に新しい施設やコミュニティを創造する枠組みができました。今後の社会構造や変化までをも考えた動きであり、運営が始まれば単なる「球場」の機能を超えた人のにぎわいと、新しい文化が生まれるはずです。

また、千葉市の県立幕張海浜公園におけるJFAナショナルフットボールセンター(仮称)計画では県より都市公園法に基づく公園施設の設置が許可され、フットボールだけにとどまらない集客施設整備がいよいよスタートします。これは、天然芝ピッチをはじめ、人工芝ピッチ、クラブハウス、フットサルアリーナ、さらに一般客も使用できるスポーツスパ(温浴施設)も完備された新しい施設計画です。これまで使われてこなかった公園という空間を有効活用し利益を生み出そうとするこの試みも、アイドルエコノミーの一つと解釈することができます。

実現した例が一つでもできれば、これから社会に必要な施設がどんな形なのか、施設がどんな役割を果たすべきか、多くの人に知られていくでしょう。未活用のインフラ・REの潜在的な資産規模は数百兆円といわれます。今からでも実施できることはたくさんあり、施設は改修やアイデア次第でいろんな形によみがえります。皆さんも目の前にある既存施設が持っている可能性について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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