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2020年東京オリンピックを控えた今、次の50年を見据えた施設を 建設業界は「組み合わせ」と「柔軟性」に気づけるか〈前編〉

50年前の施設が次々と償還時期を迎えている

高度経済成長期に建てられた建築物やインフラ、公共施設が次々と償還時期を迎えています。いろいろな地域で県庁舎や市庁舎の建て替えが進んだり橋脚やトンネルの補修がニュースになったりするのは、まさに同時期に建てられた全国の施設がいま一気に見直しに入ったからです。社会に欠かせないこれら公共施設の今後のあり方は私たちの将来の暮らしにも直結します。

戦後日本の建設業界では、建築はスクラップ&ビルドが基本でした。古くなったものは取り壊し、更地にし、その上に新しいものを建てる。古い建築物より規模を広げ、施設に新しい技術や設備を組み込むことが一つの「進歩」だと捉えられ、数十年の間ずっと歓迎されてきました。今もほとんどの現場でこの考え方が土台になっているかもしれません。

この手法が有効だったのは「日本の人口が安定して増え、経済が発展していく」という前提があったからです。人が増えて求められる機能の増加も予想されるのであれば、古い建造物を基準にして新たに規模を広げれば需要に応えられました。しかし50年経った今、果たして同じやり方でスクラップ&ビルドを進めるのが最善だといえるのでしょうか。

すでに日本の人口は減り始め、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降は今よりさらに急な下降カーブを描いて減っていくとわかっています。少子化も進んで、15歳以上65歳未満の生産年齢人口は今後増えることはないでしょう。それなのに「既存施設をいったん壊してさらに大きな施設を建てるプロジェクト」が多すぎるのではないか、と私は感じています。

固定された施設をやめて、柔軟な施設へ変える

償還時期を迎えた建設物が抱えている問題は大きく考えて2つあります。まず、現在の耐震基準を満たしていないものや老朽化の進んだ建設物が多いこと。安全に関わる部分は必ず何らかの手当をしなければならず、改修時には外せないチェック要件です。もう1つの問題は、当時の施設構成が限られた用途だけを目的にしている点です。たとえば50年前に建てられた図書館の多くは、図書館としての機能があればよしとされました。体育館も体育およびスポーツのためだけに使えたらいいという考え方で建てられています。

しかし、今後減っていく人口と財政で高度経済成長期と同じように単機能施設を数多く維持するのは非常に難しいでしょう。同じように造れば、次の50年後もまた「古くなった」とすべてを壊し、すべてを建て直す方法を引き継ぐことになります。私はこの概念を今こそ覆すべきだと考えます。「今の需要だけを見た固定的な施設」をやめて「将来のさまざまな構造に応用できる柔軟な施設」に転換するのです。

建造物を改善する方法は、実はいろいろあります。スクラップ&ビルドはその中の一つであり、たまたまこの数十年でもっとも多く採用されてきた手法というだけです。選択しうる他の方法としては外観をそのまま活用した内部のみのリニューアルや既存の用途を変更したコンバージョン、増築・減築・除却などがあります。使われていない空間や設備を有効活用するアイドル・エコノミーも、組み合わせの一つとして必ず検討の範囲に入るでしょう。

1983年以降の新耐震基準で竣工した建物であれば今でもある程度対応可能です。すべてを壊すのではなく、使えるものは活用する。既存施設を新しい用途に転用できないか考える。費用面でも少ない負担で新しい機能を持った建造物に造り直せます。

「こういう形がいい」とがっちり固めて造られた施設はその通りにしか使えません。次世代やその先の世代の社会と合わなくなっても変更できません。そして確実に彼らの未来は私たちの想像を超えているでしょう。私たちがこれから建てる建造物は、彼らの不確定な未来も含んだ形にしなければいけないのです。



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