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新旧メディアの群雄割拠が続く今だからこそ、改めて「メディアの役割」を意識した戦略を〈後編〉

従来の延長ではなく、この先の生き残り方を示す

建屋の面から考えると、大きな設備を利用する施設、特に放送局などは設備の減価償却終了時に合わせて大規模な修繕や建て替えを行う傾向があります。新しく社屋を建てるとなると当然新しいプランニングが必要ですが、求める「設計」の内容は様変わりしました。

以前であれば、スタジオや設備状況を参考に「もっと増やす、広くする」など、既存のものを拡張する方向で設計すれば問題ありませんでした。しかし今は違います。メディア企業はもう現状のビジネスモデルでは進められないとわかっています。その中でどのように新たな手を打つかを考え、うまく運用するための建屋を設計しなければいけないのです。

もし設計コンペで「このスタジオを広くしましょう」という提案をしても、今は通らないでしょう。多くの放送局でスタジオ利用を含めた制作のアウトソーシングが広まり、現場では自前スタジオの存在意義が問われているほどだからです。求められるのは現状を認識した上での「この先どうやって生き残るか」の具体的なビジネスプランと、それを実現できる空間を組み合わせた提案です。

私たちは10年以上前からこのトレンドを予測し、業界の動向と今後を考えながらオリジナルのプランニングを提案してきました。単に建物を設計するのではなく、どう利用し、どんな目標に向けて事業を進められるか、お客様とともに知恵を絞った結果です。まったく違う業種や最新技術との連携を発案し、採用いただいたケースもあります。広い視点からの発想は、施設参謀としてさまざまな企業のコンサルティングを行って多くの意見に触れたおかげともいえるでしょう。

さまざまな業種を横断するから、できる提案がある

これは弊社に限らず、建設・不動産に携わる企業であれば可能なことでもあります。一つの業界に縛られずにいろんなタイプの企業を横断し、それぞれの業種から情報を得て、新しい組み合わせやビジネスを提案する。施設だけでなく「施設と何をつなげて新しい価値を生み出すか」を考える。今後はあらゆる場や人につながるオムニチャネル化が重要視されるので、大量情報を上手につないで生かせる施設があれば長く価値を残せます。そして建設・不動産業界に限らず、広告・印刷業界、通信社もビックデータ処理が避けられない世界になり、自らのビジネスモデルや事業モデルも変えざるを得ない、これまでにない大きな変革が訪れるのではないでしょうか。

情報ゼロの世の中が考えられないように、情報を流通させるメディア企業は今後も確実に必要とされます。数十年かけて培われたブランド力もまだまだ他の企業より抜きん出ています。主力だった広告収入が減ったとはいえ、情報を広く発信できるメディア企業の役割は独自で強力です。このメリットは建設・不動産業界でも方法次第で大いに活用できます。

私たちがメディア企業に寄り添うとき、特に意識するのは「文化・エンターテインメント・スポーツ・アートなどマネタイズが難しい分野でも、メディアを介したら産業とうまく交わることができる」という大きな可能性です。従来と違う結びつきは新規ビジネスモデルを生み、メディア企業の収益と同時に、広報が難しい分野の顧客開拓にもつながるからです。そのためにどんな活動をし、どんな技術を使うか、実装できる設計はどんな形なのか。過去の建築実績だけを権威にしてお客様のビジネスを考えるのは悪手で、私たちも常にお客様の未来の姿を予想しながら動くべきでしょう。

数年先のメディアの着地点は誰にもわかりません。しかし、それだけに可能性があり、関わる私たちも新しい考え方が求められるのはたしかです。最初に述べたように「情報」が産業を動かすエンジンであることは揺るぎません。これからのメディアをどのようにサポートするか、私たちの力もまた試されているのです。

取材・文/丘村奈央子、撮影/末安善之

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