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フィンテックから始まる技術と産業の革新 金融だけに留まらない「ブロックチェーン」の重要性〈後編〉

「ブロックチェーン」は金融業界だけのものではない

もともとはビットコインを支える概念として誕生した「ブロックチェーン」は、金融とICT技術をつなげるフィンテックの領域でよく使われる言葉です。しかし「活用の場はビットコインやインターネットバンキングなどの金融ビジネスに限られるだろう」と考えるのは間違いです。

たしかに金融市場での情報交換は取引に関することが主ですが、現在世界中で収集されるデータは多種多様に存在します。もし安全で高速に情報を共有できる「ブロックチェーン」が確立されれば、今散らばっているあらゆる分野のデータをP2P型システムに組み込むことができ、新しいビジネスの創出やイノベーションが可能になります。これらのビッグデータや個人情報をビジネスに活用する重要性に気づいた企業はすでに研究を始めています。

たとえば自動車業界では自動運転ができる「コネクティッドカー」を作りました。総務省は『平成27年版情報通信白書』の中でこれを「ICT端末として機能し、車両の状態や周囲の道路状況などのさまざまなデータをセンサーから取得し、ネットワークを介して集積・分析する車」と定義づけています。「ブロックチェーン」なしでは成り立たない技術であり、個々の情報をしっかりガードするスキームが開発されています。

山下PMC 川原

膨大なデータを取得・分析・活用する価値は、ユニクロなどに代表されるアパレル業、コンビニなどの小売業、チェーン展開する飲食業など他の業界でも変わりません。ビッグデータが安全に集められれば新たなマーケティングが進められ、AIを活用してさらに新たなビジネスモデルに変換することもできるからです。だからこそ、いち早く危機感を持った企業が続々と「ブロックチェーン」を汎用化して新たな事業につなげる道を探っています。

今はまだ「ブロックチェーン」の重要性は知る人ぞ知る状態であり、世の中では認知度が低いといえます。しかし開発の成果が社会に応用される段階になれば、一気に情報システムや暮らしそのもの、全産業の仕組みが変わる可能性があるのです。

建設・不動産業界だけが乗り遅れてよいのか

ただ建設業界や不動産業界を見ると、まだそこまで情報を活用する動きはありません。むしろ守秘義務が高い情報が集まっているだけに外へ漏らしてはいけないという旧来の考え方が主流で、「ブロックチェーン」を使って安全に共有するという発想までも至っていないのではないでしょうか。これまでは業界と関連する分野とさえつながっていれば仕事ができましたが、果たしてその状況は今後いつまで保てるのか。これからの社会は変化する暗号でどんどん鍵を変え、高度情報はすべてそれで守っていく形になるはずです。このままでは建設・不動産業界だけが取り残されかねません。

「コネクティッドカー」の例を見ればわかるように、車といっても集めて利用する情報は自動車の機能関連だけに限りません。取り巻く環境や条件をなるべく多く取り入れ、まず一元化した上で判断させています。小売業界でも商品の動向データだけでなく店舗や顧客の状況も合わせて分析し、次の手を考えています。建設・不動産業界も彼らの手法に学ぶところが多いのではないでしょうか。

顧客情報収集や経営基幹システムなどでは、従来の散在していた情報を一元化してデジタルデータとして活用し始めています。さらに一歩進むと、多くの業界でP2Pの考え方が浸透し、それぞれが「ブロックチェーン」を使って必要最低限のセキュリティを施した上で業界を超えた情報共有が行われるようになるでしょう。

数年後の世界にはデータを共有する大きなネットワークが張りめぐらされているはずです。そのとき核になる技術は「ブロックチェーン」であるのは間違いありません。将来の「皆がつながる世界」から弾かれないためにも、私たちの業界を左右する大きな技術革新として捉え直すときが来ています。

取材・文/丘村奈央子、撮影/末安善之