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事業と施設のインテグレーテッド化〈後編〉

iPhone化する施設建築

「私たちが考える究極の施設の姿は、iPhoneと同じで、かっこよくて当たり前なのです」

施設建築がiPhone化している!?

−前編では、インテグレーテッド(統合・集約)化というキーワードを軸に、日本の産業が向かおうとしている方向について伺いました。後編では、その動きとともに変化しようとしている施設建築の姿について伺います。

まず大きい話からすると、都市も地域も施設も、すべてインテグレーテッド化に向かっているといえます。人口減社会の中で街はコンパクトシティ化していますし、また施設は用途が複合化されて、一つの建物に複数の機能をもたせることが多くなっています。近年建て替えられた庁舎をみるとわかりやすいですね。たとえば、現在計画されている女川町役場新庁舎は、文化ホール、生涯学習センター、子育て支援センター、保健センターなどの機能も担っています。
参考:新庁舎等整備事業について(女川町ホームページ)
http://www.town.onagawa.miyagi.jp/hukkou/chosya_seibi.html

施設建築というのはこれまで、一つの用途を持ち、一つの問題を解決する存在であればよかったのです。それが現在は、事業運営に関する膨大な課題をすべて解決するものでなければならなくなろうとしています。経営・組織・コア事業・研究開発・新事業・財務会計・マテリアル・ロジスティクスといった、複数の要素を同時に解決することがますます事業運営に求められるようになりました。言い換えれば、ビジネスそのものがインテグレーテッド化しているわけです。それにともなって、施設運営を実現する場である施設建築に求められる役割も複合化しているのです。

iPhone施設建築膨大なソフトを個人が持ち歩き、操るためのハードがiPhone。同じように、さまざまな要素から成る事業運営を実現する場が施設建築

それはあたかも、ハードであるiPhoneと、ソフトである膨大なデータとの関係に似ています。電話、カメラ、音楽・映像、地図、スケジュール管理、金銭交換といった多様な機能を個人が持ち歩き、自由に操るための器としてiPhone本体があるわけですよね。女川町役場の例でいえば、行政サービス・防災・教育・文化・市民活動支援といったさまざまなソフトの要素があり、庁舎がそれを実現するハードということになります。

これからの施設は、事業運営が拡大していくためのプラットフォームにならなければなりません。その鍵を握るのが、膨大なデータを個人が自由に操るためのiOSのように、建物に関する種々のデータを運営者が扱うことのできるシステムではないかと思います。建設プロジェクトが完了すると、実物の建物に加えて、竣工図書に代表される建物のデータが形として残されるわけですが、これを効率よく管理できるシステムがあれば、施設運営にとって非常に有用なツールとなるはずです。BIMやBEMSなどの現状は独立しているテクノロジーを連携させ、資産管理、運営管理、設備制御などを一元的に処理できるようなしくみを整備できないかと考えています。

iPhoneを買う人が欲しいのはiPhone自体ではない

−建物がiPhone化しているということですね。

私たちが考える理想の施設建築の姿は、iPhoneと同じで、かっこよくて当たり前なのです。スマホを買う人は、ハードそのものが欲しいわけではなく、便利で楽しいソフトを求めて買うわけですよね。いくらiPhoneのプロダクトデザインや製造技術が優れていても、それが目的になることはめったにありません。

同じように、建設プロジェクトを進めるお客さまが求めているのは、かっこいい建物自体ではなく、ソフトの部分です。創造的な研究開発を推進する、流通を効率化する、市場環境変化に耐えうる組織を構築する、などといった事業運営の課題解決です。

山下PMCが見つめているのはハードそのものではなく、その裏にあるソフトです。お客さまの施設参謀として課題解決に貢献し、ひいては社会を幸せにするお手伝いをすることが目標であって、そこにかっこいい建物が当然のようについてくる、というのが理想なのです。

−確かに近年は複合施設が多く、単純に「商業施設」とか「公共施設」という枠に収まらないものが増えています。

複合施設が増えてるのは、世の中の流れです。建築の専門家からすれば建築だけが複合化しているように見えるかもしれませんが、むしろ建築は遅れているぐらいに、産業のインテグレーテッド化が進んでいます。

そうなると、必要とされる建物の用途や構成も、既存のものとは違ってきます。今まで考えもつかなかったような施設が生まれる可能性もあるでしょうね。とくにITCネットワークや人工知能がどのように建物を変えていくかは、今後の大きなテーマになるでしょう。電気や空調などの建築設備だけでなく、セキュリティや清掃も含めた運営全体を完全自動制御するシステムも将来現れるのではないでしょうか。現実にはまだそこまで進んでいませんが、建物の進化の方向を見るとそんな予感はあります。

テクノロジーが進化する一方で、住まいなどの空間自体を楽しむことに意味のある建物や、歴史的・文化的な価値を持つ建物に関しては、シェアリングエコノミーやアイドルエコノミーがうまく機能して、活用が進んでいくような気がします。予測に過ぎませんが、古きよき旅館が何らかの形のシェアによって運営を続けるといったことも起きるかもしれません。

山下PMC vs.創造系不動産のトークイベントを開催します

−最近のニュースを教えて下さい。

2017年3月14〜17日にフランスのカンヌで開催されたMIPIMに参加しました。世界中から多くの投資家、自治体、企業などが集まる不動産の見本市として、毎年開かれているものです。山下PMCもさまざまな自治体や企業とともに、オールジャパンの一員としてブース展示などに参加しました。

MIPIM開幕の前日に日本の参加者の決起集会が行われたのですが、私はその締めの挨拶をさせていただきました。増加するインバウンドに対して宿泊施設や観光施設を整備するだけではなく、インバウンドを巨大な内需を回すスターターにする必要がある、そのための方策をここにいる全員で考えなければいけない、という内容のことをお話ししました。なかなか好評で、オールジャパンで日本を盛り上げたいという気持ちは伝わったかなと思います。

−6月に川原社長のトークイベントが予定されていますね。

2016年6 月3 日、高橋寿太郎氏とのトークイベント「施設参謀」を開催します2016年6月3日、高橋寿太郎氏とのトークイベント
「施設参謀」を開催します

書籍『施設参謀』の出版記念として、建築家と協同した不動産コンサルティングで知られる、創造系不動産代表の高橋寿太郎さんとトークイベントを開催します。「『最大最強の施設参謀』と『最小最弱の施設参謀』のマッチメイク」というすごいサブタイトルがついていますが、共に施設参謀として、お客さまのプロジェクトを陰で支える2人の対談です。

ゲストとして、それぞれのお客さまも出演してくださいます。
山下PMCでは前鳥居薬品役員の篭橋雄二様、創造系不動産ではCOEDOビールで有名な協同商事代表の朝霧重治様をお迎えし、プロジェクト事例をご紹介します。実際に施設参謀を利用したお客さまが思いを語って下さる貴重な機会でもありますので、経営者、施設運営担当者の皆様はもちろん、発注者の「参謀」という仕事に関心のある建築業や不動産業の方にもぜひお越しいただきたいと思います。

*詳細・お申し込みは、イトーキ東京イノベーションセンター SYNQAホームページにてご案内しています。
 http://www.synqa.jp/event/3718/