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事業と施設のインテグレーテッド化〈前編〉

世界を制するビジネスはどこから誕生する?

「今後の日本を担うような新しいビジネスも、インテグレーテッド化の中から生まれるのではないでしょうか」

インテグレーテッド化とは?

−これまで話を伺う中で、川原社長からたびたびインテグレーテッド化という言葉が出てきました。今日はこの言葉について聞きたいと思います。

インテグレートは「統合」「集約」という意味です。化学反応のような革新的な変化というニュアンスを伝えるには、単なる統合や集約という言葉では物足りないと思い、オーディオ製品のインテグレーテッドアンプ(諸機能を集約したアンプ)から着想を得て、使い始めた言葉です。

山下PMCでは、「7つの戦略」というものを掲げています。これは私たちが事業を通じて社会に貢献したいテーマを表したものですが、同時に、日本の社会・経済が今後進んでいくであろう大きな潮流を示したものでもあります。この潮流に率先して飛び込み、本物の解決を提供できるコンサルティング・ファームを目指したいという思いを込めました。この「7つの戦略」のキーワードが、「インテグレーテッド化」です。

「7つの戦略」は、山下PMCが貢献したいテーマを示すと同時に、日本の社会・経済が進むであろう大きな動きを示したもの。キーワードは「インテグレーテッド化」「7つの戦略」は、山下PMCが貢献したいテーマを示すと同時に、日本の社会・経済が進むであろう大きな動きを示したもの。キーワードは「インテグレーテッド化」

日本の社会を動かす4つのインテグレーテッド化

−「7つの戦略」とインテグレーテッド化について教えてください。

日本の産業界には現在、インフラや施設建築のあり方を大きく変えうるインテグレーテッド化、つまり統合・集約へ向かう再編の流れが4つあると考えています。それが1〜4です。

まず「1 技術先進立国の堅持」ですが、現在最も世界にアピールでき、今後も日本の社会・経済を牽引していくであろう産業は、紛れもなく製造業です。ところが経常収支の内訳を見ると、貿易収支は赤字になり、代わりに所得収支が黒字化しています。技術先進立国であり続けるために、製造業はいわば貿易収支型から所得収支型へとパラダイム変換を遂げようとしているのです。これにともなって、各企業ではCRE(企業不動産)を再編し、統合・集約に向かう動きが進んでいます。
参考:製造業のCRE戦略最前線

次いで日本を支える動きが「2 クールジャパンの国づくり」です。経常収支の担い手として、観光収入がようやく注目されるようになりました。観光立国化に向けた動きはこれからも加速し、さらなるインバウンド獲得のために、海外に向けた日本の文化発信が活発になるでしょう。同時に国内では、ホテル・旅館はもちろん、交通インフラ、商業施設、娯楽施設といった観光資源の整備がますます進んでいます。いずれは、こうした施設群が統合・集約された複合施設ないしは地域が生まれると考えています。
参考:「面」の観光が地方創生のカギ

「3 国内インフラ・RE(不動産)再構築と強靭化」は、とりわけ地方においては重要なテーマです。PRE(公共不動産)にせよCRE(企業不動産)にせよ、高度経済成長期以降に建設されたインフラや施設が、まもなく一斉に償却期間を迎えます。これから社会が縮小に向かう中で、所有不動産も統合・集約に向かわざるを得ません。自治体にとっても企業にとっても、ストック戦略は生き残りを左右する共通の課題になるはずです。
参考:CRE・PRE戦略はなぜ必要か

「4 健康長寿社会の実現と少子高齢化対策」は、少子高齢化社会がいよいよ本格化するにあたり、「医療・介護」という分野に包括される範囲が、対処医療から予防医療、さらには健康増進やスポーツ振興にまで拡大しようとしています。今後おそらく、医療・介護と、スポーツ振興・健康増進・娯楽・保育・教育など周辺分野とのインテグレーテッド化が進み、新たなビジネスや施設が生み出される流れになると思います。医療・介護問題というと、出費を抑えることばかりが注目されがちですが、この分野そのものが収入源にならなければなりませんから。
参考:医療・介護ビジネスの明日

このような4つのインテグレーテッド化と同時に、4つの分野相互のインテグレーテッド化も進んでいくでしょう。それによって施設やインフラの流動化が進み、新たな進化を遂げるはずです。そしてこのインテグレーテッド化という潮流は、施設やインフラだけに限らず、ビジネスや行政など全てに及ぶと考えています。未来の日本を担うような新しいビジネスも、その先に生まれるのではないでしょうか。

建設分野にも改革の波が訪れている

−5〜7はどういうことでしょうか。

「5 メディアおよび情報流通の変革」「6 金融ビジネスの変革」は、メディアと金融の世界で起きている変革を表します。この動きは1〜4のインテグレーテッド化を後押しする役割を担うと考えています。

メディアの世界では、情報通信・ICT産業が新たな情報流通の担い手として台頭している今、既存のマスメディアは広告収入に代替しうる新規事業を開拓していますし、地方の放送局や新聞社は、自社の生き残り戦略と地域の生き残り戦略とを合わせて模索しています。

金融分野ではフィンテックが進み、また都市銀行・地方銀行とも再編の動きがある中で、各行とも目指すべき方向を模索しているところです。地方銀行は特に顕著で、自行の事業とともに地域の産業を盛り立てる取り組みを進めています。

建設業界にも、変化の波は押し寄せています。それが「7 建設生産制度改革へのチャレンジ」です。改正品確法によって公共事業における新しい建設推進方式が浸透していき、一方で都市部では、容積率緩和の動きがあります。建設生産システムの自由度が上がって、これまでにない新しい事業体系のための新しい施設を実現しやすくなる土壌が育まれていくでしょう。

インテグレーテッド化が生む次世代のビジネス

−先ほどのお話にあった「インテグレーテッド化の先に生まれる新しいビジネス」とはどのようなものでしょうか。

それは正直なところ、まだ私にも予想がつきません。ただ、現在うごめいているさまざまなビジネス変革の中にヒントがあるのではと感じています。

インテグレーテッド化が進むと、想像もつかなかった次世代の事業体系や施設体系が誕生する!?インテグレーテッド化が進むと、想像もつかなかった次世代の事業体系や施設体系が誕生する!?

たとえば、AirbnbやUberに代表されるシェアリングエコノミーは、世界のビジネスモデルに大変革をもたらしました。将来的には大前研一さんの言うアイドルエコノミーに発展する可能性もあるかもしれません。Airbnbは個人住宅が中心ですが、公共にも民間にも余剰の施設はたくさんあるのですから、これを活用するビジネスが生まれてもいいはずです。

また、BtoB、BtoC、CtoCの相互ビジネスを可能にするプラットフォーム産業が拡大していく可能性も考えられます。たとえば、窓口業務を担えるまでに人工知能が進化すれば、LINEが構築したコミュニケーションのプラットフォームみたいに、企業や個人が人工知能を活用するためのプラットフォームが生まれそうですよね。ひょっとすると、GoogleやAmazonを越えるようなまったく新しい事業体系が誕生したりするかもしれません。

また、移動と交流から「対流ビジネス」が生まれる流れもあると思います。交通インフラ・物流インフラ・ICTインフラなど移動手段の整備が進むにつれ、観光・商業・農業・教育・医療・居住といった広い分野で、都市と地方の人が互いに刺激し合うことによるビジネスが発生するはずです。たとえばリニア新幹線が開通すれば、2地域居住がさらに現実味を帯びてきます。都市と地方の人や物の交流が活発になって、新たな事業体系を育む土壌になるでしょう。

−現在の私たちには想像もつかないビジネスが世界を席巻する可能性があると。

それにともなって、施設建築の姿も変わっていくはずです。用途も構成も既存のものとは違った、未来の施設体系が生まれることになるでしょう。山下PMCはこの潮流の先を見つめ、次世代に適応する新たな事業体系や施設体系を、お客さまの施設参謀として実現できる存在でありたいと思っています。

日本という国はこれまで、保有する資産の割にはあまり利益を生み出せていませんでした。けれどもこの先はインテグレーテッド化を通して、持てる施設・インフラをくまなく経済活動に変え、いわば国全体がROA(総資産利益率)を上げていくことを目指すべきだと思います。将来の人口減を考えると、日本が先進国であり続けるには、一人あたりGDPを高めていくしか手立てがないのです。