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CRE戦略マガジン

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インフラ・施設の再構築と強靭化〈後編〉

「稼げる施設」が日本を救う

「国内外から収入を得られる事業モデルを積極的に考えて、PRE戦略と統合させるといった施策も必要になってくるでしょう」

PRE戦略は地方創生のカギ

−−前編では、CRE・PRE戦略が注目されるに至った背景と現状について伺いました。後編では、CRE・PRE戦略の課題をもう少し掘り下げて聞きたいと思います。

企業にとっていかに収益を上げ、次代を生き残っていくことが最重要課題であることは言うまでもありませんが、同様に自治体にとっても財政破綻しないよう自立できるということは主要な課題です。

自治体の財政というと支出を節約する側の施策ばかりが話題にされがちですが、これからはますます医療や介護にお金がかかるのですから、医療介護制度を維持するだけの収入を確保することも考えなくてはいけません。観光振興や産業・交通の拠点整備など、国内外から収入を得られる事業モデルを積極的に考えて、PRE戦略と統合させるといった施策も必要になってくるでしょう。

−−CRE・PRE戦略いずれにおいても、施設がお金を生み出す事業モデルを考えることが生き残りの秘訣ということですね。

PRE戦略は地方創生の鍵になります。地方創生には産官学が一体となることが絶対に必要ですから、地方のPREとCREは連携して構築されていくべきだと思っています。

自治体が収入を得られる事業をPRE戦略に組み込むことも必要 自治体が収入を得られる事業をPRE戦略に組み込むことも必要

ではこれからの日本において、収益を生み出す新しい施設モデルが生まれる可能性がある分野はどこか。それは日本が得意とする分野であると私は思います。日本の得意分野は大きく3つあります。1番目は、日本の魅力を発揮できる領域。たとえばメイドインジャパンとしてブランド化された高品質技術や、近年世界でも脚光を浴びている文化的コンテンツや観光などです。2番目に、世界一の長寿国であること。3番目に、建築の優れた環境性能やレジリエンス(回復力)です。こうした得意領域が互いに影響し合い、インテグレーテッド(集約・統合)化したところに新しい事業体系と施設体系が生まれ、次世代の方向を示唆するのではないかと思っています。

日本の得意技から次世代事業が生まれる

−−3つの得意分野について伺います。まず1つめの「日本の魅力発揮」分野で生まれる可能性がある次世代施設とは、どのようなものでしょうか。

CRE・PRE戦略には「稼げる施設」を考える発想も大切。日本の得意分野を生かして収益を上げるモデルを CRE・PRE戦略には「稼げる施設」を考える発想も大切。
日本の得意分野を生かして収益を上げるモデルを

経常収支のうち、長い間日本経済を支えてきた貿易収支は2011年以降赤字となり、代わって所得収支が順調に伸びてきました。これは製造業をはじめとするグローバル企業にとって、市場と商品が変化したことを意味します。新たな事業モデルを支える、イノベーションを生む施設体系が必要とされているのです。

同様にこれからの日本を支える可能性があるのが、前回お話ししたように旅行収支です。観光国としての日本のポテンシャルからすればインバウンド(訪日外国人)の数はまだ圧倒的に少ないですし、宿泊施設やインフラにもまだ整備の余地があります。ただし施設単体の戦略ではなく、官民一体となった地域戦略や、日本独自のインテグレーテッド化戦略の中から次世代を担うモデルが現れるでしょう。

−−2つめの「健康長寿の国」については次回詳しく聞く予定ですので、3つめの「環境性能やレジリエンス」について伺います。

日本の建物は高い環境性能を実現していますし、災害に対し高いレジリエンスも持っています。それだけで収入を生み出すものではありませんが、施設の耐用年数をより長く、運用コストをより低く、リスクをより少なくしますので、事業の安定的な継続に役立ちます。

−−地震国の日本では、BCP(事業継続計画)を支えてくれる施設は魅力的だと思います。

災害時に何より重要な施設の役割は人間を守ることですが、次に重要なのは事業自体が継続できることです。その次が施設の資産価値が低下しないこと、最後に施設運営管理の機能が低下しないこと、という順番です。この考え方を施設に落とし込むことによって、事業主の策定するBCPを施設として体現することができます。

でも、まずは少子高齢化社会に向かいながらも事業が成り立つ施設の姿を示すほうが先でしょう。事業が成り立たなければ災害へのレジリエンスを発揮する場もありませんよね。

世界に売り込める日本の医療介護・教育・農業

−−日本の得意分野がインテグレーテッド化したところに生まれる次世代施設とは、一体どんなものなのでしょう。

どんな姿をしているかはまだ私にも見えませんが、既存の業種や用途ごとにそれぞれ新しいタイプの施設が現れ、一つの大きなムーブメントを形成して、日本の施設体系が変わるぐらいの大きな影響をもたらすのではないかという予感がしています。世界で戦える事業を創造するには外国の真似をしていてもだめで、日本の得意分野に礎をおきながら日本人の気質や国土の特性を生かし、日本ならではの体系を発展させる必要があるのではないでしょうか。

−−この動向に対して山下PMCはどう関わろうとお考えでしょうか。

山下PMCはこれまであまりCRE・PRE戦略とは縁のなかったお客さまに光を捧げたいと思っています。既存のデベロッパーや不動産会社があまり目を向けることのなかった実需用途の施設をお持ちのお客さまに対して、生き残るための理想的なCRE・PRE戦略を提供し、さらにはグローバルに展開する応援もしたいと思っています。岩盤規制と言われてきた医療介護、教育、農業といった業種のお手伝いも積極的にしていきたいと思っています。世界で戦えるだけの実力は十分あるのですから、どうすれば施設を通してそれを実現できるかを一緒に考えていければと思います。

それができる会社であるには、言ったことを言った通りに実現する能力を持っていなければなりません。そのために私達は施設建築・建設に関する専門技術を日々磨いています。美しい言葉を並べるだけのコンサルタントでなく、プロジェクトが達成されるまでお客さまと一緒に汗をかく、泥臭いコンサルタントであり続けたいと思っています。

(取材・文 たかぎみ江)

次回11月中旬『次号前編』更新予定