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クールジャパンの国づくり〈前編〉

インバウンド施策は50年の計で

「目先の観光客を追うのではなく、地方が生き残るための基盤をつくる契機と捉えるべきです」

増加の一途をたどる外国人観光客の姿が、連日盛んに報道されている。インバウンド(訪日外国人)の経済効果には企業のみならず各自治体も大いに期待を寄せ、停滞する地域経済の打開を狙っている。観光を一過性のブームで終わらせず地方創生への礎とするには、国土の姿はどのように変わらねばならないのか。ホテル等のCM(コンストラクション・マネジメント)業務を通じて「クールジャパンの国づくり」を目指す、山下PMCの川原に聞く。

日本の稼ぎ頭が交代した?

−− この数年、街に外国人観光客の姿が目に見えて増えました。

日本の経常収支の内訳の中で、貿易収支は長らく黒字でした。国外からお金を稼ぐ手段といえば、輸出だったわけです。それが2011年以降、貿易収支は赤字続きです。国内で製造し海外で販売する、という外貨獲得のモデルがもう成り立っていないことになります。では何が代わりに日本を支えているか。それは所得収支です。たとえば海外子会社からの配当収入や、特許や研究に対するライセンス料などの形で入るお金です。

平成27年6月財務省発表 国際収支状況(速報)

もう一つ、これから日本を支えることができるかもしれない収支が出てきました。旅行収支です。2014年度は55年ぶりに旅行収支が黒字になりました。日本人が国外で使った金額より、外国人が日本に来て使った金額の方が上回ったのです。政府のビジット・ジャパン・キャンペーンやクール・ジャパン戦略が功を奏してきたというのもあるでしょうし、webやSNSが普及して、本当の姿が瞬時に世界に伝わるようになったことも大きいでしょう。日本の良さが多面的に理解されるようになってきたのだと思います。ぜひ日本に行ってみたいと思う海外の人が増えましたよね。

−− 日本を訪れる人はこれからも増えそうですね。

政府は2020年までに2000万人の外国人観光客を実現することを目標に掲げていて、2015年の訪日外国人は1400〜1500万人にのぼる見込みと言われています。でも私はこの数字は日本のポテンシャルに比べたらまだまだ少ないと感じています。陸路で来日できないという不利はありますが、強気で言ってしまえば、観光大国であるフランスやスペインにも匹敵するものを本来は持っていると思いますよ。

田園風景の「静かな開発」が観光客を惹きつける

−− そのポテンシャルを最大限に発揮して日本を観光立国とするには、ある程度規模の大きいハード面の投資も必要になるかと思います。

インバウンド効果は都市と田舎のどちらも潤す可能性を持っています。そのためにはまず、日本に来る人を増やすには空路と海路を増便しなければなりませんから、空港や港湾をはじめとする交通インフラの整備は必須になります。

幸い、都会と地方には異なったニーズがあります。都市部ではすでに多くの観光客がさまざまな楽しみ方を見出していますが、ラグジュアリーホテルなどまだこれから強化すべき部分もあります。これまで日本ではあまり高級ホテルや高級リゾートの層が厚くなかったのですが、大衆文化から高級路線まで多面的なおもてなしができるようになれば、観光都市としての大きな強みになるでしょう。

一方で田舎においても、大自然と人里の間に形成された里山の景観が注目されるようになってきました。人の生活風景と自然の風景がマッチした、美しい田園風景に惹かれてやってくる外国人も増えつつあります。潜在層も多いでしょう。これを地方創生への手がかりにしない手はないと思います。文化や食と併せて総合的に地域独自の価値を発信する、「静かな開発」のような戦略が求められてくるのではないでしょうか。

田園風景の「静かな開発」が観光客を惹きつける

インバウンド対応は生き残り戦略と併せて

−− インバウンドの経済効果はどの地域も期待しているところだと思いますが、観光はともすると一過性の現象で終わってしまいがちです。確かな地方創生へとつなげるにはどうすればいいでしょう。

インバウンド効果のみでは日本を潤すだけの力はありません。少子高齢化による税収減が進み、どの自治体も財政が厳しくなろうとしている中、この外需を起爆剤として内需を動かす必要があります。目先の観光客だけを追って宿泊施設や観光施設を建設するのではなく、地方が生き残るための基盤をつくる契機と捉えるべきだと思います。

というのも、1960〜70年代の高度経済成長期に建設されたインフラや施設が、これから一斉に償却期間を終えます。維持するにせよ廃止するにせよ、あと数年のうちに決断しなければなりません。切り替えの時期である今こそ、次の50年に向けた大きな方向性を決めるチャンスです。観光客への対応策と同時に、どんな社会を目指しどんなストックを未来に残すのか、PRE(公共不動産)戦略・CRE(企業不動産)戦略を含めた総合的戦略を考えなければならないのです。

−− 山下PMCとしては今の状況をどう捉えていますか。

日本は工業国というイメージを世界に持たれていますが、これを本当の意味での「成熟した先進国」というイメージに切り替えていくことはこの先日本が生きる道の一つではないかと感じています。山下PMCは全国各地のホテルや公共施設のCM(コンストラクション・マネジメント)業務を実施しており、これを通じて日本の良さをさらに深化させるお手伝いをしていきたいという思いで、「クールジャパンの国づくり」を戦略の一つに掲げています。