週刊 施設参謀 週刊 施設参謀

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CRE戦略マガジン

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技術先進立国の堅持に向けて〈前編〉

製造業のCRE戦略最前線

「インテリジェンスをキーワードに、施設の集積化を図る動きが進んでいます」

新技術の登場によって市場の動向がめまぐるしく変化する時代を勝ち抜こうと、製造業各社にCRE(企業不動産)戦略を見直す動きが進行中だ。こうした状況の中、山下PMCでは「技術先進立国の堅持」を戦略の一つに掲げ、日本のものづくり支援を謳っている。製造業にとってのCRE戦略の課題はどこにあり、何を目指しているのか。CM(コンストラクション・マネジメント)専業会社である山下PMCは、製造業各社の抱える課題にどのようなソリューションを提供できるのか。

市場の荒波を乗り越えるためのCRE戦略

−− 今日は製造業企業で起きているという、「ある変化」についてお話いただきます。いったい何が起きているのでしょうか。

いま製造業の各社で、CRE(企業不動産)戦略を見直す動きが進んでいます。CRE戦略というのは説明するまでもないかもしれませんが、保有する土地や建物などの不動産を合理化すべきところは合理化し、有効活用すべきところは活用して、企業価値を向上させるための経営戦略です。

−− なぜ製造業でCREを再編する動きが起きているのでしょう。背景には何がありますか。

近年は新しい技術の登場によってある市場が突然拡大したり縮小したりするようなことが起きる時代になりました。デジタルカメラとフィルムカメラ、スマートフォンとガラケーなどがわかりやすい例です。そうなると、一つの製品の浮き沈みが企業の存続そのものを左右することにもなりかねません。そこで企業はこれまでの経営手法を見直して、変わりゆく世の中のモードに即応できるように会社体系や事業体系を再構築しようとしています。その一環にCRE戦略があるのです。

管理・R&D・生産開発・教育機能を統合し、ブランディングを司る施設に

−− 製造系企業のCRE戦略の課題とは何でしょう。

製造業といっても自動車、工作機械、医薬、医療機器、精密機器など多岐にわたりますが、共通する問題意識があります。それは経営資源を集約したいということです。これまでは本社機能とか管理、研究開発、生産、教育というように、機能が各地に分散していることが一般的でした。たとえ同じ敷地内にあっても、研究開発棟とか物流棟という形で別個に配置されがちでした。それを「インテリジェンス」をキーワードにして、一体施設として統合集積化を図る動きが進んでいます。

−− インテリジェンスとは何でしょうか。

インテリジェンスというのは知財や戦略的情報、及びそれを推進する機能を総称します。たとえば管理機能、R&D機能、生産開発機能、人財養成・教育訓練機能などのことです。これらの機能をR&Dおよびプロトタイプ生産センターのような形で本拠地に統合・集積し、会社の宝というべきブランディングを司る施設と位置づける例が見受けられるようになりました。たとえば生産機能と研究開発機能を統合した上で、顧客を招いてのコンベンションや生産のデモンストレーションなどができる仕掛けを盛り込み、企業のブランドを顧客に発信できるような施設です。

日本の企業文化に合ったオフバランス化

−− 全国展開する工場や店舗なども統合・集積されようとしているのですか。

生産・販売については、「必要なものを必要なときに必要なだけ」という考え方はこれまでと変わりません。できるだけ消費地の近くに拠点を配置しておいた方がいいわけです。

でも一方で、財務上は「持たない経営」に近づけたほうが健全だと判断されます。CRE戦略の基本には、持てる資産を軽くしてROA(総資産利益率)を向上させ、収益性を上げるという目標があります。極論すれば生産・販売拠点は自前で持たず、先ほど挙げたようなコア機能を集約した施設だけを保有して、ノウハウを売って利益を上げることができれば数字の上では理想的なわけです。実際、いま海外のホテルブランドが日本で展開するときには、直轄所有方式ではなく、FC(フランチャイズ)&リース方式やMC(マネジメントコントラクト)方式を採用しています。IFRS(国際会計基準)を適用している企業はそうせざるを得ないのです。

−− 日本でも生産・販売拠点に関するオフバランス化が進行しているということでしょうか。

日本企業ではここまでドラスティックな転換が行われているわけではありません。やはり風土や考え方の違いがありますから。そもそもCRE戦略の目的は企業価値を上げることであって、何でも切り離すことではありません。ただ国内でもIFRSを導入する企業は増えていますから、日本の企業文化に合った形での、無理のないオフバランス化に向かおうとする動きはあると思います。

国内企業はアメリカやドイツの企業に比べるとROA(総資産利益率)が低い。この数値を向上させ、効率的に収益を生み出すことがCRE戦略の課題。 国内企業はアメリカやドイツの企業に比べるとROA(総資産利益率)が低い。この数値を向上させ、効率的に収益を生み出すことがCRE戦略の課題。

−− 山下PMCはこのような製造業でのCRE戦略の動向をどう捉えているのでしょうか。

当社はこうした大きな意味でのお客さまの事業戦略を施設戦略に落としこんで、実現化をめざす業務を行っています。お客さまの一番身近にいる施設参謀とお考え下さい。わが社がめざす7つの戦略のうちの1つに「技術先進立国の堅持」があります。製造業を取り巻く社会・経済の動向を押さえながら、お客さまが向かおうとする未来を一緒に見据え、お客さまの会社や製品が国際的に競争力を発揮するお手伝いをしたいと思っています。