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山下PMCのCSV実践〈前編〉

施設でCSVを実現する方法

「市場も商品も変わったわけですから、施設も今までと同じではいけません」

近年、ビジネスの場で注目されているCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という概念。事業を通じて社会問題の解決と企業的価値を同時に実現するという、経営学者マイケル・ポーター氏が提唱する新しい経営の考え方だ。山下PMCではCSVをどう解釈し、どう実践しているのか。「CSVという概念は福音のように感じた」という川原に聞いてみた。

CSR(社会的責任)の矛盾を解消するCSV(共通価値の創造)

−− 今回のテーマはCSVということで、山下PMCではCSVをどう解釈しどう実践しているのか、お話を聞きたいと思います。

まずはCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の話から始めましょう。山下PMCでは、施設づくりを通じてお客さまの事業創造のお手伝いをする仕事を多く手がけています。その際、お客さまの会社で重視するCSRの要素を、施設に反映させることに取り組んできました。たとえば地域社会への貢献、景観の形成、環境対策、BCP(事業継続計画)、ステークホルダーへの説明責任、コンプライアンス、IR(投資家向け広報)活動といったことです。こうしたテーマをどのように施設に盛り込むか、お客さまと一緒に考えたり、提案したりしてきました。

けれども経営者にとってCSRへの取り組みというのは、どうしても慈善事業のようなものと捉えられがちです。そもそも企業というのは、事業を通じて利益を上げ続けていくことが最大の使命ですから、社会的責務を果たすことは、利益を出す活動とは別物として考えられることもしばしばです。

−−確かに、経済的価値と社会的価値は相反するイメージがありました。

でも、企業にとって利益第一というのは確かにその通りではあるのですが、一方で企業は社会貢献もしていますよね。事業用施設は社会資産を形成していますし、地域や日本や世界全体の雇用も創出しているでしょう。私は常々その点に矛盾したような気持ちを抱えていました。ですからマイケル・ポーター氏が2011年に提案したCSVという概念は、福音のように感じました。

財務諸表に貢献し、社会的責任を果たす施設づくり

−− CSVは「共通価値の創造」または「共有価値の創造」と訳される言葉です。どのように受け取られましたか。

利益追求と社会課題の解決は相反するものではなく、両立させることで企業はむしろ競争力を高められるという考え方です。企業の価値と社会にとっての価値を、事業によって共有させるということですね。私たちの会社もCSRをこのような考え方で捉え、お客さまの企業の利益と社会的責任とを両立させるように活動しようと思いました。

−− 山下PMCはCM(コンストラクション・マネジメント)の会社です。CSVの精神である「利益追求と社会貢献との両立」を、どうやって施設において実現するのでしょう。

企業経営を測る指標といえば、財務諸表ですよね。PL(損益計算書)は利益の状況を判断するもので、BS(貸借対照表)は資産の状況を判断するものです。ですから事業用の施設はまず、財務諸表の数字に貢献するものでなくてはなりません。つまり、利益を出し続けてPLに貢献し、資産価値を上げてBSに貢献するということです。さらに、そこに社会的責任CSRが加わります。お客さまが事業用建物に求めているものはこの3つの達成であると、私たちは捉えています。

−− 利益を出し続け、資産価値を上げ、社会的責任を果たす。施設がこの3点を満たすことで、顧客のCSVすなわち共通価値の創造を実現できるということですね。

いえ、私たちの目標はさらにその先にあります。「企業の目的は顧客の創造である」というドラッカーの言葉を借りれば、お客さまの目的はあくまで事業を成長させ、「顧客の創造」をすることなのです。施設はあくまでもそれを産み出す基盤でしかありません。「顧客の創造」へのフローを施設によって達成するための計画策定と実践、それが本来のPMrやCMrの役割だと思っています。

山下PMCのCSV実践〈前編〉

新しい市場と商品を生む、新しい施設の姿とは

−− 「顧客の創造」へのフローを施設によって達成するというのは難しそうに聞こえます。たとえばどのようなことでしょうか。

製造業をはじめ、ものをつくる業種に共通して見られる近年の動きとして、以前は生産・管理・研究開発と分かれていた部門が、インテリジェンスという言葉をキーワードに再編成されようとしていることが挙げられます。研究開発データ、知財、人財、顧客サービスなど各部門の情報をインテリジェンスとして統合しようとする動きです。

一方、生産方式については「必要なものを必要なときに必要なだけ」というやり方は今までと変わりません。グローバルに展開する企業であれば、世界のあらゆる地域で「必要なものを必要なときに必要なだけ」を実行することになります。

となると、生産と販売は海外の消費地に近づけたいし、インテリジェンスの集積地は国内に置いておきたい、ということになりますよね。でも今までの施設はそれに合った体系になっていませんでした。では、この新しい施設はどんな姿をしていて、どうやってつくり出すか。そういうことを、日夜われわれはお客さまと一緒に考えています。

−− 製造業の事業スキームが変わってきたので、会社の施設もそれに合わせて変えていくと。

昔は海外からお金が入ってくる手段といえば、輸出でした。日本で製造し、海外で販売するというモデルです。ところが今は、海外の子会社の利益や、研究に対するロイヤルティという形で本社にお金が入るようになっています。市場も商品も変わったわけですから、施設も今までと同じではいけません。

さらに言えば、本当は国の制度も変わらないといけませんよね。変わらないから、いくら円安になっても貿易収支が改善されないんです。施設だけでなく法律も、現状に合う形で見直されなければ。