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2015年度を占う〈前編〉

企業と自治体があと50年間生き残るための投資戦略

「次の50年に向けての設備投資戦略とインバウンド戦略を、地域としてどう考えるかが問われる時を迎えています」

アベノミクスが推進される一方で消費税が増税され、景気回復の足取りが重くなったようにも見えた2014年度。2015年度の日本経済はどうなるのか。設備投資はどこへ向かうのか。急増する外国人観光客が示唆する、地方生き残りのチャンスとは。来たるべき超少子高齢化社会に向けて、今すべきこととは何か……。川原が2015年度の経済と社会の動きを予想する。

インバウンドを座して待っていてはだめ

−− 年度の切り替えのタイミングです。2015年度はどんな1年になりそうでしょうか。川原社長の展望をお聞きしたいと思います。

2014年末の総選挙で、今後4年間は現政権が維持され、現在の成長戦略がこのままの路線で進みそうだということが見えてきました。ムーディーズやスタンダード&プアーズでは日本国債が中国や韓国より下に格付けされていますが、日本は社会基盤がしっかりしているので、消費はともかく投資に関してはそれほど憂う必要はないと私は思っています。建設価格が高騰しているため収益事業は成り立ちにくい状況ですが、実需用途のものに関しては旺盛な投資意欲があって、しばらく堅調に推移するだろうと思います。

建設分野に関しては、復興需要とオリンピック需要に支えられて、しばらくは安定感があります。その中で新たな事業の芽がいくつか出てこようとしています。単に利益が上がるというだけではなくて、これからの日本の基盤づくりにつながるような、新しい価値を創造する可能性を秘めた事業ということです。

−− 新たな事業の芽とは、どのようなものでしょうか。

まず、インバウンド(訪日外国人)の波が押し寄せていることです。どこの国でもかつてないほど日本が文化的に注目されていて、日本に行きたいという気運が醸成されています。日本に来て良さを体感してもらって、日本の本来のいいところ、クールジャパンを世界に還元していく好機ですよね。観光立国化という枠に収まらない、日本を世界に売り出すチャンスが訪れています。でも、このまま座して待っていてはチャンスも消えて失われるだけです。真剣に対応しなければいけません。

まずはインフラ、特に空港をきちんと整備すること。それから地震に対して安全だと胸を張って言える国であることです。日本へ入国するルートは、ほぼ空路です。日本に行きたいと思う外国人が増えたところで、飛行機の便が増えなければ、日本に来る人は増えません。拠点空港を国際空港にして、滑走路も含めた整備が必要でしょう。政府もその点には力を入れていて、空港から各地につながる道路、たとえば圏央道などを急ピッチで整備しています。

それから今、外国人観光客が日本を周遊するゴールデンルートは3〜4本ぐらいしかありません。たとえば東京から入って箱根や伊豆で富士山を眺め、京都見物をして大阪から帰る、というものです。このルートをもっと増やして、観光のネットワークを日本中につくることです。国土の津々浦々に豊かな文化と特産物があるわけですから、各地で趣向の違ったおもてなしをしない手はありませんよね。

平成26年 訪日外客数・出国日本人数

次の50年に向けて何に投資するかを決めるべき時

−− 各地方で外国人観光客を迎えるための施設を整備する好機が訪れているのですね。

ですが肝心なのは、そこで終わりになっては意味がないということです。少子高齢化が進み、そう遠くない将来には限界自治体も現れようとしている状況で、インバウンドの恩恵を一過性のもので終わらせてしまっては、地域経済はすぐに立ち行かなくなります。せっかくの外需を利用して、内需を刺激することを同時に考える必要があります。

−− インバウンド需要の波を一過性で終わらせないためにはどうすればいいでしょう。

宿泊拠点や観光施設、商業施設などの整備は、官民問わず、地域が一丸となって連携するべきです。点と点を線にし、面にするということをしないと、地方は生き残れません。インバウンド戦略と合わせて、次の償却に向けての設備投資戦略を、地域としてどう考えるかが問われる時を迎えているからです。

1960年代に始まった高度成長から、ちょうど50年経ちます。鉄筋コンクリート造のオフィスの税法上の耐用年数が50年ですから、当時建設された施設が次々と償却年数を迎えていきます。これを維持するのか、廃止するのか、建て替えるのか。次の50年に向けて方針を決めるべき時がたちまちやってきます。政府もナショナル・レジリエンス(国土強靭化)に向けて動いていますが、公共施設も民間施設も含めて、次世代の産業や社会のあり方を見据えながら、いかに投資するかを真剣に考えないといけないのです。多くは減築の投資になるでしょう。90年代には積極的財政支出として、各地で文化ホールの建て替えが行われたりしましたが、全く違ったやり方でPRE(公共不動産)やCRE(企業不動産)を見つめていくべき時代が始まります。

こうして外需と内需との両輪で経済を回す地域を構築していくような動きが、日本の一部で芽を出しています。山下PMCも、そうした意欲的な取り組みをされているお客さまの事業戦略と施設戦略とを結びつけるお手伝いを通じて、その構築に力を貸したいと思っています。

地方生き残りのカギは、官民越えた地域内の連携

−− 観光施設にしろインフラにしろ、単体で企画・運営するのではなく、地域全体で連携する時代になるということですね。

少子高齢化によって労働者人口は確実に少なくなりますし、国もほとんどの自治体も税収が減ります。だからこそ広い地域で見ていかないと、今ある施設やインフラは維持できません。学校も図書館も、道路も下水道もです。市町村という単位より広く、おそらく県を横断するぐらいのリージョン(地域)を想定する必要も出てくるでしょう。道州制という考え方がありますが、2015年度には地域経済や行政をより広域な単位で考える方向へと舵が切られるのではないかと予感しています。

ただ、建設投資が少子高齢化の直接的な解決に向かう時代はもう少し先になると思っています。というのは、2020年までは建設価格高騰は収まりそうもないので、ただでさえ坪単価を抑えなければならない病院や介護施設は事業が成り立ちにくい状況がしばらく続くだろうと思われるからです。