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制度変更の先を読め〈後編〉

品確法改正の向こうに潜むビジネスチャンス

「次は省庁をまたいだ制度の変更が起きるかもしれません」

制度変更で生まれる新しいビジネスモデル

−−公共事業の制度変更が新しいビジネスモデルの呼び水になるとは、どういうことでしょう。

品確法の改正で、生産方式や設計方式が変わる。それは一見建設業界だけの変化に見えますが、そうではありません。たとえば先ほどお話したように、これまで単年度主義、単体契約に縛られていたのが、年度をまたぐ契約や複数契約が可能になることによって、自治体が所有する資産のポートフォリオ戦略がしやすくなる環境が生まれます。自治体にも、アセット管理の発想が持ち込まれるわけですね。自治体にとっては、人口減で目減りする税収を確保するための選択肢が増えたということになります。

−−自治体にも経営や資産管理の発想が求められる時代になっていくのでしょうか。

自治体がPRE(公共不動産)戦略に向き合わなければいけない時代はたちまちやってきますよ。なぜだと思います? 高齢化社会を迎えて、自治体も生き残り戦略を考えなければならないからです。そのためにPRE戦略は不可欠。待ったなしなんです。そこにわれわれもいち早くコミットしていきたいと思います。

品確法改正をただの制度変更と思っていてはいけませんよ。制度が変わることによって、自然とある方向に社会や経済の流れができるわけです。そこには新たなビジネスモデルを生み出す可能性も、いっぱいあるんですね。

公共分野のトランスジャンル

−−他にはどんなものが考えられますか。

たとえば、日本の都市にはまだ高齢者が住みやすいようなスキームがありません。建物はある程度整備されるようになりましたが、道路や交通などのインフラは、階段はあるし段差はあるし、高齢化社会を見据えた姿にはなっていないのが現状です。そこで誰でも利用しやすいインフラ、いわばユニバーサルインフラを地域全体に整備してはどうでしょうか。建物のユニバーサルデザインと融合して、高齢化社会に対応できる都市を構築することになります。ひいてはそれがモデルとなって、全国にユニバーサルインフラという思想が伝搬していくことになるでしょう。2020年のパラリンピックでは世界中からさまざまな身体をもつ人がやってきますから、ちょうどよい機会ですよね。

−−品確法の改正でそこまでできるようになるのですか。

今回の制度変更で新たにできるようになったことは限られているので、今すぐそのような大きな変化が起きるというわけではありません。けれどもこの改正によって実現した事例が成功すれば、それが起爆剤となり、理想モデルとなって広がって、さらに別の制度変更を招くことも起こりえます。次は省庁をまたいだ制度の変更が起きるかもしれません。そうなればユニバーサルインフラ地域の誕生も夢ではなくなります。

公共工事の制度が変わると、医療と観光がつながる!?

−−前回、民間では分野を横断することで新しいビジネスが生まれているというお話がありましたが、それが公共の分野でも起こりうるのですね。

自治体は今までインフラのことは考えても、それが医療とかスポーツ振興とか、他の産業を導くというところまでは発想しづらかったのです。それがこの先、分野をトランスするような発想も起きるようになっていく流れを感じています。

現在の制度では、医療福祉法人が運営できる事業といえば、病院、介護老人保健施設、託児所ぐらいです。けれどもこの先、建築の制度変更が別の分野にも伝搬したら、医療福祉法人がスポーツ施設や観光施設も運営できるようになるかもしれない。そうなれば医療サービスと観光とをセットにして外国人を呼び込むような、医療ツーリズムが誕生します。実際、すでに金沢など日本海側の病院には積極的に中国や韓国から患者を招き入れようとしているところがあって、なかなかうまくいっているそうです。ASEAN諸国の人をターゲットとしてインバウンドの観光と複合できれば、医療ツーリズムはいいビジネスモデルになりそうですよね。

さらに先ほど例に出したユニバーサルインフラ事業を、自治体と大資本を持つ医療福祉法人とが一緒になって進められるようになる可能性もあります。そうすればインフラ分野と医療・介護・健康増進分野とを一体として展開していくことが可能になります。ある地域でそれが成功すれば、高齢化社会に期待される経済モデルとして広がっていくことも考えられますよね。現状では医療や介護の制度は建築とは全く別の制度だけれど、それが融合する可能性だってあります。

制度変更のその先をつかめ

−−そうなると非常に大きな規制緩和ですが、いつかはそういう状況が訪れるのでしょうか。

そのような未来はまだ想像上のものでしかありませんが、私は社会の制度の変化はそういう方向に向かっているのではないかと考えています。この「方向」を見極めることが大切です。公共工事の法律の改正の影響は建設業の枠だけに収まるのではなくて、そこから違う芽が出て、他の省庁の制度とネットワーキングしていくと思っています。

−−法律が変わったということをつい表面的に捉えてしまって、制度が現実に追いついたと考えてしまいがちなのですが、もっと大きな流れとして捉えればチャンスが見えてくる可能性があるのですね。

制度は時代の流れを読みながら変えられています。公共の人は遠来のことを考えていて、民間で起こっているようなことをぜひ公共でも、という夢は持っています。政府の経済白書には意外とそういうことがちゃんと書かれていますよ。みんなそんなのは絵空事だろうと思って、よく読まないんですよね。でも私は、変化の先をつかむというか、堰の入り口にいつもいて、魚が来たらさっとつかまえる、そういうことをしようといつも思っているんです(笑)。

次回3月末『次号前編』更新予定