週刊 施設参謀 週刊 施設参謀

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01

横断的思考で建物をつくる〈後編〉

建設産業に自動車・ITの知恵を

「他の産業の一番いいやり方を建設に活用できないか、というのが私の発想」

建築生産の世界にマネジメント手法を

−− 山下PMCは建築の設計や施工を行う会社ではなく、建物を建てたいと考えているお客さまにプロジェクト・マネジメントというサービスを提供している会社です。このサービスも他の業種からのヒントを得ているのでしょうか。

建築はビジネスの世界の一部にすぎませんので、当然その変化の影響を受けます。マネジメントという概念は日本では2000年台から一般的になり、なりわいとして必要視されるようになりました。マネジメントはどの企業、どの事業にも必要なスキルですが、それを建築の世界でいち早く産業化したのが山下PMCだと自負しています。

−− ビジネス上の手法として普及しつつあったマネジメント手法を建築生産に取り入れたのですね。

他の産業の一番いいやり方を建設に活用できないか、というのが私の発想です。そう考えると、建設業のバリューチェーンの中には、これまでの制度や慣習によって硬直化してしまった、非合理的な部分がずいぶんあることに気がつきました。そこで、それを一つ一つ整流化していったのです。契約の方法なども含めて生産プロセスを工学的に整備していき、スムーズなプロジェクト推進ができるようにしました。そこがわれわれのノウハウのコアな部分です。

建築生産プロセスを整流化する

−− プロジェクト・マネジメントによってプロセスを整流化すると、お客さまにとってどのようなメリットがあるのでしょう。

まず、全体のコストを下げることができます。プロジェクトを整流化するというのは、品質管理の行き届いた生産ラインを整備するようなものですから、効率的にプロジェクトが進みます。発注者も受注者もみんな楽になれば、それが一番のコスト縮減ですよね。

もう一つ、建築は複雑でパラメーターが多いものです。先ほどの研究所建設の例でいえば、開発する製品の業界動向、法制度、不動産価値、財務、組織など、お客さまは建物以外にもいろいろな要素を同時に検討しなくてはなりません。ですから建築のエンジニアリングの部分だけでもわれわれがお手伝いすることで省力化できれば、お客さまの負担が減って、そのぶん他の要素に注力していただくことができます。建築の専門的な部分はできる限り整流化して、他の要素を取り込みやすいバリューチェーンをつくるというのが、われわれの提供する先端的なサービスです。

建築生産が工場生産システムに近づいている

−− 先ほどから製造業との比較がたびたび挙がっています。

たとえば自動車製造では、セルジオ・ピニンファリーナがスポーツカーのフォルムを描くのと同時に、ブレーキシステムの設計はどうするか、ワイパーの仕様はどうするか、という検討を並行して進めて、工場でアセンブリしますよね。実は今の建築もそれに近い状況になっています。この前、自社で関わったプロジェクトを分析して材工比率を計算してみました。材工比率というのは、建設費のうちの材料費と工賃の割合です。そうしたら、以前は4:6くらいだった材工比率が、今は逆転して6:4、場合によっては7:3になっているんですよ。つまり材料費に対して人件費が減っている。できあいの材料を建築現場でアセンブリしている状況が数字に表れているのです。

−− 建築生産が工場の生産システムに近づいているということですね。

本来、建築は一品生産で、一つ一つ敷地も建物も条件が異なりますから、考えることに費やす時間が長いのです。それで今までは、考えては進め、考えては進める、という手順でやってきました。でも工場では機械を動かす前に、どれだけ材料を下ごしらえして、どれだけの数を調達するのか検討しますよね。建築が工場に近づいているとなると、検討するプロセスを全工程の前に持ってきて、フロントローディングするのが効率のよい方法だということになります。これまでの建築生産の慣習ではそれをしづらいしくみになっていたのですが、今後はそういう発想がますます必要とされるだろうと私は思っています。

オフィスを31階から29階に移転しました

写真 久瀬修一

−− 昨年はオフィス移転がありました。近況を教えてください。

2014年10月27日よりオフィスを移転しました。東京・築地の聖路加タワーの31階から29階への移動です。移転の理由は、まずディスカッションのスペースを十分に取りたかったこと。私たちの仕事は定型業務ではなく、プロジェクトごとにゼロから方法を構築しますから、業務の中で話し合いにかける時間が長いのです。先ほどもお話したように、特に初期段階で与件整理に多くの時間をかけます。そこで、社員同士が意見を戦わせる場所を増やしました。これを機に社員一同ますますお客さまのご期待に沿えますよう努めますので、引き続き変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。

もう一つの理由は、接客スペースを充実させるためです。わが社には発注者の方も受注者の方も、たくさんのお客さまがお見えになりますし、打ち合わせも長時間に及びます。お客さまの置かれている状況は様々ですから、気軽に話せる場所、大人数で議論する場所、いろいろな状況に合うスペースをご用意しました。接客フロアからは東京湾岸の風景が一望できますので、お越しになる際はぜひこちらもお楽しみください。

次回2月下旬『次号前編』更新予定