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週刊 施設参謀

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柔軟なアライアンス&コラボレーション「半導体」から見える世界のつながり方

今回は2022年を見据えた今後の展望についてお話ししようと思います。考えるきっかけになったのは、昨今問題になっている「半導体不足」のニュースです。原因は何だろうと調べていくうちに、表には出ていないさまざまな事実が見えてきました。

そもそもなぜ半導体不足が起きたのか。発端はコロナ禍発生後の人員整理です。急遽リモート特需が起こっても北米や日本の半導体工場では人員や環境を整えられず、これが第1の不足を起こしました。

この不足は一旦解決したのですが、今度はデルタ株・オミクロン株の影響でASEAN地域の工場が止まってしまいました。半導体製造の前工程と後工程のうち、基盤に加工を施す後工程を担っているのがマレーシア、ベトナム、タイ、インドネシアなどのASEAN地域です。しかしロックダウンなどの社会状況で稼働できていないのが現在の第2の不足の一因です。

また、中国は石炭をオーストラリアから購入しなくなり、その影響もあって計画停電が行われています。半導体製造工程では温度管理が必須で、たった1℃の上下でも精度が狂うほどです。停電を繰り返すような工場では精度維持が難しいため製造もストップしてしまいます。

船舶やコンテナの不足も半導体の供給減少に拍車をかけています。原因は1つではなく、政治や経済、複数の業種や地域など多くの要素が絡み合って発生している問題でした。

こんな状況の中で、私は「日本にはチャンスがある」と感じました。多要素が関係する課題として取り組み始めた動きがあるからです。

日本の技術力を結集、半導体小ロット製造の試み

調べてみると、半導体の製造装置や素材はかなりの割合が日本製で占められています。硬い素材は苦手ですが軟らかい素材や洗浄液剤などは得意で、世界シェア90%以上の製品もあります。高性能半導体を作るTSMCやIntelはこれらを使って半導体を製造しています。半導体加工のうち多層化・3D化も日本の得意な技術です。

半導体市場は全体で50兆円規模ですが、高性能半導体25兆円、一般半導体25兆円で構成されています。別のグラフで見るとナノ技術を要するような高性能半導体が大量の受注生産で突出していますが、大部分は一般半導体のロングテールが伸びていて、ここでは小ロット・非高性能な半導体が求められます。日本にはこの範囲で十分に勝負できる素材・技術があるのです。

すでに気づいている企業たちはお金を出し合って一般社団法人を設立し、「ミニマルファブ」を開発しています。

「ミニマルファブ」は半導体製造プロセスを小さな1台の中で完結できる装置です。従来なら大規模工場や高額設備が必要だった半導体製造工程について、極小規模・低コスト・短期間で少量多品種な半導体チップを製造できます。実現すれば半導体ニーズのロングテールを低コスト・短納期で供給でき、世界の半導体シェアの大きな一画を占められます。

そこで私が注目したのは、開発に参加している企業の幅広さでした。

アライアンス&コラボレーションというと、つい「業界内で手を結ぶ」または「ITと業界を掛け合わせて協力する」という図式を考えがちです。しかし「ミニマルファブ」開発に携わるメンバーは多様で、大学や装置メーカーのほか、センサーや素材、金属加工、バルブ加工、洗浄、数理システムなどあらゆる分野の企業が協力しています。企業規模もさまざまで、各社が自分たちの技術や知識を提供しているのです。

考えてみると確かに当たり前です。半導体製造と一口に言っても関わる技術はさまざまで、その数だけ専門性を持った企業の参加が必要です。「業界の垣根を越え、1つの目的に向けてアライアンスを組む」のが最も効率的でしょう。「ミニマルファブ」構想はそれをいち早く国内で実践しています。私はここに希望を見出したのです。

2022年はさらなる多層化・多軸化が求められる

実は、年末にある調査会社から「2022年の展望」について資料をもらったのですが、めくってみて正直少しがっかりしてしまいました。なぜなら展望の内容が全て業種別に分けられて記載されていたからです。

先ほど「半導体」1つを例に見ただけでも、需要と供給の間には多岐にわたる業界と要因が絡まっています。製造業のほか、化学や船舶、運輸なども関係します。解決するにも多分野からの協力が不可欠です。しかし昔ながらの経済分析ではまだ「業種別」でしか考えられていません。これではイノベーションを起こすのは難しいでしょう。

しかしこの資料に失望したおかげで、これから進まなければいけない方向がはっきり分かりました。それが、業界や規模を超えたアライアンス&コラボレーションの構築です。

これまでもコラム内では「7つの領域」や「インテグレーション」について、分野をまたいでつながる図式を紹介してきました。テクノロジーが進化し、社会情勢が変わり、人々の意識も変わって実現している項目も少なくありません。

今後はこのつながりがさらに多層化・多軸化する方向に進みます。ある1つの巨大なプラットフォームが多分野をつなぐのではなく、個々の事案ごとに柔軟なアライアンス&コラボレーションを発生させれば、新たなビジネスが生まれます。中心軸はそのときのニーズによって変わり、つながり方も変化する柔軟性が特徴です。

現状と比べると差が分かりやすいかもしれません。今はA業界にはトップ1社が存在し、その下に中小企業の裾野が広がっています。仮にトップ1社がB業界と水平統合を行ったとしても相手はB業界のトップで、他の階層とのつながりは検討もされません。

未来のアライアンス&コラボレーションは違います。各業界にある程度の階層は存在していますが、どの階層に所属する企業でも自由にあらゆる他業界・規模の企業とつながります。異なる分野で協力するほど新しい発想が生まれ、新しいビジネスモデルが誕生しやすい環境です。まさに「ミニマルファブ」構想はこれを実現しています。

私たち建設業界に所属する企業もこのネットワークを意識して、積極的に飛び込んでいくべきです。業界トップの動きを待つだけでなく、自ら積極的に違う業界・業種との関係を模索してつながる企業がどんどん成長するでしょう。

トヨタグループが挑戦している「コネクテッド・シティ」構想も多分野ネットワークを前提としたプロジェクトの1つですが、自動車を中心に構成したのはトヨタ独自です。別の企業が発想して鉄道中心にする、自転車中心にするなど、中心軸を変更した街づくりも可能です。パターンは無限にあります。

半導体業界ではパワー半導体も注目を浴びています。高電圧・大電流に対応でき、電力損失を抑えることが可能なため、インフラ分野での活用が望まれています。私たち建設業界でも十分に研究の価値がある分野ではないでしょうか。

アライアンスを推進する企業をめざす

柔軟なアライアンス&コラボレーション実現のためにはもう一つ大切な要素があります。それは必ずキーとなる企業、調整役となるパーソンが存在することです。

ただ既存の企業が多数あるだけではつながりは生まれません。アイデアを発想して可能性に注目し、従来にはなかったつながりを牽引する企業や人が求められます。弊社はもともと調整やマネジメントに特化した企業ですが、2022年はその役回りをさらに買って出る存在でありたいと思います。目的は1社だけの利益ではありません。問題を解決することで関わった全ての企業や人を幸せにする社会貢献をめざします。

さまざまな企業と話をしていると、皆が同じようなところで同じような悩みを抱えているように感じます。しかし日本には長年培った技術と実績があり、世界に向けて大きなシェアを握る余地がまだまだ少なからず存在します。コロナ禍後の社会構造はこれからの私たちが作らなければいけません。ともに一歩も二歩も進められる年にしましょう。

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