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週刊 施設参謀

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建設業界にある創造性を刺激したい~4月にリリースした2つのサービスとねらい

「勝ち組」と「負け組」を分けるのはやはりデジタル化

2020年からのコロナ禍は社会と経済の状況を大きく変えました。当時はどの企業も初めての体験に戸惑い、手探りで経営を進めてきたのではないでしょうか。しかし2021年に入った今を見ると企業によって明らかな「勝ち組」と「負け組」が形成されつつあります。

確かに人の往来が激減したため、観光・運輸・飲食・娯楽業界が直撃を受けてしまったのは致し方ないことかもしれません。ただしそれ以外の業界、例えば製造や物流、その他のサービス業界などではコロナ禍後のビジネス展開によって業績に差が表れました。

その差を生んだのはデジタル化やオンライン活用に対する対応力です。

テレワークや遠隔サービスに注目してオンラインに関するビジネスを開拓できた企業は大きく伸び、旧来のやり方から変わらなかった・変えられなかった企業は現状維持も難しく、業績は下がってしまいました。この傾向はますます強まっていくでしょう。

まだ意識される方は少ないかもしれませんが、「どこまでデジタル化を進められるか?」という課題は今後の建設業界にも関わってきます。デジタル化やオンライン活用が実践できる企業は成長でき、そうでない企業はどんどん落伍してしまう。

恐れなければいけないのは、この競争は建設業界内だけではなく「建設業界 VS 他業界」という競争にもリンクしている点です。デジタル技術に対して「うちはまだいい」「難しいから後にしよう」と考える建設関連企業が多いほど、世の中の進化スピードについていけずに業界ごと遅れていきます。それは私が最も避けたいと考えていることです。

ボトルネックは見えている、あとはどう対処するか

建設業界が世の中の進化に追随するためには、まだまだ改善しなければいけない点がたくさんあります。特に施設を活用するお客様の事業サイクルに関わるときは、情報のコンフリクトが起こる「関所」がいくつかあると分かりました。

前回コラムで使った「データサイエンス領域」の図で例えるなら、事業者がビジネスを企画する「事業発意時」、事業者が建築を委ねる「建設プロジェクト開始時」、事業者が施工された建物を受け取って運用を始める「運用開始時」の3カ所です。

この3つの「関所」に共通するのは、私たち建設側とお客様である事業者側の間での情報共有がとても大切であるにもかかわらず、現状ではそれが非常に困難な点です。

まず「事業発意時」では建築に詳しくないお客様が建物の活用方法について事前調査や分析をしなければいけません。また「建設プロジェクト開始時」では双方の都合を取り入れたさまざまな予算や工期の逆算が求められます。建物が完成して「運用開始時」を迎える際も、建設側の竣工図書を読み込めるお客様はほぼなく、施設情報が十分に理解されないまま運用をスタートさせています。

これらの情報共有がスムーズに行えるようになれば、多くのメリットが予想できます。

例えば「事業発意時」に信頼できる「建築可能なスペック」や「収支想定」があれば事業者判断はもっと早くでき、建物にも反映させやすくなります。もし「建設プロジェクト開始時」より前に建設側から確度の高い予算や工期の情報が渡せれば、お客様は今後の展開を考えやすくなるでしょう。「運用開始時」についても、難しい専門用語や図面ではなく分かりやすい情報で共有できればお客様は施設の機能を最大限に活用できます。

私たちはすでに「単に建物を作って提供するステージ」を過ぎ、「お客様のビジネスに役立つ建築を提案するステージ」に入っています。そのためには上記で挙げた情報のスムーズな循環が目標であり、その重要性はこのコラムでも繰り返しお伝えしてきました。

この情報共有を実現させるには、私はやはり業界全体の「デジタル化」が必須であり、建設業界に特化した「オンライン利用できるプラットフォーム」がその役割を果たすと考えました。

4月リリースの2つのサービス、役割とねらい

そこで2021年4月、当社は以下の新しいサービスをリリースしました。

■不動産規模と事業収支を自動計算する『BEAMap®』

『BEAMap®』(ビーマップ)は、インストール不要のクラウド型サービスです。検討したい不動産情報を入力するだけで「建築可能な建物の規模やスペック/賃料相場/条件を踏まえた事業収支計画」を自動で弾き出します。

前述した「事業発意時」に必要な情報ですが、集めるには分野の違う専門家にそれぞれ別途発注する費用と時間がかかってしまい事業スタートの足かせとなっていました。これをビジネスで使えるレベルで自動算出するのが『BEAMap』の特長です。サブスクリプションで手軽に導入でき、結果もすぐに出るので不動産・建設ビジネスのスピード化に貢献します。

■建物経営と運営の効率化をサポートする『b-platform® 』

『b-platform® 』(ビープラットフォーム)はクラウド型の情報プラットフォームです。360°写真を活用した誰にでも分かりやすい直感的なUIを使い、今そこにある建築物の全ての情報を集約・体系的な一元管理・活用ができるサービスです。

これは、「運用開始時」から次の事業サイクル(次の事業発意時)へつながる建物運用で大きく役立てるようにデザインしました。今も建築後に事業者へ渡される竣工図書やBIM情報はありますが、専門家にとっても難解な資料でとても事業用に参照できるレベルではありません。この情報資産の死蔵化を防ぎ、「どの事業者も建物情報を気軽に活用できる/どの設計者・施工者もすぐスペック情報を探し出せる」ように特化しています。

面倒な手続きをツールに任せ、人はもっと創造的に

確かにどちらもクラウドや自動化を利用した省力・省人を実現するツールです。しかし私たちがめざすのは「現場から人をなくすこと」ではなく「人の創造性を生かせる場をもっと作ること」です。

建設業界ではまだまだ面倒な手続きや慣習が多く、それが業界の力を弱めているとも感じます。だからこそ、当社だけではなく業界全体の皆さんが本来注力すべき領域に集中するためのツールを作ろうと思い、これらをリリースしました。

例えば『BEAMap®』は、デザインに強い個人や企業が活用すればこれまで面倒だった事業領域の計算はツールに任せることができ、自分たちはデザインに注力したビジネスを考えられるでしょう。法律に明るいけれど不動産や建築に詳しくない場合でも、相場感や事業に関する部分はツールの助けを借り、自分の強みである法律知識を付加価値として応用させることが可能です。コンサルティングなどの仕事でも同じです。

『b-platform® 』は手軽に設計や現場情報を蓄積していくツールです。建物の修繕や見直しが必要になった際はどの関係会社でも明確な情報をすぐに見つけ出せるので、今だけでなく将来にも大いに力を発揮するでしょう。

デジタル化とその役割について、私の周りでは対応が二極分化していると感じます。年齢やキャリアとは関係なく、気づく人はどんどん取り入れてさらに進化し、気づかない人は周囲の変化にも気づかず遅れていってしまう。

従来のデジタルツールの使い勝手も左右しているかもしれません。今回私たちがリリースした2つのサービスはそのハードルをできるだけなくし、誰もが今後必須となるデジタル化へ軌道修正ができるきっかけになればと考えています。関心のある方、使い方や事業への応用方法で気になることがある方はぜひ当社にご相談ください。

建設業界にはこれまで培ってきた技術力のほか、まだ顕在化されていない情報資産や創造性がたくさんあります。デジタル化を軸に今後5年10年の劇的な変化に対応できる力を業界全体でつけていければと思います。

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