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週刊 施設参謀

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「お金」のように「情報」が流通する世界が来る ~ データ資産を整備するのは今しかない

「情報」も「お金」のように価値を持ち、流通する

現代社会では「お金」という価値が流通の基本になっています。紙幣や硬貨など形あるもののほか、金融機関や企業が扱う数値としての資産もデータ化されたお金です。このお金は価値の尺度・価値を流通させる手段・価値の貯蔵という3つの機能を持って、経済を回す血液として循環しています。今後はデジタル通貨もお金として流通していくでしょう。

今回はさらに先の話、「情報」もお金と同じような「価値を持った流通媒体」になる可能性について考えたいと思います。

私が想起している「価値ある情報」には、お金と同じ3機能(価値の尺度・価値を流通させる手段・価値の貯蔵)が備わっていると考えます。また、財務諸表であるPL(損益計算書)やBS(賃借対照表) と同じ枠組みと概念を使って価値量や資本内の割合を示すことができ、企業が持つ資産や負債としてもカウントできると思っています。

これからの市場取引の交換媒体は、「お金」よりも「情報」「データ」が主流になる?

「情報(データ)」によるPL、BSの概念が生まれる日が来る。
・資本調達:データを資本と置換できる。
・投資:データの信用性が確保されれば、データによる投資が可能に。
・運用:データそのもので棚卸し。
・利益・純利益:データでもお金でもどちらでも可能。

その可能性に気づいたのは、コロナ禍の間にPLやBLの構造を見直して投資や運用を考え続けていたからでした。財務諸表では今流通しているお金を表すことができ、これがデジタル貨幣に代わったとしても基本的な枠組みは全く変えずにポートフォリオとして表せるでしょう。では、このデジタル貨幣を「データ」と読み替えたらどうでしょうか。

デジタル貨幣の「データ」は紙幣や硬貨のような形を持ちません。「情報」も同じです。インテリジェンスと定義されるような重大情報、事業につながる価値ある情報も、無形ではありますが企業が持っていたら資産として計上でき、投資や運用を実施して利益を得ることが可能なのではないでしょうか。

共通点を精査していくと、私たちはお金という価値体系からだけでなく「情報」という新しい価値体系からも利益を生み出せるのではないか、今その準備が求められているのではないか、と危機を感じました。

従来の枠組みを崩す動きが世界中で起こっている

その仮説が正しいかどうか、少し回り道をして現在の社会システムを確認してみます。

金融を取り巻く状況は、世界的な規模で変革を迎えつつあります。従来の「お金」を各国で交換・送金するシステムはすでに構築されましたが、デジタル化に伴って進化するブロックチェーンやセキュリティ技術をこの枠内でどう取り入れるか、どのようなルールで扱うか、実践的なレベルで審議されています。日本国内でも、どうすれば国際基軸通貨の1つである「円」の存在感を損なわずに参加できるかが真剣に検討されています。

国内の「情報」産業を見ると、まだまだ新聞・テレビ・出版のようなオールドメディアが幅を利かせています。国からの許認可事業は非常に強固で、新たに参入するのは確かに難しいでしょう。しかし、そういった既得権益を飛び越えてくるニューカマーが控えているのも事実です。

IT技術を基礎にしたプラットフォーマーや、流通改革を進めて新たな市場を作り出したサプライヤーは、デジタル貨幣やブロックチェーン技術の使用を含めた金融ビジネスへ進出するチャンスを伺っています。

クローズドな範囲で独自通貨や価値を流通させる試みは、いろいろなところで始まっています。キャッシュレスで注目された「○○ペイ」と言われる通貨たちもその一つです。その先に予想されるのは、金融と情報の世界の統合・シームレス化です。今、流通しているお金が急に全て消えるような変化はないかもしれませんが、徐々に統合され、双方の技術や概念が混ざり合う日は遠くないでしょう。

現在のお金の流通に関する国際ルールと同じように、「情報」流通に関する国際ルールがまとめられたら、いち早く参加した国や企業に莫大な利益がなだれ込むのは間違いないと思います。そのとき取り残された国や企業は他者に有利なルールで戦うしかありません。

お金の交換・送金のシステム(インフラ)
お金を「情報」「データ」に置き換えて考えてみたら?

ブロックチェーンを活用すれば、通貨にかかるさまざまな問題のソリューションにつながる。でも、巨大な既得権益はそれを阻んでいるのではないか……。

現在の既得権益の中にいるオールドメディアや巨大なレガシー企業たちは未だその変革に気づいていない、あるいは変化に対する具体的な施策をまだ打っていません。これは私たちにとって大きなチャンスです。将来新たな価値体系を構成するであろう「情報」に注目し、資産として整備する時間が与えられるからです。

「情報」を資産として考えると、インテリジェンスな情報をやり取りしてお金という利益を得られるだけでなく、他の情報と交換して有利な戦略を練ることができます。実際に大国の政治家が国際機関に対して行う情報の駆け引きは、まさに「情報」の価値を重視した行為です。同じことが企業間、国内外の組織間で行われる未来が来ます。

金本位制のようにお金に換えることもできれば、人や社会を変えて新しい考え方を浸透させたりマーケットを生み出したりするなど、無形の恩恵も得られるでしょう。「情報」はお金と同じように投資や運用によって利益を増やすことができるのです。このスキームを構想し、現実化を目指す人たちはすでにたくさんいます。ただ、その波に乗ることができるのは今「情報」に対して準備を始めた企業や組織だけです。

新しい価値体系に取り残されないための準備

私たちの生活に欠かせないAmazonの仕組みが注目され出したのは、おそらく2006,7年頃だったと思います。それまでインターネット通販で本を売るだけだった企業があらゆる情報を取り込んで事業化し、グローバル企業に変貌しました。その流れについていって成長したのが今はGAFAと言われる企業たちです。私は「情報」をお金と同じように扱う流れについても同じような大変革が起こると思っています。

そのとき影響を受けるのは情報と金融という領域に限りません。私は以前から施設建設にまつわる「7つの領域」を想定し、これが日本の産業を支える柱と捉えてきました。この図の第6領域を情報流通、第7領域を金融ビジネスにあてていますが、変革の影響はこの2領域に留まらず、いわば第1〜5領域をも飲み込む津波のように襲ってくるはずです。

単にフィンテック技術が普及するという意味ではなく、製造技術もクールジャパンもREもスポーツも健康も、情報と価値が融合した概念とそれを牛耳る企業や組織に飲み込まれると思うのです。

私たちにできるのは、それを先読みして情報の行く末に翻弄されない事業体系を構築することです。コロナ禍は一種の厄災ですが、変革の加速器にもなりました。これまでは常識で考えて無理だと思ったことでも、実行する意志があれば変えられる環境があります。すでに日本の長所となっている「7つの領域」の、情報面からの強化が可能なのです。

▼7つの領域への挑戦
https://www.ypmc.co.jp/about/challenge/

第一に取り組みたいのは、私たちが携わる行為や成果物の全てをデータ化していく仕組み作りです。今後「情報」が価値ある媒体として流通するならば、手持ちの技術や知識、建設や利用者にまつわる全ての情報をデータ化する必要があります。データでなければ無価値になってしまうからです。必要になってからデータ化の手立てを考えるのでは遅すぎます。

第二に取り組みたいのは、人の育成です。たとえ「情報」が大きな価値を持つ世界になったとしても、それを新ビジネスや再構築につなげられるのは人のセレンディピティ(偶発力・偶然力)です。どんな新しい価値観が台頭したとしても、ハブ機能を持った人たちが社会や事業を牽引していくのは間違いないでしょう。

建設業界で言えば、近年はサプライチェーンが情報化・効率化されてきました。建物の構成も基本的なスケルトンは変わらないまでも、インフィルや組み込むインフラは将来「情報」を得て運用できるよう意識しなければいけません。

当社では全てのプロジェクトでプロセスや竣工履歴のデジタル化を進めています。これからはただデータを蓄積するだけでなく、得たデータをどのように価値あるインテリジェンスな情報に変えていくのかが課題です。これは事業者共通の課題でもあります。

現在の経済を動かす血液はお金です。今後は「情報」も構成要素として重要になります。そして、きちんと存在意義を持って存続する組織、経済における血液をしっかり送り出せる組織が将来も覇者となるでしょう。その準備は皆さんも今から始められるのです。

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