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週刊 施設参謀

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空き家は「モンダイ」ではなく「収益源」
地域が潤うDRE戦略とは?

地域のあらゆる不動産を駆使して収益確保を目指すDRE(地域不動産)戦略

不動産戦略としてのCRE(企業不動産)やPRE(公共不動産)に注目する人が増えました。それに加えて私はDRE(District Real Estate=地域不動産)という概念を掲げ、さらに有効な地方創生を目指すべきではないかと考えています。

DREとは、地域内にあるCRE、PRE、個人住宅、権利者が曖昧な非住宅・空き家・空き施設など、全てを包括したものです。このDREを開発・活用して売上と税収を増やして地域内で循環させれば、さらなるインフラ開発や新たな付加価値の創造につなげることができると思います。

日本の不動産資産は現在約2,300兆円で、そのうち「非住宅・その他」とされる資産は950兆円、約4割を占めています。今後は個人所有の資産や政府自治体所有からの流入が予想され、さらに割合は増えるでしょう。

プラットフォーマーは、すでにこれらの資産をシェアリングビジネスやマッチングビジネスにつなげ始めています。しかし、必ずしも地域にお金を落とすスキームにはなっておらず、この構造が真の地方創生のネックになっています。地域のためには、地元が持つ収益源や不動産を最大限活用し、生まれる富をとどめて他に流出しないようにする措置がとても重要です。そのとき軸となる概念がDRE戦略です。

下記のPL、BSの図をご覧ください。民間企業の売上や個人収入が税収源となり、それが公共にまわり、循環することで地域が潤う構造になっています。しかし、こと公共施設に関しては今後税収だけで全てを運営していくわけにはいかず、施設そのものから直接収入源を見出す必要があります。

そして、今後少なくなっていくCRE・PREだけで地域の存続を考えるのではなく、空き家・空き施設を含めた全体の不動産戦略を検討する段階に入っているのです。権利が曖昧な不動産は自治体が使用できるような法改正ができれば、DRE戦略は各地で加速するでしょう。

さらにDRE戦略の実現性を高めるためには、道州制的な概念で複数の自治体が持ち合い、得意なところを相互補完して地域全体で潤わせるスキームも検討に値します。

関東一人口の少ない村・丹波山村にみる地方創生のヒント

私たちが2018年から支援している山梨県丹波山村のプロジェクトは、DRE戦略実行の具体例になると考えます。実現のために以下の3つのポイントを重視しています。

1.ネットワーク

丹波山村は、人口約540名、290世帯という小さな村です。築40年以上となる村役場の庁舎建て替え計画への参入をきっかけに、そこから当社が丹波山村の活性化に向けたアドバイザリー業務も同時に担当し、複数のプロジェクトが動き出しています。

地方創生には、地元のミクロなプラットフォームが不可欠です。情報・人脈・影響力を持つ地方銀行や地元メディアがハブ役を担い、ネットワークを外に伸ばせば、外部の人や先端ノウハウを一気に呼び込むことができます。丹波山村では、私たちが知恵袋となることで村の皆さんとのネットワークを構築し、アイデアを形にし始めています。

2.B級ではなくA級

村の営みを豊かにするために何をすればいいのか?私たちは村の方々と話を重ね、すでに村にある資産をくまなく再確認しました。

昔からの伝統や景観にこそA級の価値がある、という考えのもと、森林・狩猟・温泉という丹波山村ならではの魅力的な資源の活用と観光客の誘致を行うことを決めました。また、空き施設や空き地の利用も検討し、最小限の投資から最大限の価値創造を目指しています。

3.地元の情熱とリーダーシップ

丹波山村の変革のエンジンは、村長をはじめ村全体が共有する「将来の価値創造のために不動産基盤をきちんとフォーメーションする」というコンセプトです。地方創生に悪戦苦闘している自治体でも、想いを一つにして、首長、地元のキーパーソンが音頭をとれば、地域が潤うDRE戦略が可能なのです。

伝統とテクノロジーの両立

もちろん、私たち建設業界にも意識改革が求められています。実はまだスクラップ&ビルドの感覚から抜け出せていない人たちが多いのではないでしょうか?しかし、全く新しいものをひねり出すよりも、昔ながらの景観が取り戻せる方法があるならば、私はそのほうが絶対に良いと考えます。

たとえば、不便だった竈や風呂は最新式の水回りにするけれど、情緒は残す。最新の冷暖房は上手に組み込むけれど、伝統的な佇まいは活かす。妻籠宿などはそれを実現した地域価値の活用法だと思います。

テクノロジーを味方にして、電柱の地中埋設で景観を守ったり、キャッシュレス決済などで観光客の利便性を進めたりするとよいでしょう。最新工法で川沿いを幾何学的なパターンで固めてしまうのではなく、自然素材でうまく隠しながら機能的には治水する、生態系の邪魔をしないなど、現在の技術的な工夫との両立はいくらでもできるはずです。

今まで使っていた概念を捨てて新しいものを取り入れ、形が残るハードだけではなくイノベーションまでを見据えたソフトの器として施設を考える。その意識改革はとても難しく、時間も必要です。しかしこの手法が今後主流にならないと、日本は衰退してしまうのではないでしょうか。

空き家の多い地方ほどチャンスがある

ニュービジネスのほとんどはまだGDPにうまく計上されていない領域ですが、すでにプラットフォーマーたちは利益を上げて日本ではないどこかへ富を運んでしまっています。建設業界は自らが進化してこれを上手にキャッチアップし、改めて地域に還元するスキームを創らなければいけません。DRE戦略はむしろ土地を多く持つ地方のほうがチャンスがあると言えます。

ただし、実践するには年単位の時間がかかります。一地域で改革を進めるとしたら、少なくとも5年は見積もる必要があるでしょう。丹波山村のケースも計画は2018年から始まり、数年後に新庁舎をオープンさせるのと同時期に全国へ地域の魅力を発信していく長期スパンのプロジェクトです。他地域や他事業とのインテグレーテッドまで考えるならさらにもう少し時間がかかります。だからこそ、今すぐ取り組むべきなのです。

今日も、メディアでは将来の日本経済について不安を煽っていますが、解決するための策は必ずあります。今回提唱したDRE戦略もその一つです。土地・施設・これから伸びるニューインフラ、アイドル/シェアリングエコノミーなどのニュービジネスなど、組み合わせられる材料はたくさんあります。ぜひ皆さんも地域に残るあらゆるタイプの不動産を意識して、これらを事業に組み込む解決プランを練ってみてください。

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