注目される公共工事におけるデザインビルド方式

昨今、公共工事では、デザインビルド方式や設計・施工一括発注方式が採用される、もしくは採用の検討が開始される、といった動きが活発化しています。
また震災復興事業においては、アットリスクCM方式という発注方式が多くの案件に採用されています[図1]が、この方式もまた、施工者に設計も含めて一括で発注する、という意味では、一種の設計・施工一括発注方式と捉えることができます。
設計・施工一括発注方式やデザインビルド方式の導入議論が活発化している理由として「震災復興」と「東京オリンピック」という2つの大きなきっかけが挙げられます。いかに迅速に復興事業を推進するか、いかに早急に計画、建設しなければならないオリンピック関連施設を発注するか、といった大きな社会的要請の中で、多数の案件での本格的な設計・施工一括発注方式の採用が検討されるようになってきた、と考えられます。
そもそもこれまで公共工事において、設計・施工一括発注方式が採用されてこなかったのは、なぜでしょう。そもそも公共工事の発注方式は、何に基づいて規定されているのでしょう。ここでは公共工事の「そもそもの話」に立ち戻って考えていきたいと思います。

図1 岩手県大槌町の復興プロジェクトにおけるアットリスクCM採用の図 [出典=建設通信新聞 2013年2月20日 第1面]



公共工事における発注方式


図2 予決令第79条、80条、会計法第29条
民間工事では一般的に活用されている設計・施工一括発注方式が、公共工事では一般化されていないのはなぜでしょうか?
民間工事と公共工事の最も大きな違いの一つとして、建設資金が自己資金か税金か、という違いがあります。
公共工事の発注システムには、税金の使い方について、公正性・透明性が厳しく求められるがゆえに、その責務を果たすための仕組みが組み込まれている、と考えられます。
日本において国の入札・契約制度を規定しているのは会計法であり、その運用を定めているのが予決令(予算決算及び会計令)です。
一方、地方公共団体の調達制度は国にならい、地方自治法や地方財政法により規定されており、その運用を定めているのが地方自治法施行令です。
これらの条文の中には、設計・施工一括発注方式やデザインビルド方式を導入する障壁になりそうな条文がいくつか見られます。主なものとして、以下の2点が挙げられます。

(1) 価格競争が大前提
会計法では一般競争入札、指名競争入札、随意契約以外の契約方式は認められていません。つまり、随意契約以外の案件については、原則として入札(=価格競争)が前提となっており、技術力や品質を加えた総合評価は行わないことが原則となっています。
これは、施工者の技術力を加味して設計・施工者を選定する、ということに大きなメリットがある設計・施工一括発注方式には、適合しない内容といえます。
ただし、こうした契約方式については、設計施工分離方式においても施工者の技術力をきちんと評価する必要性があるため、2005年に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定されて以降、総合評価方式が採用されるケースも増えており、変化しつつあるのが実情です。

(2) 予定価格制度の存在
予定価格とは、まず一定の施工条件などを想定し、そのうえで発注者側で費用を積算して、ここまでなら支払ってもよい、という上限の意思を示した金額をいいます。この予定価格について、予決令第79条、80条、会計法第29条では、[図2]のように記されています。
つまり、税金を公共事業に活用するにあたって、発注者側が自ら、もしくは設計者及びコンサルタントに依頼して、設計書や仕様書を適正に作成し、それに基づき発注者側で適正な予定価格を設定して、それを超える価格での契約は行わない、という取り決めとなっています。
予決令の中では、仕様書・設計書などの精度や作成者について明確に定められてはいませんが、条文そのものが設計施工分離方式を大前提としていることが読み取れます。
明確に設計施工分離を義務付ける法律上の規定は見られないものの、透明性を持って公正に税金を使う、という観点から、公共工事は設計施工分離方式、ということが様々な条文の大前提となっており、実際ほとんどの場合で、設計施工分離方式が採用されているのが現状です。

設計・施工一括発注方式とデザインビルド方式

一方で民間プロジェクトにおいては、様々なバリエーションの発注方式が採用されています。1つの会社(ゼネコン)が設計と施工を一括して受注する設計・施工一括発注方式も多くの案件で採用されていますし、設計事務所と施工者がコンソーシアムを組んで設計業務を受注するデザインビルド的な手法も一般的に採用されています。
民間において設計・施工一括発注方式を採用する大きなメリットは、
●施工者の技術力を設計に反映できること、
●コスト・工期についてのコミットメントを早い段階でとれること、
●生産計画や調達計画の前倒しによる工期短縮、
などが挙げられます。

一方、デメリットとしては、
●実施設計が完了していない状況での見積りと技術提案を元に設計・施工者を選定するため、見積り条件の認識違いや設定漏れ等による増額リスクが存在すること、
●また設計期間中の発注者要望に伴う設計変更見積りが高止まりするリスクが存在すること、
などが挙げられます。
比較的条件設定のしやすい用途や、施工方式の難易度の高いプロジェクト、短工期・低コストを追求するプロジェクト等では設計・施工一括発注方式を採用、
設計期間中の変更が多くなる用途や、施工の難易度が低い案件等では設計・施工分離方式を採用、
というように、民間では発注者側が状況に応じて様々な長所短所を考慮し、発注方式を柔軟に選定している、というのが現状です。[図3]


図3 神奈川県藤沢市に建つ〈武田薬品工業湘南研究所〉は民間での設計・施工一括発注方式の好事例。 (CMr:山下設計/山下PMC・CM業務期間:2007年4月〜2011年10月)

昨今の公共工事の動向


図4 東京都のデザインビルド採用の記事 [建設通信新聞2013年12月6日 第1面]
しかし公共工事でも、この1、2年の間で徐々に、設計・施工一括発注方式、デザインビルド方式を採用するニュースが見られるようになってきました[図4]。

公には公表されていない案件においても、山下PMCのようなCM会社が地方自治体から設計・施工一括発注方式の採用について相談を受ける、といったケースも増えてきています。
ただ公共工事における設計・施工一括発注方式導入の試みは、ここ数年で急に始まったわけではありません。時系列でその背景を追ってみましょう。


1993年:多発した公共工事をめぐる贈収賄事件を機に、国土交通大臣の諮問機関である中央建設業審議会から数回にわたり、公共工事の入札・契約制度に関する建議がなされ、改善が図られるようになる。
1998年2月:多様な入札契約方式として、総合評価落札方式や、設計・施工一括発注方式等の導入が推進される。
2001年3月:設計・施工一括発注方式導入検討委員会から報告書(*1)が提出される。設計・施工一括発注方式におけるリスク分担の考え方や予定価格の算定方法、設計変更の考え方などが、まとめられている。
2001年4月:「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」が施行される。この法律に基づく適正化指針の中でも、技術力を活用した多様な入札契約方式の導入が求められる。
2009年3月:設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式の実施マニュアル(案)(*2)が提出される。

今後の課題

現状では、設計・施工一括発注方式は震災復興事業や東京オリンピック施設建設の計画に対して、いずれも「スピード」という非常にシンプルな理由で特例的に採用されている状況と言えます。
ですが、まだ設計・施工一括発注方式やデザインビルド方式は、公共事業という公正性・透明性を求められる事業において制度的に満足できる仕組みを構築できている状況といえません。
設計・施工一括発注方式、デザインビルド方式はいい意味でも悪い意味でも「良い加減(いい加減)」な条件での発注方式といえます。
細かい制度的な部分では予定価格制度との整合性、分離・分割発注との整合性、地元企業活用手法(オープンブック方式等)の整備、設計変更時の工事費増減ルールの整備等、解決すべき課題は山積していますが、これらの制度的な課題は事例の中で推進手法を整備し、制度・法律の改訂を並行して行っていくことで十分解決可能な課題であると考えます。
大きなテーマとして、最大の利点でありながら同時に最大の課題でもある「良い加減(いい加減)」な状態での発注、ということを公共工事における公正性と透明性を満たしつつ、いかに解決していくか、ということが、設計・施工一括発注方式、デザインビルド方式を公共工事発注手法の選択肢の一つとして定着させることができるか、の肝になると考えます。

身近な「国際化」から

国内でばかり仕事をしてきたので、正直なところ今まで関わった仕事の中で「日本の良さ」をリアルに意識する場面はありませんでした。一方で最近、義理の妹と結婚したイギリス人の旦那に、自分の職業を「顧客のために建物を建てる際に、コストや工期をマネジメントするのが仕事だよ」と紹介しつつ、「…とは言っても貴方たちのお国のような、契約でガッチガチのドライなマネジメントではなくて…」という思いを抱いているのも事実。そんな場面では、自分の中の直感のようなものが、頭の中で整理できていないことを感じます。よく外国人の前で日本文化を語れず恥ずかしい思いをした、という話を人ごとのように聞いていたものの、自分にもこんな身近で国際化の波が押し寄せるとは……と戸惑っていたところ、仕事のほうでも「FIDIC(国際コンサルティング・エンジニア連盟)」が監修する建設工事の契約条件に触れ、改めて「日本の良さ」を考える機会に恵まれたのでした。

FIDIC「エンジニヤ」と日本型「エンジニヤ」

図1 Yellow Bookにおける「エンジニヤ」の立位置とリスク管理の範囲 「FIDIC」は「国際コンサルティング・エンジニア連盟」という組織です。その契約条件は一部の国際入札工事で使われており、国際的な銀行の融資条件にもなっていることもあって、日本でも政府開発援助(ODA)の場面等ではある程度ポピュラーなものとなっています。ここではその一つである「Yellow book(いわゆる設計施工に関しての契約条件書)」の「一般条件(契約の「約款」に近いもの)」について、簡単に内容のご紹介をします。
この一般条件は全体で20章の構成となっていますが、①「言葉の定義(1章)」②「関係者の役割分担(2 〜 4章)」③「設計、施工の実施方法(5 〜 12章)」④「契約の変更・終了、支払(13 〜 16章)」⑤「リスクと保険、紛争及び仲裁(17 〜 20章)」という構成に整理されます。まず、この段階で感じるのが、「契約とリスク」の条文の多さと重さ。①と②の前置き以外を本文と捉えると、本文16章中の8章分がこの部分に含まれます。勿論、銀行の融資条件としては重要なのでしょうが、「協議して定める」日本的思想と大分異なることを思い知らされます。しかしながらそれ以上の特筆すべき点は、この契約条件に「エンジニヤ(“the engineer”の和訳版原文のまま)」という第三者技術者が深く関わっていることです。
ここで「エンジニヤ」の責務をいくつか挙げると、「工事中書類の受渡しと保管」「証書の写しの保管」「工事敷地の設定」「主要資機材の現場搬入の確認」「完成後試験の立合い」「引渡しに関する証明書の発行」……と非常に幅広く、日本の通常の現場であれば発注者、工事監理者、コンストラクションマネジャーがそれぞれ分担し、時に協力して検討・実施する業務内容にもその範囲が及んでいることが確認されます。さらにその責務のほとんどに「○○日前までに」という期限が設定され、それが履行されなかった際の損害補償の手続き一式も背負っているようです。後日、海外の事例等を調べたところ、実際には、「エンジニヤ」が担っている範囲は特約条件で限定されていたり、そもそも「エンジニヤ」を発注者自らが務め、そのサポートをコンサルティング会社が行うという日本的なピュアCMに近い形態がある等、柔軟な運営がされているようですが、一般的には「エンジニヤ」という存在は設計・工事プロセスの中で、契約上定義された範囲のリスクを低減させるべく中立的な立場として、請負者と性能と金額の交渉・手続き等を行うものであり「限定された範囲のリスクを第三者的なスタンスで低減する」という姿勢が改めて読み取れます(勿論、業務に関する大部分の権利も委譲されています)[図1]。
もし、このYellow Bookのような契約が国内でも日常的になった場合、私たちのような存在はどこまで、どのような形で「エンジニヤ」の役割を担うのが理想でしょうか。現在、日本の建設業界で設計事務所やゼネコン、工務店が誠意を持って協業する中で、我々のようなコンストラクションマネジャーは、時に経営層も含めた経営戦略・社内調整までに力を尽くしつつ企画段階から設計、施工までプロジェクト全体に寄り添う、という「顧客企業や関係者の利害も含むプロジェクト全体のリスクを、発注者の意図を受けつつ低減する」スタンスを取る場合がほとんどです[ 図2]。

図2 国内における「コンストラクションマネジャー」の立位置とリスク管理の範囲 Yellow Bookの「エンジニヤ」に比べ委任された権限こそ少ないものの、協業精神の下、時には全員から知恵を借りつつ関係者全員が納得いく結論を捻出することで、発注者とともにゲンバの士気を高めていく。国内の建築生産プロセスにおけるそのような我々の立ち位置は決して間違っていないと、考えます。
若干浪花節ながら、私が携わった東日本大震災後間もない現場でも、寝袋で寝食を共にしたゼネコン職員の方、その下請会社の方と時に喧嘩をし、時に健康面での不安さえ抱えながらも皆、発注者に誠意を持ち、目の前の「日本の復興」というミッションに対して全力で戦っていたと実感しています。漠然としている感は否めませんが、そのような日本的ゲンバの利点を整理して、そろそろ迫りくる国際化の中での「日本型エンジニヤ」像を、我々のような立場から定義し始めなくてはならないのかもしれません。

「アルマゲドン」に見る「日本型エンジニヤ」の可能性

などと少々悶々としていた休日、「おススメの泣けるDVDが見たい」と小6の愚息からせがまれTSUTAYAで借りて来たのが「アルマゲドン」。エアロスミスの主題歌とともにその昔世界的にヒットした、単細胞の私には号泣系の映画ですが、なぜ主役のブルース・ウィルスは地球を救うため仲間と一緒に戦うことになったのか憶えている方はいらっしゃるでしょうか? 簡単にご紹介すると、あるとき人類を滅ぼすのに十分な大きさの小惑星が地球に迫ってくる。NASAはその対応策を必死で考えるが、その期限は18日間。そのとき一人の科学者が言う。「小惑星の内部で核爆発を起こせば破壊できる」と。そこで核爆弾を設置するため深さ240mの穴を掘削すべく、急遽訓練され宇宙へ旅立つことになるのがブルース社長率いる石油発掘会社のアウトローな仲間たち[図3]、ということなのです。

図3『 アルマゲドン』[1998]にて、地球へ迫る惑星へ向かう石油採掘のプロ、ブルース・ウィリス演じるハリーと仲間たち。 [イラスト=野口理沙子]

実はこの映画の中で各者の立場を顧みてみると、そのような非常事態にかかわらず、皆がYellow Book的な役割を忠実にこなしていることがわかります。大統領(「発注者」)から雇われ、ブルース達の契約やら爆弾の設置方法をマネジメントするNASAの司令官や科学者は「エンジニヤ」であり、ブルース達や彼らを巨大隕石まで運ぶシャトルの乗組員は「請負者」そのものです。そんな中、ブルース達の無茶な契約条件(「一生税金タダにしろ」とか「溜まった駐禁の罰金をチャラにしろ」とかですが…)を司令官は大真面目に受け止めたりもします。
勿論、地球に残ったエンジニヤが作戦を変更するためには発注者の了承が得られないとNGですし、現場の請負者は許可がない作戦変更は実行できない。そのような契約社会的な現場を破ったのは、ひたすら誠意を持ってミッションを果たそうとしたブルースら請負者であり、その熱意に心変わりしたエンジニヤ。最終的には犠牲者を何人も出すものの、巨大隕石は見事破壊され、地球の民は救われる……。ん? それって日本のゲンバの形に近いのでは?
日本型ゲンバのココロが世界的に受け入れられそうな算段が立ったところで、裕次郎時代にさかのぼって「黒部の太陽」や「富士山山頂」をハリウッドリメイクするあたりから、今後の「日本型エンジニヤ」=「エンジニ屋」の役割を世界にプロモートした方が、案外手っ取り早かったりするのかもしれません。


図1

私は10年ほど前に“ 世界の人口が増え続けるなか、現在の裕福さを維持していくためには、地球や都市がどのように変わっていかなくてはいけないか”ということをオランダの建築家集団MVRDV の一人、Winny Massと共に研究分析し『KM3』[図1]という本にまとめました。

結論は「地球全体、そして各地域が持つ資源かつ地理的なポテンシャルを最適、最大限に活用した場合でも、地球は2740年あたりまでしか裕福さが持続されない」というものでした。2740年までは、残り636年。私が皆さまと共に取り組んでいるプロジェクトが平均で8年程度かかっていることを考えると、80件程度しかプロジェクトが完成しないという計算になります。
これはあくまで統計学や地政学に基づく研究結果ですが、私たちは自分たちのプロジェクトにモラルと長期的ビジョンを持たなくてはいけない、と考えさせられた経験でした。

今回の特集「日本の魅力を再考する」というテーマの中で、「インバウンド対策」というテーマを与えられたわけですが、ここでは「なぜ、日本の魅力を再考する必要あるのか?」「なぜ、外資系企業やインバウンドを取り込まなくてはいけないか?どう、取り込むのか?」という疑問について、先に挙げた過去の研究経験より自分なりに考えてみようと思います。

2060年

当然のことですが、日本の人口は、今後2060年へ向けて[図2]のように減少していくと考えられています。

図2:日本の人口推移予測(出典:内閣府ホームページ)。2010年は、総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果。注意:2010年の総数は年齢不詳を含む。

図3:世界の人口推移について(出典:World Population Prospects, the 2012 Revision)

1.全人口:日本の人口は、2008年に1億2810万人でピークを迎え、2060年には約8600万人まで減少します。2008年比で約70%。比率に書き換えるとすごい数字です。

2.世代別:60歳未満の人口が約8700万人から約4600万人になり、15歳未満は約1700万人から約790万人になります。(2008年比で約46%!)。全体の人口は1950年に戻るだけですが、子供の数が圧倒的な違いです。1950年の15歳未満人口は約3000万人。高齢化社会を否定する訳ではありませんが、一般的に考えると、子供が少ない日本は淋しい国になるのだろうと思います。 対して、世界の人口は[図3]のように、日本の状況とは異なり増加傾向にあります。

3.全人口:現在の約70億人から2060年には約100億人になります。(現在の約142%)

4.世代別:2060年の65歳以上の人口は、約17億人(2010年比330%)、15歳〜 64歳は約62億人( 同138%)、14歳以下は約2億人( 同111%)増える内訳です。主にアフリカ諸国の人口が増える傾向にありますが、アメリカやイギリスなど一部先進国でも増える傾向にあります。

一方、社会に目を向けると、2060年までには下記のような3つのポイントが考えられます。

5.企業:資本主義の中で、企業は生き残りをかけて、地球全体に拡大を続ける。

6.所得:上記の結果、先進国と発展途上国の境はなくなり、企業・人としての能力・価値で所得に差が出てくる。不自由のない中間所得および低所得層が増える。

7. 政治:高齢化社会の民主主義社会が形成される。

傾向(=TREND)に見る街づくりのヒント

ここに示したことはおおよそ、今の日本で感じられることばかりでありませんが、これらから今後の社会の傾向を、以下のように導き出すことができると思います。

1.地球全体の人口増に資源が耐えうるか?

2.企業のオリジナリティは出身国の文化や人材によっては形成されず、企業・人が持つビジョンによって形成される。

3.人が国境を越え移動し、人種・言語が均一化される。(日本語は方言のようになる)

4.生活が満ち足りている人が増え、当たり前にあったありふれた幸せが、夢に変わる。

5.未来を夢見る若年層が減り、高齢者向けの社会が形成される。つまり、保守的な社会になる。(語弊はあるかもしれませんが、御容赦下さい)

5つ挙げたことは、日本らしさをつくっていく上では逆行する要素です。しかし、これらのことに、私たちがこれから街をつくっていくヒントがあるのではないかと考えます。

グローバル化と共に、日本を本質的に取り戻す

上記で挙げたことと日本の状況を照らし合わせていきましょう。ここでは、日本が島国ということが重要なポイントになってきます。

a.ネガティブな点:アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアいずれにおいても、大陸で地続きになっている環境では、法人税などの政策は関係なしに、豊かな国や街に人材が集まってきます。一方、日本は大陸でないので、自然に移民してくる人口というものは期待できません。フィジカルなネットワークといった意味において、日本は圧倒的な弱みを持っています。これは、外資系企業を誘致しよう、外国人に訪れて欲しい、住んで欲しいとした場合に、何故島国に行く意味があるのか?という課題が存在することを表します。

b. ポジティブな点:日本は島国なので、人種、宗教、言語、自然などの文化が極めて個性的です。これは、地域間、宗教間での争いがおきにくく、隣国との争いもおきにくいという世界最高の治安を持つ国であることも示します。また、日本独自の四季折々の自然があることは、独特の美的感覚と考える力を与えてくれます。(小話:日本の未来について、アニメーション作家の宮崎駿氏も、日本の自然が唯一世界で勝てる価値だと語っていました。宮崎氏は、小金井にある氏のオフィス「スタジオジブリ」の周りの緑を自然な状態で維持しており、外来種が生えてきたら取り除く徹底ぶりだそうです)

c.ヒント:私は上記aで挙げた「島国に外資系企業や外国人がくる意味とは?」という問いに応えるヒントがbにあるのではないかと考えます。そして、その答えは「グローバル化と共に、日本を本質的に取り戻す」ということなのです。例えば、プロジェクトを推進していくなかで、木々や花を植える際にも、日本の固定種に徹底していく。植栽に限らず、失ってしまった美しさを取り戻し、もう一度、世界中が憧れてきた日本の美的感覚と繊細さ、考える力を養える街にしていくこと。日本のなかで、私たちがいる街でしか創造できないものを、地球に提供する。このことを、真剣に考えていかなくてはいけないと思います。

なぜ、日本の魅力を再考する必要があるのか?

先に示したように、今後、企業・人種・言語等、あらゆるものがグローバルに均質化されていきます。
しかし、島国で遠い日本、人口が減り続ける日本には、企業・人が集まる必然性はありません。企業が増えなくては、訪れる訪日外国人は増えません。人口も増えません。
日本に様々な人が来たくなるようにすること、結果、多国籍の国になって若者も増える。
そのようにするためにはやはり、これまで日本にあった“日本の良さ”を取り戻すことです。人や企業は世界中に散らばっていくとしても、住んだり、働いたりするのであれば日本でなくてはダメだ、と言わせるくらい「日本(=企業、街、自己しか持ち得ないポテンシャル)」について徹底して、長期的かつグローバルなビジョンで考えることが重要になってくるのではないでしょうか。

日本らしさというものは、日本人の私たちから見れば一見、当たり前のこと。
だからこそ、ただ日本らしくつくることはできても、そのワンランク上の格好良さをつくることは、非常に難しいことだと思います。
私は、日本について、日本の“らしさ”について、徹底して皆さまと共に考えることが、これからの街をつくる礎になると考えています。

しかし日本らしく、だけではスペシャルになりません。皆さまと一緒に築き上げるビジョンと立地の掛け算で、やっとオンリーワンの存在になれる。
そして、そこに競争はありません。地域間、国家間、大陸間で競争していては、ハッピーとは言えません。
現在のマーケットベースに考えがちな、都市間競争や施設間競争などの「競争」という考え方を変え、よりポジティブに楽しくプロジェクトを創造・推進していきたい、と考えています。

最後に、施設やまちづくりは「誰が」「どこに」「誰に対して」つくるか、その「ビジョンとポテンシャル、対象の組み合わせ」によって、必ず地球上でただ一つの価値を持つものになると信じています。今年も皆さまと共に考え抜いていきたい所存です。どうぞよろしくお願いいたします。

具体的な「理想解」に向けて―前編のまとめ―


たとえ世界中の人が美しいと感じても、商品の購入者=顧客がそう感じないのであれば、商品の価値は認められません。では美しさとは、主観でしか測れないものでしょうか。デザインとは、いったい何なのでしょうか。設計をする、図案を描くといった動詞もデザイン。その行為から生みだされるモノ、コト、空間などの創出物を示す名詞もまた、デザイン。
いずれにしても、私たちにとってのデザインとは、そのプロセスにおいて理想近似解を可能な限り、効率的に選択していくこと。結果として、クライアントの示す理想解に可能な限り近似する、プロダクトの創出です。そして、クライアントを代行して建設プロジェクトのマネジメントを行う私たちにとって、この理想解=「シナリオ」のライティングは、最も重要な業務なのです。
ロジカルな美しさをもったプロダクトの創出に向かうための理想解=「シナリオ」は、勘や経験のみに頼るものではなく、できる限り定量的な根拠と、できる限り詳細な定性的概念をもって意思決定がなされ、作成されるものです。「ロジカルなホテルデザインと企画―後編―」では、ホテル企画の手法を通して、ロジカルなシナリオライティングを可能にするデザインプロセスと、私たちの考える「デザイン」に迫ります。


ロジカルなホテル企画

ホテル企画の策定の方法については、さまざまな考え方や手法がありますが、ここでは、通常私たちが採用する手法の一部をご紹介します。

― 市場調査

マクロ経済動向、観光動向、地域ファンダメンタル、市場内の競合の動向(稼働率、平均客室販売単価、平均客室面積、宴会場・料飲施設の有無・稼働など)を詳細に調査し、その結果を定量的にまとめます。

― 市場分析

市場調査によって得られた情報を下記のようなさまざまなマーケティング手法を用いて分析します。
・PF分析とクライアントのポジショニング
・SWOT分析とCross SWOT分析
・PPM分析
これらの手法を用いることにより、景気動向、市場の成長率や相対的なマーケットシェア、クライアントの特性など総合的に事業展開を分析し、戦略立案の基礎とします。[図1,2]


図1(左):市場分析をまとめたシート 図2(右):市場分析シートよりPF分析とクライアントのポジショニング分析を抜粋

―顧客ターゲットの設定

顧客ターゲットの設定は、市場調査・分析を基に、できるだけ具体的かつ詳細に行います。この仮想プロダクトユーザーであるペルソナを構築する手法を“エクスペリエンスデザイン”と言います。ペルソナの構築には主に、以下2つの手法を用います。

1.デモグラフィック分析
デモグラフィックとは、人口統計的特性のことで、住所や年齢、性別など大まかな属性を分析します。例えば「首都圏に住む独身の女性」、「団塊世代の夫婦」などがこれに当たります。
以前は、ターゲットの設定と言えば、これを示していました。しかし現代の消費者の価値観は多様化かつ個別化してきています。

2.サイコグラフィック分析
そこで、サイコグラフィック(心理的特性)に踏み込んで、マーケットが求めるターゲットの価値観やライフスタイル、嗜好といった心理面での特性を分析します。職業、役職、家族構成などから始まり、年収、休日の過ごし方、趣味、所有している車、愛用している時計、スマートフォンの機種、イデオロギーや支持政党に至るまで、マトリクス評価とイメージコラージュなどを併せて設定します。設定されたペルソナは定性的な概念ですが、あくまでも定量的な根拠に基づくことが必要です。[図3]


図3:顧客ターゲットを深度化する最古グラフィック分析において作成したシート。清潔感のある居心地の良い空間、重厚さを排除したナチュラルなインテリアを好む「平日に東圏から出張に来るアッパーミドルのビジネスマン」を想定し、分析。文字情報だけではわかりにくいイメージを、コラージュを活用することで、視覚を通じて訴求。


―事業戦略の立案

プロジェクトの最初には必ず、事業コンセプトを策定します。事業コンセプトとは、誰が、誰に対しどのような趣旨と方法で事業を行うのか、を定めたものです。そして、この事業コンセプトはプロジェクトのどの時期においても常に掲げられるべきものとなります。
事業戦略は、事業コンセプトを柱に、経営・運営方針を立て、総投資額の決定、事業収支の作成とハードルレートクリアの確認、投資時期の決定をもって立案されます。

経営・運営方針策定の際には、市場分析に用いたSWOT分析やPPM分析の結果を基礎とした戦略を検討します。


持続可能な差別化を実現しブランド・レレバンスの戦いに勝利することのできる商品企画とは何か? 
カテゴリー・イノベーションの観点から、市場で価格競争に巻き込まれずに勝ち組となれる方策はないか? 
ブルーオーシャンはどこにあるのか? 
そのために必要なホテルブランドのグレード感と、誘致すべき運営会社のショートリストをいかに設定するか? 
顧客や従業員の体験から、既存の枠組みを変革する戦略のヒントはないか? 

など、あらゆる観点から勝ち組への道のりを探ることが重要です。

―建物性能の設定

建物性能の策定は、コンセプト、事業戦略を建築的な用語に翻訳したものと言えます。
建物性能を設定するためには、プロダクトユーザーのシーン想定が鍵となります。 季節や月日を含む時間軸の変化に沿ったシュチエーションを検討する時系列のシナリオと、色(視覚)、音(聴覚)、香(嗅覚)、触(触覚)、味(味覚)の五感に訴えかける演出のシナリオを作成し、プロダクトユーザーがどのように行動し、どのように利用し、どのように感じる建物を提供すべきなのかを具体的にイメージできるように表現します。
表現の手法は、このあとプロジェクトに参画するデザイナーや施工者など全ての関係者に確実に伝達するために、キーワードやイメージコラージュなどが用いられることが主流ですが、私たちはその中間的な手法も利用します。その手法とは、文章で景観を記述する方法です。
例えば「ふるいけや かわずとびこむ みずのおと」という俳句は日本人なら誰でも知っており、そこから抱くイメージ、景観は多くの人に共通するものがあります。このような景観的記述を活用することにより、デザイナーに確実に趣旨を伝え、その趣旨に沿ったデザインを提供してもらうことができます。[図4]

また、デザインコンセプトからブレイクダウンし、実際にどのような機能、性能を有する建物とするのか。これは建築技術者としての翻訳力にかかっています。


図4:デザインコンセプトをまとめたシート。「水」や「流れ」といったキーワードを導き出し、確実に伝えるため、散文・写真を利用。


企画を具現化するための手段としてのデザイン

クライアントによって示されたシナリオに基づき、これによって導かれる美しい建築デザインプロダクトを創出するためのデザインプロセスについては、私が話をするのもおこがましく、著名な建築家や設計事務所の著書を参照していただきたいと思います。
最後にひとつだけ。「企画はデザインのために行うものではなく、デザインは企画を具現化するための重要な手段の一つである。」これが私たちの考える「デザイン」です。

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